ツヴァイゲルトというブドウ品種に親しみのある人はまだまだ少ないかもしれません。
オーストリアで生まれたブドウで、栽培気候が似ている北海道でも主力なブドウ品種の一つとして活躍しています。
(ツヴァイゲルトレーベ、ブラウアーツヴァイゲルトなどと表記されることもあります)
ツヴァイゲルトから生まれるワインのスタイルは軽くてあっさりしたものから、新樽の香りをまとったフルボディタイプのものまで存在します。
様々な可能性を秘めている、ツヴァイゲルトの特徴やおすすめのワインを紹介します。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
ツヴァイゲルトの特徴
ツヴァイゲルトは1922年に、オーストリアのクロスターノイブルクのブドウ栽培研究センターにて人工的に開発された交配品種。
同じくオーストリアの黒ブドウ、ブラウフレンキッシュとサン・ローランの子供として誕生しました。
名前は開発者のフリッツ・ツヴァイゲルト博士からとられています。
耐寒性が高く、北ヨーロッパのような冬がとても寒いエリアでも丈夫に育ちます。
原産地オーストリアでは最も広く栽培されている代表的な黒ブドウになっており、特にノイジードラー湖周辺やカルヌントゥムで力強い味わいのものが生まれます。
樹勢が強いため、凝縮したフルボディタイプを作るためには、厳しい収量制限が必要です。
日本でも力を入れて栽培されており、とりわけ北海道で質の高いものが見られます。
その他、チェコでも人気で、広く栽培されているようです。
1リットルボトルに入っているような軽くさっぱりとした赤から、樽で熟成させたフルボディのものまで、スタイルは様々。
深いムラサキ色と、ベリー系の果実味、コショウのような清涼感が特徴です。
高品質なツヴァイゲルトを作るには、ほかの品種同様、収穫量を落として厳しく管理した栽培が必要です。
ベリー系の強い香り
レッドベリー、ブルーベリー、ブラックベリーなどベリー系の果実を思わせる香り立ち。
ホワイトペッパーの爽やかなニュアンスや、やや土っぽいアーシーな深みがあります。
若飲みスタイルの軽いものだと、ホワイトペッパーやレッドベリーのニュアンスが良く出た、清涼感のある雰囲気に。
逆に樽を効かせたフルボディスタイルだと、ブラックベリーやカシスの皮のようなざらざらとした果実の雰囲気にアーシーなニュアンス、カカオやビターチョコのような香りが強く出ます。
柔らかめの味わい
やさしめの酸味と軽いタンニン。
ふくらみのある果実味と、柔らかい味わいの輪郭があります。
後口にほろっとナッツのような軽い苦味があり、素朴でありながらしっかりとしたストラクチャを備えます。
ミディアム~フルボディのツヴァイゲルトは、クリュ・ボージョレのガメイにも似たミネラル感と力強さがあり、滋味深い味わいになります。
シノニム
- ツヴァイゲルトレーベ
- ブラウアーツヴァイゲルトなど
ツヴァイゲルトのおすすめのワイン3選
爽やかな味わいの「アロイス・ヘレラー ツヴァイゲルト 1,000ml」
品種 | ツヴァイゲルト |
---|---|
産地 | オーストリア |
価格帯 | 1,500〜1,700円 |
オーストリアのドナウ川沿いのエリア、カンプタールで栽培されたツヴァイゲルト。
1リットルボトルに入っていることからも分かるように、若くフレッシュなものを気楽に飲む日常酒です。
軽く酸味の利いた爽やかな味わい。
イチゴやラズベリーの酸味のあるフルーツと、ホワイトペッパーやコリアンダーシードの軽いスパイス感が小気味よいワインです。
引き締まったスタイルの「モリッツ ツヴァイゲルト」
品種 | ツヴァイゲルト |
---|---|
産地 | オーストリア |
価格帯 | 2,800〜3,500円 |
オーストリア東部のミッテルブルゲンラントのツヴァイゲルト。
モリッツはわずか3ヘクタールの畑のみを管理し、精密な手作業で栽培・醸造を行っているこだわりのワイナリーです。
(ラベルも一枚一枚フェルト製のものを貼っているという変わったワイナリー)
粘土質・ローム質の土壌からは酸味がしっかりと立ち、引き締まったスタイルの味わいが生まれます。
ウメの香り、ラズベリーや皮製品、カカオなど、複雑な香りが力強く立ち上ります。
エレガンスな「北海道ワイン 鶴沼 ツヴァイゲルト」
品種 | ツヴァイゲルト |
---|---|
産地 | 北海道 |
価格帯 | 2,000〜2,500円 |
北海道で栽培されたツヴァイゲルト。
ラズベリー、ブルーベリーのジューシーな香りに、ホワイトペッパー、ブラックペッパー、ナツメグやカカオのスパイシーな香りが重なります。
フレッシュな酸味と、後口に残る軽い渋みで、エレガントかつフードフレンドリーなツヴァイゲルト。
ツヴァイゲルトの主な栽培地
力強くエレガンスな「オーストリア」
ツヴァイゲルトはオーストリアで広く栽培されています。
同じくオーストリアを代表する黒ブドウであり、ツヴァイゲルトの親でもあるブラウフレンキッシュと比べると、よりカジュアルな使われ方をされます。
1リットルボトルに入った若飲み用の軽いワインや、新酒にも使われるのは、ツヴァイゲルトの方でしょう。
ドナウ川流域のニーダエスタライヒでは白ワインが活躍しているため、比較的軽くカジュアルなツヴァイゲルトに仕上げられることが多いように思います。
中にはしっかりと凝縮した味わいを持つものもあり、それでもレスの土壌から生まれるツヴァイゲルトはどこか優しく、しとやかな側面を持っています。
オーストリア東部にある大きなステップ湖、ノイジードラー湖周辺では、より力強くミネラリーなスタイルに。
ハンガリーのパノニア平原の影響を受け、暑く乾燥した夏と寒い冬が特徴。
クリュ・ボージョレのガメイや、北部ローヌ地方のシラーにも比較される、エレガンスを見せてくれます。
ウィーンから東の隣国スロヴァキアまで広がるカルヌントゥムエリアでは、レスや砂質土壌から多くの赤ワインが作られており、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、ブラウフレンキッシュとともに、ツヴァイゲルトが広く活躍しています。
上品な味わいの「日本」
長野県や岩手県などでも栽培されていますが、日本のツヴァイゲルト中心地は北海道。
原産地オーストリアのものよりも、ペパリーで清涼感のある、すっきりとした上品な味わいに仕上がります。
とりわけ余市町で高品質なものが作られています。
上品な清涼感に、土やキノコを思わせるアーシーな深み、ナッツやカカオなどのニュアンスが折り重なり、軽やかなのにコクが感じられる味わい。
収穫期の台風や雨がネックになる本州に対して、北海道の困難は冬の寒さ。
耐寒性が高く、冷涼な地域でもしっかりと熟すやや早熟なツヴァイゲルトは、北海道でのワイン用ブドウ栽培に適した品種です。
その他の国
チェコでもポピュラーに栽培されている品種。
また、そのエレガントな特徴が好まれ、ヨーロッパ以外のニューワールドでも栽培するワイナリーが出てきました。
アメリカのワシントン州やカナダのブリティッシュ・コロンビア州などでも、珍しい例ではありますが栽培されています。
フルーティーな雰囲気が前に出る、ふくよかなミディアム~フルボディの味わいです。
ツヴァイゲルトに合う料理
- ねぎま
- つくね汁
- ミートボール
- さわらの西京焼き
- ぶりの照り焼き
- 秋刀魚の塩焼き
- 筑前煮
- パプリカのグリル
- コンテなどハードタイプのもの
- フレッシュチーズなど
まとめ
力強さよりも品の良さが個性のツヴァイゲルトは、とてもオーストリアらしく、また同様にとても日本らしい品種です。
一時期の濃く力強い味わいへの反動として味わいの「エレガントさ」「軽やかさ」が求められ、そのようなブドウが生まれる「冷涼産地」に注目が集まっている現在、北海道とツヴァイゲルトはとても可能性のある組み合わせではないでしょうか。
是非、普段の食卓にツヴァイゲルトを取り入れてみてください。