アメリカや南イタリアを代表するブドウ、ジンファンデル。
カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールなどに比べると有名度では劣りますが、その濃厚な味わいは、一度飲んだら忘れられません。
アメリカのカリフォルニア州で活躍し、良く出来たボルドーワインのようだといわれたこともあるブドウですが、そのルーツは1世紀以上もの間、謎に包まれていました。
収穫量も豊富に見込める一方で、厳しく栽培すると太陽の恵みをぎゅっと詰め込んだような濃縮感のあるワインが出来上がります。
地中海の太陽のようなブドウ、ジンファンデルを見て行きましょう。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
ジンファンデルの特徴
ジンファンデルは地中海にルーツを持つブドウです。
長い間、その繋がりは謎に包まれたままでしたが、研究の結果、クロアチア原産のブドウだということが分かってきました。
ツーリエンナーク・カーステランスキーという品種とDNAが一致したという研究結果が知られています。
また、クロアチアで人気のプラヴァッツ・マリという品種はジンファンデルの親に当たるようで、ジンファンデルのルーツを思わせます。
同様に地中海ど真ん中の南イタリア、特にプーリア州で盛んに栽培されていますが、ここではプリミティーヴォと呼ばれます。
同じ品種とはいえ、味わいはかなり異なります。
高いアルコール度数、甘く濃縮した風味という共通点はありますが、カリフォルニアのものよりも酸味がしっかりと感じられるのが特徴。
そのため、新鮮な果実の風味が強く感じられます。
アメリカに渡ったのが18世紀ごろ。
温暖な気候を好み、湿度を嫌うため、カリフォルニアの気候とは非常に相性が良く、広く栽培されるようになりました。
ブドウが熟すスピードが比較的速く、糖度が上がりやすいため、出来上がるワインも往々にして高いアルコール度数を持ちます。
15%前後のジンファンデルはざらで、普通の作り方なのに度数が18%もあるジンファンデルも存在します。
一方で、ブドウが成熟するスピードがまばらでもあり、注意深く栽培・収穫を行わないと青い風味が残ったり、水っぽい味わいになってしまうこともあります。
まばらな成熟と、意外と病害に弱い(特にカビなどに弱い)性質から、栽培に手間がかかる側面もあります。
また、元来が収量の多いブドウであるため、あまりに低価格なワインの中には味わいの凝縮感に欠け、質の劣るものも見られるので、注意が必要です。
香り
プルーンやカシスジャムなどの濃厚なフルーツの香り。
より温暖なエリアのジンファンデルからは、シナモンやクローブなど、甘い雰囲気のあるスパイスのニュアンスが強く感じられます。
アルコール度数の高さに比例して、ボリュームのある香り立ち。
新樽で熟成されたものなどは、更にバニラの香りが加わりリッチな印象が強まります。
また、樹齢を重ねた古木を用いて作られたワインからは、ポートワインのような濃縮した奥行きのある風味を感じることが出来ます。
味わい
特にカリフォルニアのものなどはボリュームのある味わい。
よく熟して丸みを帯びた渋みと、香りの印象よりもしっかりとした酸味が感じられます。
また、ほんのりと甘みを感じることも多い品種です。
一概にカリフォルニアといっても様々な環境がありますが、比較的冷涼になれば新鮮な果実の風味が強く感じられ、温暖になればスパイスのような香りが加わる傾向にあります。
また、イタリアの石灰質土壌で栽培されたプリミティーボなどは、しっかりと酸味が出ており、口に含んでから後味にかけて凛とした印象を受けます。
フルーツトマトのような新鮮で瑞々しい後口は、カリフォルニアのどっしりとしたコンポートのような味わいとはまた違った魅力があります。
シノニム
プリミティーヴォ(イタリア)
ジンファンデルの主な栽培地
アメリカ
18世紀にオーストラリアから輸入され、栽培が始まりました。
特にカリフォルニア州の暑く乾燥した気候が適しており、力強い骨格と果実感を強調するほの甘みの魅力的なワインになります。
1970年代には、「ホワイト・ジンファンデル」の発明が一大ブームを巻き起こしました。
これは早摘みしたジンファンデルで作る、やや甘口のロゼ。
しっかり冷やして気軽に楽しめる、お洒落なスタイルで大人気だったようです。
その頃に多くのジンファンデルが植樹されましたが、その畑のブドウ木が樹齢を重ねて、現在の高品質なジンファンデルへと受け継がれています。
こういった樹齢の高いブドウの木は、地中にしっかりと根を張りその土地に馴染んでいます。
収量も自然と低くなり、安定して良質の房が収穫できるようになるのです。
なるべく人為的な操作を加えずワインを作る自然派のワイナリーも、このジンファンデルの古木を使い、新しいムーブメントを引き起こしています。
「ニュー・カリフォルニア」という名前でカテゴライズされている一連のワイナリーは、これまでの濃厚で重たいスタイルに決別し、軽やかで自然体の味わいを目指して全く新しいジンファンデルを作り出しています。。
イタリア
イタリアでこのブドウはプリミティーヴォという名前で呼ばれています。
半島の踵に当たるプーリア州で主に栽培され、往々にしてネグロ・アマーロとブレンドされます。
有名なものはD.O.C.プリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリアですが、そのほとんどはD.O.C.では無く、より広く規制のゆるいI.G.P.格付けでワインにされています。
プーリア州はイタリアには珍しく、山岳地帯が少ない平野の土地。
キャンティやバローロのような有名なイタリアワインは厳格な山や丘の味がしますが、プーリア州の肥沃な平野で作られるジンファンデルは独特のなだらかな味わい。
ほかのイタリアワインにはない魅力を持っています。
ジンファンデルに合う料理
- ステーキ
- 炭火焼
- アクアパッツァ
- さばのトマトに込み
- 肉じゃが
- ラタトゥイユ
- ブルーチーズなどしっかりしたもの
オススメのワイン
オーク・リッジ・ワイナリー イントゥ・ジンファンデル ローダイ
世界で一番広いジンファンデルの畑を持つ、カリフォルニアのワイナリー。
濃厚なチョコやプラムの香り、樽熟成のバニラ香が合わさり、これぞカリフォルニアのジンファンデル。
ポッジョ・レ・ヴォルピ プリミティーヴォ・ディ・サレント
イタリア、プーリア州のプリミティーヴォ。
甘やかでずっしり詰まった香り、それでもダラけない酸の効いたボディが素晴らしい。
ジャムやリキュールのような香りではなく、あくまで良く完熟した果実の風味が楽しめます。
ブロック・セラーズ ヴァイン・スター ソノマ ジンファンデル
ニュー・カリフォルニアと呼ばれる一連の生産者のひとつ。
これまでのカリフォルニアワインに見られた、リッチで濃厚なスタイルとは真逆の、軽やかで素材の新鮮さを活かしたワイン作りがポイントです。
明るくスムースな飲み口、これまでとは全く異なるジンファンデル。
ジュースのような流れの良い味わいと、ピノ・ノワールのような軽やかなボディが楽しめます。
まとめ
濃厚な風味と仄かな甘味は好みの分かれるところではありますが、非常に個性的なワインを生み出すジンファンデル。
作られるワインのスタイル多様化で、現在は様々な味わいが楽しめます。
まだ飲んだことが無い方も、しばらくご無沙汰していた方も、この機会に是非ジンファンデルを試してみてください。