コンドリュー、シャトー・グリエ。
ムルソーやモンラッシェやソーテルヌにも劣らない名声を誇るこれらのワインを作り出すのは、ヴィオニエという品種です。
赤ワインのイメージが強いローヌ地方で、素晴らしい品質の白ワインを生み出します。
熟れた黄桃やカリンの香り、エキゾチックでフローラルなスパイスやスミレの香り、華やかで飲み応えもあり、一度飲むと忘れられない個性をもつブドウがヴィオニエ。
その魅力を見て行きましょう。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
ヴィオニエの特徴
ヴィオニエは古い起源をもっており、いつごろから栽培され始めたのかは知られていません。
3世紀にはローマ皇帝の指示でクロアチアから現フランスのローヌ地方へ運ばれたといわれています。
温暖で乾燥した気候を好むブドウで、地中海の影響で暖かく、ミストラルという強い北風のお陰で乾燥する北部ローヌは非常に相性がよい栽培環境でした。
ヴィオニエの最高峰を生み出すコンドリューや、その中でもシャトー・グリエだけが作ることが出来る同名のシャトー・グリエというエリアは、北部ローヌに存在します。
香りが特徴的なだけでなく、度数もやや高めでボディがあり、がっしりとした体躯の味わいがあり、飲み応えもあります。
後味にナッツのようなほろ苦味を感じるものも多く、非常に堂々とした味わいのワインになります。
しかしながら、その香りは意外にもデリケートで、樽のきかせ方が下手だとすぐに消えてしまいます。
低価格のヴィオニエで華やかな香りがせず、樽熟成のシャルドネかな?と思うようなワインをたまに見かけますが、ヴィオニエの繊細な個性を上手く扱いきれていない例だと思います。
また、単体で素晴らしい白ワインになるだけでなく、シラーに補助的にブレンドされることもあります。
こうすることでより抜けが良く、立ち上るような香りのシラーが出来上がります。
また、単にブレンドではなく醗酵の段階からシラーにヴィオニエを加えると、ワインの色づきがよくなるようです。
このような方法は北部ローヌで良く見られますが、その他にもオーストラリアやアメリカのワシントン州のワインにも見ることが出来ます。
香り
華やかで力強い香り立ち。
黄桃やカリンなど、黄色く甘みも強いイメージのトロピカルな果実の香りがあり、アニスやクローブ、シナモンなどの甘やかなスパイス香が重なります。
スミレなど花を連想させる香りも。
ナッツや場合によっては抹茶のようなコクのある青みを感じることもあります。
味わい
豊かな香りとは裏腹に、しっかりとドライな味わい。
酸味は低く、後口にナッツのような心地よい苦味が感じられます。
アルコール度数も比較的高く、口の中で大きくそれでいてがっしりと味わいが立ち上がるタイプ。
最上のシャルドネやリースリングに感じられる、堂々とした骨格を、上手く作られたヴィオニエも持つことが出来ます。
ヴィオニエの主な栽培地
フランス
世界で最も素晴らしいヴィオニエを生むのがフランスのローヌ地方北部。
地中海へと注ぎ込むローヌ川沿いの急斜面にある産地で、地中海の温暖な気候を受けながらも、渓谷を走る強い北風(ミストラルと呼ばれます)の影響で乾燥し、非常に過酷な栽培環境にあります。
農作業をする人間にとっては大変ですが、ブドウへの適度なストレスは高品質なワインにつながります。
北部ローヌ地方にある最高峰のヴィオニエを作り出すエリア、コンドリューでは、砂壁を用いた段々畑でヴィオニエが栽培されています。
盆栽のように低くねじれたヴィオニエの樹からは素晴らしい品質のブドウが収穫され、香り高くも抑制が効いた、最上のワインが作られます。
ローヌ地方からそのまま南へ下ったラングドック・ルシヨン地方でもヴィオニエは栽培されていますが、ぼんやりと抑揚が無いワインも多く、良いヴィオニエを見つけるには忍耐と注意が必要です。
アメリカ
アメリカのワシントン州は暑く乾燥しているため、シラーやヴィオニエなどのローヌ系品種が栽培されています。
たっぷりと豊かな香り立ちと、ローヌ地方のものよりも柔らかくふくよかな味わいが特徴で、比較的とっつきやすいワインになります。
オーストラリア
1980年代頃からオーストラリアでも栽培されるようになり、一定の成果を収めています。
ヤルンバがイーデン・ヴァレーで作るヴィオニエなどが代表的で、トップキュヴェはもとより、低価格なワイ・シリーズもヴィオニエの個性が良く出ていておススメできます。
ローヌスタイルでシラーに補助的にブレンドされて使われている例も多く見受けられます。
その他の国
その他ではニュージーランド、チリ、イスラエルなどで栽培されています。
イスラエルのヴィオニエはこれまた面白く、リッチで豊かな味わい。
有名どころで言えばヤルデンというメーカーが手に入れやすく、広いラインナップがあります。
おすすめのワイン
ドメーヌ・ジャンヌ・ガイヤール ヴィオニエ
ローヌ地方のヴィオニエ。
クリーンで豊かな果実味、ピシッと整った輪郭でとても上品な味わいです。
ヴィオニエの良さがクリアに分かる一本。
ヤルンバ ワイ・シリーズ ヴィオニエ
オーストラリアのヴィオニエ。
ボリューム豊かで、ほんのりと後口に残るホロ苦みが良いアクセント。
ステンレスタンクのみの発酵・熟成でヴィオニエの繊細な香りを活かした作りになっています。
E.ギガル コンドリュー ラ・ドリアンヌ
ヴィオニエの最高峰ともいうべきコンドリューのエリアで作られるワイン。
北部ローヌの名手、E.ギガルの作品です。
タイトで辛口、非常に華やかな香りを受け止めまとめ上げるパワーが感じられます。
厚み、深み、スケールの大きさで飲む者を圧倒する、グラン・ヴァン。
ヴィオニエに合う料理
- 鶏肉のクリーム煮
- タンドリーチキンなど
- サーモンのグリル
- ムニエル
- エビの春巻きなど
- 白ねぎのグラタン
- サモサなど
- 辛口のブルーチーズ
- 白カビチーズなど
まとめ
ヴィオニエは華やかな品種でいて、意外と良いワインを見つけるのが難しい。
とはいえボディがあるので、そこそこのレベルのワインでも十分楽しく飲めてしまいます。
まずは、華やかでも繊細な香りが上手く引き出されているヴィオニエをお試しください。
この品種の素晴らしさが分かるはずです。