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ソムリエが教える、ワインをより楽しむために欠かせない「テロワール」の意味と解釈

「聞いたことあるけど…テロワールってなに…?」

ワインに詳しくなってきた人でも、より突っ込んだ内容になると全然よくわからないということはよくあることです。

そのうちの一つにテロワールも含まれるでしょう。

こちらの記事ではテロワールについての基礎的な知識を紹介しています。

是非ワインを楽しむための一つの材料として確認していただければ幸いです。

テロワールとは

テロワールとはフランス語で、風土のことを言います。
「土地」を意味するterreから派生しました。

狭義にはブドウが栽培されている土地の特徴をテロワールと呼びます。
広義のテロワールは、ブドウが育った土地の土壌や気候、その年の天候に加えて、その土地の歴史や人の営みなども含めて言及する、広い意味合いをもつ言葉です。

テロワールはフランス語独特の表現で、英語や日本語には一対一できれいにあてはまる言葉がありません。
現代日本ワインの父のような存在であるシャトー・メルシャンの麻井宇介さんは、「風土」という言葉に置き換えて、気候環境と人の営みを含めた表現をされていました。
その土地の自然環境を取り巻く歴史や文化を思い起こさせる「風土」という言葉は、一番しっくりする訳語のように思います。

ワインは、基本的にはその原料であるブドウを潰して醗酵させただけのシンプルなものです。
そのため、ブドウが育つ環境が、ワインの味わいに大きく影響をもたらします。
ワインが「テロワールを映し出す」と言われる所以です。

ブドウは多年生の植物です。
地中深く、数メートルの長さで根を張り、土地に根付きます。
何十年も生きたブドウの樹は、自然とつける房の量が減ります。
その土地にはその土地特有の酵母の生態系があり、ブドウだけでなくブドウを取り巻く環境がワインの香味に影響を与えることも、様々な角度から実証されています。

土地の気候

気候

ブドウが栽培されている場所は、気候の特徴によっていくつかのタイプに分けることができます。
年間を通して気温の変化が小さく、降水量も多めの海洋性気候や、同様に年間の気温変化が小さく、乾燥した夏を特徴とする地中海性気候。
年間の気温変化が大きく、寒い冬と暑い夏を持つ大陸性気候などがあります。

年間を通しての気温の変化と、降水量がポイントになります。

それぞれの気候により、栽培される品種や栽培方法が異なってきます。
例えば、暑さや乾燥に強く、湿度を嫌うグルナッシュなどは地中海性気候を好み、冷涼な気候を好み、鋭い酸味が身上のリースリングは大陸性気候に適しています。

生育期の降水量が多く、湿度があるポルトガルのヴィーニョ・ヴェルデ地方などは、風が良く通るように棚仕立てでブドウを栽培しています。

また、ブドウの生育期間中(北半球では4~10月)の気温によって気候区分をしたウィンクラーの気候区分というものもあります。
有名なこの気候区分では、有効積算温度によってワインの産地を5つに区分しており、その気候にふさわしいブドウ品種も一覧で分かるようになっています。

ただ、温度だけで全てが決まるというわけではありません。
例えば、日本はウィンクラーの気候区分でローヌ地方と同じリージョンⅢに分類される暖かなエリアです。
とはいえ、ローヌ地方と同じシラーやグルナッシュが日本で活躍しているわけではありません。
日照量の少なさや、生育期間中の降水量の多さから、栽培できるブドウ品種はリージョンⅢのものとは異なってくるのです。

シャルドネソーヴィニヨン・ブランカベルネ・ソーヴィニヨンなど、様々な国で栽培されている品種で比較試飲すると、気候の影響が良く分かるはずです。

降雨量

ワイン用ブドウの栽培には年間で500~700mmの降水量が理想とされています。
あまりに降水量が少ないと、生育障害を起こして上手くブドウが熟さなかったり、逆にブドウの収穫直前に雨が集中すると、味が薄まったり病害が広まったりと、ブドウ栽培に大きな影響を与えるのが雨です。

冬や春にしっかりと雨が降り、夏は適度に、そして収穫前の秋口は晴れ上がるというのが理想的な降雨パターン。
このパターンに近かった年のワインは、グレート・ヴィンテージと呼ばれることが多くあります。

また、ニューワールドの国々を中心に、降水量が不足している地域では灌漑が行われています。
パイプを通して適量に灌漑をコントロールするドリップ・イリゲーションが一般的ですが、アルゼンチンなどでは側溝から水を畑に一気に流すフラッド・イリゲーションが広く行われています。
ドリップ・イリゲーションはドリップ・イリゲーション以前から広く行われていた伝統的な方法ですので、これも広義にはその土地の文化=テロワールと解釈することができます。

日照量

光合成をおこない糖分を蓄積する植物にとって、日照量はとても大切です。
一般にブドウの完熟には1,200時間の日照時間が必要とされています。

アルコール発酵の過程では、糖分がアルコールと二酸化炭素に変換されます。
そのため、日照量豊かで糖度が高いブドウが収穫できる地域のワインは、アルコール度数が高くなる傾向にあります。

日照量は、気温とはまた違った役割を持ちます。
例えばニュージーランドのセントラル・オタゴやフランスアルザスのような場所であれば、気温は低くても日照量が多いため度数が高い傾向にあります。
逆に、オーストラリアのハンター・ヴァレーのように、比較的暖かくても日照量が少ない場所はアルコール度数が低くなります。

荒天や病害

場所によっては霜害が多かったり、カビによる病害が出たり、特定の害虫がブドウにダメージを与えることがあります。
これらの困難を避けるために、病気に強い品種を栽培したり、剪定のタイミングを遅らせたり、植樹する場所を選んだりと、ブドウの栽培に影響が出てきます。
こういった自然の災厄も、間接的にはテロワールに関わってくることがあります。

19世紀末の害虫フィロキセラ禍を受けたヨーロッパの国々では、現在は自根のブドウがほとんど残っていません。
フィロキセラ対策としてアメリカ系のブドウを台木として、接木して栽培するのが一般的です。
そのため、現在でも僅かに残っている自根のブドウの古木は、プレ・フィロキセラの樹として非常に大切にされています。

土壌や地形

土壌

テロワールと言えば、気候と土壌がまず初めに思い浮かばれるほど、土壌はワインの味に大きく影響を与えます。

土壌は粒サイズと、それらによる構造に大別できます。
畑の土の粒のサイズは、保水性や排水性、畑の温度に影響を及ぼします。
細かい方から粗い方へ順に、粘土→シルト→砂利→砂→小石と分類。
田んぼを思い浮かべると分かるように、粘土のように細かい土は保水性が高く、畑の気温も低くなります。
逆に砂質の土壌では排水性が良く、熱を蓄積する特徴があります。

ボルドー地方では早熟で水分ストレスに弱いメルローは粘土質土壌に、晩熟型で日照や熱が必要、水はけの良さを要求するカベルネ系品種は砂質土壌に植えてあります。

大雑把な方向性として、砂質はおおらかな果実の風味が感じられ、粘土質では引き締まった味わいになります。

これらの様々な粒が混ざりあい、適度な保水力と、空気や水の通り道が作られた状態になれば、ブドウは根を伸ばしやすく、呼吸も出来て乾燥もしないという理想的な環境になります。
これが土壌の構造と呼ばれるもので、理想的な団粒構造を得るために、様々な作業が行われています。

また、石灰が土壌中にあれば、ワインの味わいにピリッとした緊張感が生まれます。

傾斜

畑がある場所の傾斜も、ワインの味わいに大きくかかわってきます。
平地よりも斜面の方が水はけが良く、高品質なブドウ栽培で好まれる傾向にあります。

一般には、日照量が担保される南向き斜面が良いとされています。
例えばアルザス地方のグラン・クリュの多くは南向きや南東向きの斜面にあります。

畑が東向きの斜面にあれば、朝日が昇ってすぐに畑が温まるため、霜害のリスクが減ります。
逆に西向き斜面では、夕日が沈むまで日が当たるため、長い日照時間が確保できます。

また、斜面のどの場所に畑が位置するかということも大切です。
斜面の下は冷気が溜まりやすく、霜害のリスクがあります。

ブルゴーニュ地方は、土壌や細かな気候によって厳密に畑が格付けされていることで有名です。
グラン・クリュのほとんどは斜面の中腹にあり、それに次ぐプルミエ・クリュはその上下を囲んでいます。
より下のランクにあたるヴィラージュ・クラスの畑の多くは、斜面を下り終わった平地に広がっています。

人・文化

ワインは基本的にブドウが収穫された場所の近くで醸造されます。
必然的に、その土地の自然環境に合わせて、ワイン作りの技法が発展していきます。
これも、広義のテロワールに含まれるものです。

例えば、冷涼で歴史的にブドウの完熟が難しかったドイツでは、糖度を基準にした格付けが生まれました。
とりわけ糖度の高いトロッケンベーレンアウスレーゼは高額で取引されます。

また、本来は病害であるカビの一種が、条件が揃うことによってワイン作りに利する貴腐や、氷点下での収穫で糖度が高まるアイスワインなどもテロワールのなせる業だと言えます。

熟成の方法にも地域差があり、古い大樽やコンクリートタンクを用いるエリアや、小さなサイズの樽を用いるエリア、更にはシチリアやジョージアのように土の甕を用いるところやギリシャのレッツィーナのように松ヤニを加えて熟成するところもあります。

ステンレス製のタンクが開発されたのは現代のことですが、ブドウの風味をクリーンに引き出して、ドイツ北イタリアの白ワインにおいて品質向上に貢献しました。
これらの地域ではステンレスタンクが好んで用いられ、ワインの特徴を形作っています。

まとめ

私達には馴染みの無いテロワールという言葉。
広がりのある概念であるため、フランスの栽培家の間でもいろいろな解釈があります。
あまり難しく考えすぎず、ワインの味わいを形作った気候風土というイメージを持ちましょう。
飲んでいるワインの味から、それが作られた場所をイメージできるというのは、ワイン好きにだけ許された特権でもあります。
ワインの味わいの背景にあるテロワールに思いをめぐらせて見てください。
どんどんワインが楽しくなってくるはずです。