品種単位であまり語られることのない繊細な香りと厚いボディのルーサンヌ。
大抵はマルサンヌとペアになって、赤ワインの印象が強すぎる産地ローヌ地方の白ワインを作っています。
同じ地中海系の白ブドウ品種ではヴィオニエの影に隠れてしまい、あまり注目されることのないブドウですが、南仏を始め、アメリカ、オーストラリア、イタリア、そしてサヴォワ地方やスイスなどでも活躍しています。
見逃してしまいがちですが、実はなかなか良いブドウ。
今回はルーサンヌを見ていきましょう。
ルーサンヌの特徴、外観、香り、味わい

ルーサンヌは主にフランスのローヌ地方で栽培されている白ブドウです。
樹勢が強く、温暖な気候と、砂質や石灰岩などの水はけの良い土壌を好みます。
逆に湿気が苦手で、カビなどに対して弱い側面を持ちます。
やや熟すのは早く、9月頃に収穫が可能。
同じくローヌ地方の白ブドウ、マルサンヌと一緒に栽培され、ブレンドされることがほとんどです。
ちなみに、南仏の偉大なワインA.O.C.シャトー・ヌフ・デュ・パプに使用するのが許可されているのはルーサンヌの方。
マルサンヌは使うことが出来ません。
また、これも赤ワインのほうが有名ですが、A.O.C.エルミタージュやA.O.C.サン・ジョセフの偉大な白も作ることが出来ます。
香り
ボリュームはあるがデリケートで繊細な香り。
洋ナシやカモミールティー、花のような香りと、ハチミツやカリンなど、甘やかな雰囲気の香りがあります。
味わい
ボリュームがあり、ローヌ系白品種のなかでは比較的酸味があるほうです。
繊細な香りと酸のあるボディのルーサンヌと、ボリュームがありアルコールとボディに富むマルサンヌ、という組み合わせでよく使われます。
シノニム
ベルジュロン(フランス/サヴォワ地方)
ルーサンヌとマルサンヌの違い
マルサンヌとルーサンヌは、ブレンドされることが多い品種です。
DNA研究では、マルサンヌとルーサンヌには親子の関係があること分かっていますが、どちらが親などの詳細は明らかになっていません。
マルサンヌの方がボリュームがあり、とろっとした厚みや後味にほのかにナッツのような苦味があるのも特徴的です。ルーサンヌは、洋ナシやカモミールティー、花のようなデリケートな香りが高く、酸味もあります。
ブレンドでは、マルサンヌがしっかりとした骨格と重さを与えるのに対して、ルーサンヌは香りや風味を加えます。
※シャトーヌフ・デュ・パプの白ワインで使用できるのは「ルーサンヌ」です。「マルサンヌ」は使えないので、混同しないようにしましょう。
ルーサンヌのおすすめワイン4選
コート・デュ・ローヌ・ブランラベカソンヌアンドレ・ブルネル
フランス、ローヌ地方のルーサンヌ。
可愛らしい香り、つるんとした舌触りとボディ。
ルーサンヌの良さがシンプルに引き出されています。
シニャン・ベルジュロン / フィリップ・エ・シルヴァン・ラヴィエ
フランス、サヴォワ地方のルーサンヌ100%のワイン。
アルプス山麓の急斜面で栽培されたルーサンヌで、オレンジやカリンのとろんとした香り・味わいにカモミールの爽やかなアクセントがあります。
ボディも感じられますが、それよりは全体を覆うエレガントな雰囲気が魅力的です。
シャトー・ド・ボーカステル シャトー・ヌフ・デュ・パプ ブラン
ルーサンヌで作られるシャトー・ヌフ・デュ・パプの白。
南仏のワインらしく、どっしり構えたボディと広がりのある味わい。
ルーサンヌの力強さや堂々とした居住まいが引き出された、偉大なワインです。
ドメーヌ・ミュル・ミュル・イウム ルーサンヌ
モンペリエ郊外のドメーヌです。
はちみつ、ハーブ、レモンなどの香り、味わいはやや控えめですがミネラルや酸が豊富です。
甘みは殆ど感じませんが、とてもまろやかで飲みやすい辛口です。
ルーサンヌの主な栽培地
フランス

メインは南フランスのローヌ地方やラングドック・ルシヨン地方。
赤ワインの陰に隠れてしまっていますが、A.O.C.エルミタージュやA.O.C.サン・ジョセフの白は、厚いボディと香りのエレガンスが感じられ、非常にできの良いものが多くあります。
エビのグラタンやホタテなど、甲殻類と相性が良く、イメージとしてはボルドー地方のセミヨンに近い使い方が出来ます。
これらの北部ローヌ地方に比べ、南部ローヌ、そしてそこから更に下ったラングドック・ルシヨン地方では、メロンやハチミツの香りが強く、味わいもより丸みを帯びてきます。
また、ローヌ地方から東へ向かったアルプスの麓、サヴォワ地方でもルーサンヌは栽培されています。
ここでは繊細な香りと綺麗な酸味が引き出されており、透明感のあるピュアな味わい。
ブルゴーニュワインファンにも訴えかけるようなエレガンスがあります。
その他の国
その他、ルーサンヌはローヌ系品種が栽培されている場所で同じように栽培されていることが多いです。
アメリカやオーストラリアでシラーやヴィオニエと一緒に活躍しています。
また、スイスでも栽培されており、これはフランスのサヴォワ地方のルーサンヌと似た特徴を持ちます。
ルーサンヌに合う料理
程よい酸味とフルーティでバランスの取れたルーサンヌは汎用性も高く、さまざまな料理とマリアージュします。シーフード系のクリームパスタや、ロブスターテルミドール、ホタテのバター焼きなどのクリーミーなシーフードもおすすめです。

料理
- チキングラタン
- 鶏のクリーム煮など
- エビのグラタン
- ロブスターテルミドール
- ホタテのバター焼き
- マスのホイル焼きなど
- ポテトサラダ
- サトイモの煮付けなど
チーズ
- ボーフォール(サヴォワ地方のハードチーズ)
- エメンタール
- コンテ
まとめ
どうしても赤ワインが目立ってしまう産地に植えられた白ブドウであり、しかも大抵はマルサンヌとセットでブレンドされてしまう品種なので単体では忘れられてしまいがちですが、ルーサンヌはルーサンヌにしかない魅力をたくさん持っています。
フルボディ寄りの骨格のある白ワイン、例えばセミヨンやブルゴーニュの樽をかけたシャルドネなどと同じように活躍できる品種で、お肉やチーズとも楽しみやすい。
是非、ルーサンヌのワインを探してみてくださいね。



