リースリングはシャルドネと並んで白ワインの最高峰を生み出すブドウです。
モーゼル、アルザス、ヴァッハウなど、ヨーロッパの中でもとりわけ大陸性の気候のなかで偉大なリースリングは生まれます。
そのスタイルも、鋭い酸味とバランスをとるように甘みが残ったものから、下がたたかれたようにビリビリ痺れるごく辛口、そして貴腐ブドウを使ったごく甘口まで様々。
味わいは土壌によって敏感に変わり、ある意味シャルドネよりも土地の味わいを反映しているかもしれません。
品種の個性、テロワールの反映、長期熟成のポテンシャルと偉大なワインになる要素を全て備えた、まさに白ブドウの頂点。
今回はそんなリースリングを見て行きましょう。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
リースリングの特徴
原産地は現ドイツのライン川流域と考えられているようです。
冷涼で痩せた土壌を好み、ヨーロッパではドイツやフランスのアルザス地方、北イタリアやオーストリアなどが代表的な産地。
白ブドウの中では晩熟で、偉大なリースリングは急斜面の痩せた畑から生まれます。
分かりやすい例でいくと、ドイツのモーゼル地方やナーエ地方、オーストリアの原生岩むき出しの畑があるヴァッハウ地方などです。
いずれもスレート(粘板岩・屋根瓦にも使われます)や片岩、花崗岩などがメイン。
フランスのアルザス地方ではこれらの土壌に加えて石灰質土壌でも栽培されており、鋭さと力強さを両立した頑強なリースリングが生まれています。
リースリングは香りのニュアンスに富み、しっかりとした味の骨組みがあり、長期間の熟成で変化し、さらには栽培環境を敏感に味に反映する、偉大なワインの典型です。
シャルドネのように様々な栽培環境で育つわけではありませんが、そういった魅力があるために世界中で栽培が試みられています。
ヨーロッパ以外ではオーストラリアやニュージーランド、アメリカなど。
どれもが最高のリースリングになるわけではありませんが、それぞれの産地で注目に値するものが作られています。
香り
洋梨や白桃、ハチミツの香りと、カモミールやフェンネルのような香り、石や硬水を思わせるような無機質な冷たい香りが感じられます。
栽培環境や醸造方法により様々な香りが現れ、ライムやレモンのような香りが強く感じられることもあれば、黄桃やマンゴーなど、より熟れた甘やかな果実を想像する香りがメインのものもあります。
基本的にステンレスタンクなどワインに香りをつけない設備で醸造・熟成されるため、オークの香りとは無縁。
アルザス地方でも古い大樽を使うので、新樽のような香りは現れません。
味わい
骨太な酸味が味わい全体を支配します。
しっかりと口の中に主張する、ボリュームのある味わいになることが多い品種。
しかしながら、例えばフルボディのシャルドネのように大きく広がるわけではなく、酸味を中心に束ねられ、集中力のある力強さが特徴です。
甘口から辛口まで味わいの幅が広いのも特徴のひとつ。
ドイツのリースリングのように強力な酸味とバランスをとった甘みもあれば、アルザスの遅摘みワインのようにスケールの大きい甘口ワインを指向して作られたものもあります。
シノニム
ライン・リースリング、ホワイト・リースリング(東欧諸国)
リースリングの主な栽培地
ドイツ
リースリングを代表する産地がドイツです。
中でも繊細で軽やか、優雅の極地のようなリースリングを生み出すモーゼル地方と、辛口スタイルも増えてきているタイトでクールなラインガウ地方が有名。
どちらも川沿いにある産地で、良い畑は表土の薄い斜面に存在しています。
そのため栽培は困難ですが、自然と収穫できる量も少なく、質の良いワインになります。
また、ナーエ地方の力強い果実とミネラルの表現も魅力的ですし、ラインヘッセン地方などでも高品質なリースリングが作られてきています。
ドイツのリースリングは、鋭い酸味とバランスをとるようにブドウの甘みを残したものが多く存在します。
特にモーゼル地方のものなどは、この絶妙なバランスのお陰で、不思議なほど軽やかで優雅な味わいになります。
ただ、近年は辛口のリースリングも増えてきており、これらが新しいドイツワインの流調として注目されています。
フランス
ドイツとの国境沿いにあるアルザス地方がリースリングのメッカ。
リースリングに限らず、ドイツと共通するブドウ品種が多く栽培されており、食文化の点からも類似を見ることができます。
アルザス地方は夏暑く冬寒い大陸性気候の典型のような場所で、なおかつ生育期の降水量が非常に少ない栽培環境が特徴です。
雨を気にすることなく収穫のタイミングを決めることができるため、遅摘みの甘口(=ヴァンダンジュ・タルディーヴ)や貴腐ブドウを用いた甘口(=セレクション・ド・グラン・ノーブル)も作られています。
また、アルザスは地殻変動による土壌の多様性でも知られています。
アルザスのグラン・クリュは基本的に土壌別に分類することが可能で、リースリングは土壌の違いを味に反映しています。
オーストリア
オーストリアのリースリング銘醸地は主にヴァッハウ地方やクレムスタール地方。
ドナウ川添いの斜面に畑が広がるワイン産地で、ドイツのモーゼル地方やラインガウ地方と似た光景を見ることができます。
オーストリアの畑といえば保水性の高いレス土壌が有名ですが、リースリングが植えられているのは表土が薄く母岩が露出しそうな急斜面。
果実味の厚さと腰の粘り、どっしりと構えた堂々たるリースリングが生まれます。
ヨーロッパ以外の国
ヨーロッパ以外ではアメリカのワシントン州やオレゴン州、オーストラリアのマウント・バーカー地区やイーデン・ヴァレー、クレア・ヴァレー、ニュージーランドや南アフリカの海沿いエリアなどで栽培されています。
ヨーロッパ以外では同じく冷涼地域を好むピノ・ノワールと同じエリアで栽培されることが多いようです。
おすすめのワイン
フリッツ・ハーク ブラウネベルガー・ユッファー・ゾンネンウーア アウスレーゼ ゴールドカプセル
ドイツはモーゼル地方の最高峰、ゾンネンウーア畑のアウスレーゼ。
鋭い酸味と甘みによるバランス、涼しさを残しながらもしっかりと詰まった果実の香り、それらが熟成によりまとまり、変化し、得も言われぬ優雅な味わいに達しています。
少々お値段は張りますが、良いモーゼルワインは他では得られない素晴らしい味わいを持っています。
何かの機会にお試しあれ。
ドメーヌ・ボット・ゲイル アルザス・リースリング レゼレマン
アルザスの骨太な酸味、堂々とした香りが感じられる、リースリングの名手ボット・ゲイルによるワイン。
アルザスのリースリングはスタイルも味も様々ですが、その中でも手の届く価格で楽しむのに十分すぎるものです。
アルクーミ リースリング [ 白ワイン 辛口 オーストラリア 750ml ]
西オーストラリア地区で最も大きい家族経営のワイナリーによるワインです。
オーストラリアのリースリングと言えばクレア・ヴァレーやイーデン・ヴァレーのレモンスカッシュのような爽快でエネルギッシュな味わいが知られていますが、生育期の雨にも恵まれる西オーストラリアのリースリングはよりしっとりと落ち着いた滋味あふれる味わい。
ライムや洋梨、ミントや岩塩、花に蜂蜜と表現に富んだクールなリースリング。
リースリングに合う料理
- ハーブ入りソーセージ
- 豚肉とザワークラウトの煮込み
- 白身魚の甘酢掛け
- キスのてんぷら
- マッシュポテト
- ザワークラウト
- ウォッシュド・チーズ
- 甘口にはブルー・チーズなど
まとめ
リースリングはシャルドネと並んで偉大なワインを生み出す、高貴なブドウのひとつです。
また、気候、土壌を明確に味わいに反映する上に、超辛口から甘口まで存在する、非常に多様なワインを生むことができます。
リースリングだけでスパークリング、前菜向けのほろ甘いフレッシュなもの、メイン用のフルボディ、デザートの甘口、と何でもそろってしまいます。
必ず自分好みの一本が見つかるはず。
是非試してみてください。