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ローヌ地方のワインの産地や品種の特徴

ローヌ地方のイラスト

スイスの水源から流れるローヌ川。
フランスのリヨンあたりで南下し始め、地中海に注ぎ込みます。
その渓谷地帯を中心に広がるワイン産地が、ローヌ地方。

険しい斜面でシラーやヴィオニエの研ぎ澄まされた味わいが生まれる北部と、ブドウ品種のブレンドで丸く広がりのある地中海的な味を持つ南部があり、探索し甲斐のある産地です。

ローヌ地方の主な産地

ワイン産地はヴァランスを境に、北ローヌと南ローヌに分かれます。
気候やワインのスタイルも異なるので、別々に見ていきましょう。

北ローヌ(セプタントリオナル)

北ローヌではローヌ川右岸にワイン畑が広がります。
東向きの急斜面で栽培され、大陸性気候の影響とミストラルと呼ばれる強い北風を受けて、引き締まった味わいと香り高さを兼ね備えたワインが出来ます。

主要品種はシラー。
ローヌ地方の花崗岩質や片岩質と相性が良く、筋肉質なピノ・ノワールともいうべきボディと香りが特徴。

A.O.C.コート・ロティ

ローヌ地方最北のA.O.C.。
コート・ロティ(=焼かれた丘)の名の通り、南向き急斜面に容赦なく日光が降り注ぎます。
良く熟れ、しっかりした香り、タンニン、酸味がバッと立ち上ってくるワイン。
シラー主体ですが、ヴィオニエを少量混醸することができます。

シラー+ヴィオニエというブレンドは相性が良く、しばしば他の国でも目にします。
がっしりと引き締まる、またはどっしりと濃縮するシラーの味に風通しの良さを与え、魅力を引き出す役割があります。

A.O.C.コンドリュー

世界最高のヴィオニエを生み出すエリア。
コンドリュー内のA.O.C.シャトー・グリエは、同名のワイナリー飲みに許されたA.O.C.で、フランスでも数少ない珍しいアペラシオンです。

ラングドックやアメリカなどで見かけるヴィオニエとは全く別物。
厚い一枚岩のようなブレのないボディやほろ苦さの上に、万華鏡のように艶やかで変化自在な香りが湧き出ます。

価格はしますが、どこかで一度飲んでおきたいワインのひとつです。

A.O.C.サン・ジョセフ

北ローヌでは広いエリアを持つ産地。
シラーをメインに、ルーサンヌやマルサンヌのブレンドが可能です。
やや地中海性気候の影響も受け、畑のエリアや生産者によって、多少スタイルに幅があります。
北ローヌの有名&高級アペラシオンの中では、比較的お買い得が探せる産地でもあります。

A.O.C.エルミタージュ

ローヌ地方を代表するような超有名な産地。
ここと次のA.O.C.クローズ・エルミタージュのみが北ローヌで左岸に位置します。
エルミタージュの丘によって北風が遮られ、日照豊富な南向き~西向き斜面。
全体的な味のまとまりが高次元で良く、力強い渋みや酸味を包み込むような滑らかな舌触りを感じることができます。

A.O.C.クローズ・エルミタージュ

エルミタージュを取り囲むような広い産地です。
エルミタージュに比べ、味の線が細く、出来の良いものからは上品な印象を受けます。
黒コショウの香りが特徴的で、スーッと鼻に抜けるような清々しさが魅力です。

A.O.C.コルナス

ローヌ川の右岸に戻り、急斜面でほぼ南向き。
北風から守られると同時に、地中海からの影響も混じるため、良く熟ししっかりとした骨格を持つシラーが生まれます。

A.O.C.サン・ペレイ

ルーサンヌ、マルサンヌから作られる白ワインの産地。
どちらも果実感があり肉厚な味わいを生み出します。

A.O.C.クレレット・ド・ディー

ローヌ川流域からは離れ、孤立した場所にあります。
そのため他のローヌワインとは性格が異なり、アルプス山脈の影響を受けたクリアで清々しい香りが特徴。
標高も700m近くあります。

ミュスカをベースに瓶内二次発酵で作られるスパークリングワインで、多くの場合低アルコール&やや甘口。
チーズなど乳製品に相性抜群の味わいです。

南ローヌ(メリディオナル)

ローヌ川添いの急斜面に張り付くように伸びた北ローヌとは異なり、南ローヌはローヌ川を中心に地中海に向けて裾広がりに三角形を描く広い栽培地帯です。
ワインはブレンドが基本で、赤はグルナッシュやシラーにムールヴェードルがアクセントとして入ることが多いです。

また、A.O.C.コート・デュ・ローヌやA.O.C.コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュの畑の多くはここ南ローヌにあります。
普段使いしやすい廉価なものから、高級なものまで、幅広く生産しているのが南ローヌの魅力です。

A.O.C.コート・デュ・ローヌ

ローヌ地方の広域アペラシオン。
エリアが広すぎるため、こういったスタイルとくくることはできませんが、フルーティでしっかりした赤が中心。
各ワイナリーの入門編として作られているものも多く、まずはここを気楽に試してみるのも良いと思います。

特定のコミューンでヴィラージュを名乗ることができ、更に限られたコミューンはコミューン名を付記することができます。

A.O.C.シャトー・ヌフ・デュ・パプ

14世紀に有名なアヴィニョン捕囚でこの地にローマ法王が移り住みました。
シャトー・ヌフ・デュ・パプ=法王の新しい城、ということで育った銘醸地がこのエリアです。
多様な土壌があり、ひとくくりに語ることのできない場所ではありますが、畑にごろごろ転がる小石とミストラルによる乾燥した暑い気候、そして13種類のブドウの混醸許可という極めて珍しい特徴があります。

ただ、13種類のブドウ全てを使用するかどうかは各ワイナリーの自由。
ボーカステルのように13種類すべてを用いるワイナリーもいれば、グルナッシュのみで作るところもあります。

豊かで広がりのある味わいと、どこか威厳を感じさせるスケールの大きさが特徴。

A.O.C.リラック

シャトー・ヌフ・デュ・パプの対岸にある産地。
元々隣のA.O.C.タヴェルと同様ロゼの産地でしたが、近年はシャトー・ヌフ・デュ・パプの作り手が進出してきており、かなり質の高い赤が生み出されています。

A.O.C.タヴェル

グルナッシュ主体の濃くしっかりとしたロゼ。
ボディがあり、往々にしてほの甘く仕上げてあるため、幅広い料理と合わせることができる便利なワインです。

A.O.C.ジゴンダス

グルナッシュを主体とし、濃くしっかりとしたスタイルの赤が作られています。
良く熟した果実のニュアンスと、樽熟成のココアやスモークの香りがありパワフル。
石灰の影響を受けて舌触りもパリッとしています。
漫画「神の雫」でサンタ・デュックのジゴンダスが取り上げられたこともあり、比較的有名。

A.O.C.グリニャン・デ・ザデマール

南ローヌ最北のアペラシオン。
比較的整ったスタイルの赤が作られており、過度なパワーや重さを良しとしない魅力があります。
A.O.C.コトー・デュ・トリカスタンと呼ばれていましたが、トリカスタン原子力発電所の事故による風評被害から現在の名称に変更されました。

A.O.C.ヴァントウー

ユネスコ生物圏保護区のヴァントゥー山に広がるエリア。
ふっくらと滑らかな赤やロゼ、白がある。

A.O.C.リュベロン

生物圏保護区に畑があります。
長い日照時間とリュベロン山の寒暖差で、バランスの取れた味わい。
フレッシュな果実感があり、適度な重たさで飲み飽きません。

A.O.C.ヴァンソーブル

日照豊富な丘陵地斜面、熱を蓄積する小石が転がった畑から、凝縮したシラーやグルナッシュが生まれます。
A.O.C.コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュにコミューン名を付記していましたが、2006年に単独のアペラシオンとして認可されました。

A.O.C.ケランヌ

ヴァンソーブル同様に、コミューン名付記のA.O.C.コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュから単独のアペラシオンに昇格したエリア。
柔らかくふっくらとした果実味が綺麗に感じられます。

ヴァン・ド・ナチュールのA.O.C.

南ローヌでは上質なヴァン・ド・ナチュールも作られています。
これは、発酵途中のワインにブランデーを添加して発酵を止める手法で作られる甘口の酒精強化ワイン。
A.O.C.ボーム・ド・ヴニーズ、A.O.C.ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズやA.O.C.ラストーなどがあります。

ローヌ地方の主なブドウ品種

黒ブドウ

赤でメインになるのは、シラーとグルナッシュ。
シラーは華やかな香りと引き締まった筋肉質なボディを持つワインになります。
北ローヌのような寒暖差のあるエリアで栽培されると黒コショウの香りがアクセントとして出ることもあります。
オーストラリアのバロッサなどでは比較的どっしりとしたスタイルのものが作られることもありますが、綺麗な酸味が出る特徴のおかげで、重たいよいうよりジューシーな印象を受けます。

グルナッシュは南ローヌや地中海沿岸を中心に活躍する品種。
ふっくらとした柔らかい果実感が魅力ですが、アルコール度数が上がりやすいのが玉に瑕。
他の品種とブレンドして上手くバランスをとることが多い品種です。
しかしながら、上手な造り手はグルナッシュだけでもアルコールの高さを感じさせず、果実を中心とした優しい魅力を上手に生かすことができます。
ローヌ以外の有名産地としては、スペインのプリオラートや、南アフリカなどが挙げられます。

シラー、グルナッシュ共に、しっかりとした濃いめのスタイルにもなり、ピノ・ノワールを思わせるような華やか&上品なスタイルにもなる二面性を持ち合わせています。

また、ブレンドで補助的に使われることが多いですが、ムールヴェードルも大切な品種。
強い紫色の色調と、肉厚な味わい。
ワインに肉付けをするように、低めの比率でブレンドされます。

白ブドウ

白ブドウで有名なのは、ヴィオニエ。
桃のコンポートやジンジャー、ダージリンを思わせるような艶やかな香りと厚みのある味わいが特徴です。
北ローヌのコンドリューのように、単体で傑出したワインになるほか、シラーにブレンドされると、シラーの魅力を最大限に引き立ててくれます。

南ローヌで広く栽培されている白ブドウがルーサンヌとマルサンヌ。
多くの場合はセットのようにしてブレンドされます。
厚みのある味わいの中にもどこか爽やかなニュアンスが残り、つるんとした舌触りとフルーティな香りの対比が面白い白ワインになります。

格付け

基本的にグラン・クリュなどはありませんが、広い範囲で大量の湾が作られている南ローヌでは、A.O.C.が階層構造になっています。
上から順に、以下の通りです。

  1. クリュ(ジゴンダス、シャトー・ヌフ・デュ・パプetc.)
  2. コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ+コミューン名
  3. コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ
  4. コート・デュ・ローヌ

【ソムリエが選ぶ】おすすめのローヌ地方のワイン3選

イヴ・キュイロン シラー ヴァン・ド・フランス

北ローヌを中心に、特にコンドリューで名を馳せている作り手のシラー。
格付けはA.O.C.ではなくヴァン・ド・フランスですが、これが中々北ローヌの綺麗なスタイルのシラーをよく現しています。
掘り出し物を探している方にも、まずは低価格のものでイメージをつかみたい方にもおススメ。

ドメーヌ・コンビエ A.O.C.クローズ・エルミタージュ

ドメーヌ・コンビエ A.O.C.クローズ・エルミタージュの写真

ピノ・ノワールを思わせるような綺麗で華やかなクローズ・エルミタージュ。
滑らかな舌触りや、引き締まっていながらもパワーを前面に見せない上品な造りが素晴らしい。
はずれも多いクローズ・エルミタージュで、間違いのない一本です。

シャトー・ラ・ネルト A.O.C.シャトー・ヌフ・デュ・パプ

[2009] シャトーヌフ・デュ・パプ ルージュ ”キュヴェ・デ・カデット” (シャトー・ラ・ネルト)Chateauneufu du Pape Rouge “Cuvee des Cadettes” (Chateau de la Nerthe)

歴史あるシャトーが連なるシャトー・ヌフ・デュ・パプでも特に老舗のシャトー。
グルナッシュを主体にブレンドされており、丸く調和のとれた味わい。
どこかホッとするような優しさを持ち合わせていながら、多数の品種ブレンドによる深み、威厳ある堂々としたワインです。
シャトー・ヌフ・デュ・パプには優れた作り手が幾つもいますが、その中でも手に入る価格の素晴らしいシャトーだと思います。

まとめ

ローヌ地方を代表するシラーとグルナッシュは、世界の様々な場所で作られています。
多くは果実味溢れるしっかりとしたスタイルなので、ローヌ地方もそんなイメージを持ちやすいですが、それだけではないのが面白いところ。
北ローヌと南ローヌの違いはあれど、ローヌ地方のワインを飲んでいると、綺麗な味の表現や華やかな一面に気付きます。

ローヌワインの多様な姿を楽しんでください。

その他のフランスのワインの地方については以下の記事から参考にしてください。

フランスの産地のイラストフランスワインの産地や品種の特徴|おすすめ〜高級銘柄