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ポルトガルワインの特徴とおすすめワイン4選

ポルトガルのイラスト

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パン、ビスケット、タバコ、カステラ・・・意外と日本ではポルトガル由来の言葉は多くあふれています。

一説によると、日本で始めて飲まれたワインはポルトガルの赤ワインだとも言われています。

現在のポルトガルは、イタリアと並んで土着品種の宝庫。
250種類以上の土着品種が栽培されてると言われています。

昔ながらの伝統的なワイン作りも未だ健在で、多品種混植やラガール(石桶)での足踏み作業などを見ることが出来ます。

古き良き伝統が息づくポルトガルワインを紹介します。

ポルトガルの主なワイン生産地

ポルトガル西は大西洋、北と東はスペインに接しています。

南北に長く、北部は山や丘陵地で花崗岩や片岩土壌、南部は平野部で粘土や石灰質土壌。
そしてそれを区切るように東西に川が流れます。

それでは主要産地を見ていきましょう。

緑豊かな「ヴィーニョ・ヴェルデD.O.C.」

ポルトガル最北部、スペインとの国境沿いを流れるミーニョ川沿いの産地です。

低アルコール&微発泡のスタイルを得意とし、ミーニョ川を挟んで北側のスペイン、リアス・バイシャスD.O.との共通点の方が、ポルトガルの他の産地よりも多くあります。

品種はローレイロ、アヴェッソ、アリント、トレイシャドゥーラ、アザルなどのブレンド。

9つのサブ・リージョンに分けられ、特に「モンサォン・イ・メルガッソ」は殆どリアス・バイシャスともいえる場所にあります。
トロピカルで華やかなアルバリーニョをメインに高品質なヴィーニョ・ヴェルデを作るサブ・リージョンです。

仕立て方は主に棚仕立て。
ブドウの棚の下を風が吹きぬけ、湿度がたまらず、光合成も効率よく出来る、海沿いのヴィーニョ・ヴェルデに適した仕立て方です。

爽やかで飲みやすいスタイルで、気軽なコップ酒として愛されてきましたが、最近はより質の高いものを作り、輸出のプロモーションに力を入れているようです。

そういったものの中には、完熟ブドウ+樽熟成タイプのもの、畑別に仕込むもの、品種別に仕込むもの、などが見受けられます。

まだ試行錯誤中という印象はありますが、面白いワインも生まれてきており、変化が起きている産地です。

また、日本には少ししか輸入されていませんが、赤の微発泡スタイルもあり、これは現地で白い茶碗で気軽に飲まれているそうです。

ポートワインが盛んなドウロ川沿いの急斜面

ポルトガルで最も有名なワイン、ポートが生まれるのがドウロ川沿いの急斜面。
ポートワインとは発酵途中のブドウ果汁に77%vol.のブランデーを加えて作る、甘口の酒精強化ワインです。

ポートが作られるエリアでは通常のワインも作られており、これは「ドウロD.O.C」として販売されます。
こちらも良く熟れた果実の滑らかな味わいで非常に魅力的。

ドウロ川下流から上流に向かって、

  • バイショ・コルゴ
  • シマ・コルゴ
  • ドウロ・スペリオール

と3つのエリアに大別されます。

ポート作りの中心地は真ん中の「シマ・コルゴ」。
川を挟んだ両岸にブドウの段々畑が連なる、美しい風景で知られます。

最上流の「ドウロ・スペリオール」は、高品質なワインが出来る環境ではあるのですが、地形が険しすぎ、道路や電気の便が良くなった1980年くらいからようやく開発されるようになりました。
寒暖差が激しく、乾燥したエリアです。

ここの伝統は、複数種類のブドウの密植&混植。
収穫した後は、ラガールと呼ばれる石の桶に入れ、みんなで足踏みして果汁や果皮や種の成分を抽出します。
動画サイトに足踏みの様子などがアップされていますが、大勢で輪になって踏んでいて、お祭りのようです。

ブドウの色素や渋みがしっかりと踏み出され、赤ワインなどは見た目から濃いワインに。
とはいえ、ドウロの急斜面と夏の日差し、特徴的な片岩や川からの照り返しがブドウを完全に熟させるので、ギスギスした渋みは無く、むしろトロンと滑らかな印象を受けます。

酒精強化のポートワインは、その質の高さや栽培・製造の手間を考えると驚くほど安い値段で売られています。
チョコレートと一緒に、またはナイトキャップとして常備しておきたいワインのひとつ。

発酵途中のブドウ果汁に77%vol.のブランデーを添加することで発酵をストップさせるため、必然的にブドウの糖分が残り甘口になります。
伝統的にはドウロ川が大西洋に流れ着く河口の町「ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア」で熟成され、イギリスなどに出荷されていましたが、現在はそれぞれの生産地で熟成することが認められています。

熟成年数や収穫年によって以下のタイプがに分けられます。基本的に複数年ブレンドのノン・ヴィンテージ。

ルビータイプ(樽熟成が短いもの)
  • ルビーポート
    3年程度の樽熟成でリリースされる、若くフレッシュなポートワイン。果実味のある明るいタイプ。
  • ヴィンテージ・ポート
    特に優れた年のブドウから作られ、2~3年ほど樽熟成して無濾過で瓶詰、その後長期間瓶の中で熟成させたもの。
  • レイト・ボトルド・ヴィンテージ・ポート(L.B.V.P.)
    ヴィンテージ・ポートほどではないが、優れた年のブドウを4~6年熟成させたのち瓶詰したもの。
トウニータイプ(小樽で熟成したもの)
  • トウニーポート
    小樽で長く熟成させ、滑らかな味わいを楽しめる。長期間の熟成により色素が落ち、トウニー(=黄褐色)の外観になることから。
    樽熟成の平均年数によって、10年、20年、30年、40年の表記ができます。
  • コリェイタ
    収穫年表示のトウニーポート。収穫の7年目以降に瓶詰します。
ホワイトタイプ
  • ライト・ドライ・ホワイト・ポート
    白ブドウが原料のポート。通常のポートはアルコール度数19~22%のところを、これは16.5%以上で、比較的辛口。

赤ワインをメインとした「ダォン、バイラーダ」

どちらもポルトガル中央やや北寄りにある、赤をメインとした隣同士の産地ですが、その環境は意外と同じではありません。

ダォンD.O.C.は内陸で山に囲まれた花崗岩や片岩のエリア。
トゥリガナショナルを主体としたブレンドの赤で、ドウロ同様しっかりと熟した丸みのある味わいに、ややフレッシュさが加わったスタイルです。

また、ブルゴーニュの白と度々比較されて注目を浴びているのが、白のエンクルザードというブドウ。
白桃とミントの組合せのような、しっかりした果実味の中にも爽やかさの感じられる味わいで、樽熟成させることで奥行きのある香りとボディがプラスされます。

ダォンD.O.C.から山を越え、西の大成洋側にあるのがバイラーダD.O.C.です。
Bairro(=粘土の地区)という名の由来が示す通り、粘土質や石灰質の平地で、バガという黒ブドウをメインとしたエリア。

ブレンドが伝統のポルトガルにしては珍しく、バガ単一のワインも多くあります。

ぎゅっと引き締まった味わいがあり、熟成するとイタリアネッビオーロにも似た雰囲気。
実はスパークリングワインも多く作られるエリアです。

世界三大酒精強化ワインの一つ「マデイラ」

シェリー、ポートと並び、世界三大酒精強化ワインとして知られるマデイラ。
マデイラ島で作られており、辛口から甘口まであります。

低アルコール・辛口・軽快な味わいがトレンドのワイン市場では忘れられがちではありますが、マデイラにはマデイラでしか味わえない素晴らしさがあります。

シェリー同様、マデイラも船旅のお酒でした。

初めは普通の、ブランデーを混ぜないワインだったのが、船旅中に酸化・加熱されて独特の風味を持つようになります。
ワインの劣化ともとれますが、これがことのほか好まれたようで17世紀にはわざわざワインを船に乗せてこの独特の風味をつけることもあったそう。

更に18世紀に、在庫過多になっていたワインの一部を蒸留し、残ったワインと混ぜて保存したところ、またもやこれが好まれるようになり、現在の酒精強化・酸化熟成・加熱熟成というスタイルが出来上がったようです。

歴史に翻弄されたワインというか、マデイラ島の歴史を織り込んだワインというか、中々面白い成り立ちのワインで、製造段階で既に酸化と加熱を経ているため、開栓後も年単位で保存が可能です。

白も赤もあり、ポートと同じように熟成年数やヴィンテージの表示があるものもあります。

首都「リスボン」

ポルトガルの首都、リスボン周辺は大規模なワインの産地です。
主にリスボンの湾よりも北側の山岳地帯に歴史的なエリアがありますが、そういったD.O.C.よりもより縛りの緩いヴィーニョ・レジョナルの格付けでワインが作られています。

そのため、アラゴネス、トゥリガナショナルなど土着品種に加えてカベルネ・ソーヴィニヨンシラーなどの国際品種からも良いものが出来ています。

広大な「アレンテージョ」

また、アレンテージョはワインだけでなくコルクの産地としても有名。
世界最大のコルクメーカー、アモリンを擁します。

非常に広いエリアをもつ産地で、ポルトガル南部ならではの暑い平野でアラゴネス(=テンプラニーリョ)などが育てられています。

ポルトガルの主なブドウ品種

ポルトガルは20世紀半ばごろからの独裁政権や独立戦争などで、世界のワイン市場からは取り残された場所でした。

結果的に、一時の国際品種ブームに流されずに済み、現在でもポルトガル固有の品種から個性的なワインが作られています。

また、この国では混植やブレンドの伝統が残っているため、何か一つの品種が飛び抜けて目立つということはありません。

その中でも代表的な黒ブドウがトゥーリガナショナル、トゥーリガフランカ。
濃い色合いそのままの力強い果実味があり、ブレンドの中核をにないます。

白ブドウでこれに相当するのはフェルナォン・ピレス(別名マリア・ゴメス)で、フローラルな香で様々なタイプのワインに使われます。

珍しく単一品種で作られることが多いのは、赤のバガと白のエンクルザード、そしてヴィーニョ・ヴェルデのアルバリーニョ。

バガは主にバイラーダで栽培され、熟成させるとイタリアのネッビオーロを思わせる引き締まったエレガンスが現れます。

エンクルザードは樽熟成させてブルゴーニュ風のしっかりとした白ワインになり、近年注目されています。

アルバリーニョはパインを思わせるトロピカルな風味と岩塩のようなアクセントがある後味で、華やかながらメリハリの効いた味わいです。

ポルトガルワインは3段階の格付け

ポルトガルの格付けは、以下の3種類。
簡単なピラミッド構造になっています。

  1. D.O.P.(またはD.O.C.=原産地名称保護)
  2. I.G.P.(ヴィーニョ・レジョナル=地理的表示保護)
  3. ヴィーニョ(地理的表示無し)

一番上のD.O.P.(D.O.C.)が最も厳しい規制のある呼称で、逆により自由なワイン作りをしたい生産者はI.G.P.や地理的表示無しのヴィーニョの格付けを使うこともあります。

【ソムリエが選ぶ】おすすめのポルトガルワイン4選

フレッシュなポート「ニーポート ルビーポート」

3年の熟成で瓶詰される、フレッシュなタイプのポートです。
ニーポートの作るポートは滑らかで比較的みずみずしさのある、通常のワインにも近いスタイル。
初めて飲むポートとしてもおすすめできます。

マデイラなら「ペレイラ・ドリヴェイラ マディラ ドライ 10年」

クリーミーで、どっしりと落ち着いた厚みのあるスタイルのマデイラを作ります。
堂々とした味わいの辛口。
ドリヴェイラの作るマデイラはどれもおすすめです。

力強い味わいの「ルイス・パト レベル バイラーダI.G.P.」

現代のポルトガルワインを代表する生産者、ルイス・パトが作るバガ主体の赤ワイン。
あっかんべえをしているユニークなラベルで一度見たら忘れません。
力強く濃度のある味わいですが、過剰な渋みや重々しさは無く、口当たりも滑らか。
時に粗野なパワーを見せるバベルを、現代流に洗練させた力作です。

白ワインなら「キンタ・ドス・ロケス エンクルザード ダォンD.O.C.」

珍しく単一品種で作られるエンクルザードのワイン。
樽熟成されたボリュームのあるタイプで、白桃とミントのような熟れた果実の雰囲気をがっしりとしたボディが力強く支えます。

まとめ

ポルトガルにはユニークな土着品種があり、世界三大酒精強化ワインのポート、マデイラがあります。

ワインの世界でも個性的な部類に入る産地で、イタリアワインが好きな人などはポルトガルも楽しいと思います。

最近は国際的なスタイルを意識したワインも増えていますが、安易に国際品種を植えるのではなく、土着品種からより滑らかで綺麗な味わいを作る方向にあり、とても良い傾向だと思います。

ポートもマデイラも、質を考えると相変わらず安いまま。
よく出来たルビーポートは、最もお買い得なワインの一つでしょう。

ポルトガルワインを飲み始めるのに、現在はかなり良い環境が整っています。
是非、気になるものから手にとって見てください。