ピノタージュは南アフリカを代表する黒ブドウのひとつで、固有の品種に注目が集まっている今、その名前を耳にする機会も増えてきました。
世界中でワイン用ブドウの品種改良が行われてきましたが、ピノタージュもそのひとつです。
品種改良と言っても、もちろん遺伝子組み換えではなく、人為的な交配によるもの。
例えばマスカット・ハンブルクとベーリーを交配させて、日本の気候でもワインにできるようなブドウを作ろうとしてできたマスカット・ベーリーAのように、病気や気候への耐性と品質の両立を目指してできたのが、これらの人口交配種になります。
南アフリカで容易に栽培でき、品質もきちんと保たれるのがピノタージュなのです。
あまりぱっとしなかった昔とはうってかわって、近年めきめきと頭角を現しています。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
【ソムリエ厳選】ピノタージュおすすめワイン4選
まず飲むなら定番の「KWV・クラシック・コレクション・ピノタージュ」
品種 | ピノタージュ |
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産地 | 南アフリカ その他南アフリカ |
価格帯 | 1,500〜2,000円 |
すっきりしつつ優雅で溢れんばかりの果実味です。
アルコール度数は14度ですが、軽やかさの感じられる1本。
コスパも良く定番で人気のピノタージュですね。
飲み応えのある「クライン・ザルゼ ヴィンヤード・セレクション・ピノタージュ」
品種 | ピノタージュ |
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産地 | 南アフリカ ステレンボッシュ |
価格帯 | 2,000〜2,500円 |
しっかり詰まった果実と凝縮感のある味わい。
フルボディのボルドースタイルですが、酸味がきれいに感じられるため、重々しくはなりません。
ブルーベリーやカカオ、ビターチョコとスパイスの風味、明るい果実の雰囲気が良く感じられます。
渋み、酸味ともにしっかりとしたのみ応えのあるピノタージュ。
ひとつの完成形「カノンコップ エステートワイン ピノタージュ」
品種 | ピノタージュ |
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産地 | 南アフリカ ステレンボッシュ |
価格帯 | 2,000〜8,000円 |
ステレンボッシュエリアの雄、カノンコップのピノタージュ。
これを飲まずしてピノタージュは語れません。
ブルーベリージャム、プラム、ミルクチョコレートなどのしっとりした重みと、ブラックペッパーや硬水のようなカチンとした味の輪郭。
ブドウが完熟しているため、フルボディでも渋みや酸味がまろやか。
同じ果実の風味でも、もぎたてそのままというよりは少しドライになった時点の味。
チョコレートの風味でも、油分多めでミルキーな印象を受けます。
力強さと滑らかさを併せ持つ、ピノタージュのひとつの完成形。
新世代「デイビット&ナディア シーブリッツクルーフ ピノタージュ」
品種 | ピノタージュ |
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産地 | 南アフリカ スワートランド |
価格帯 | 3,000〜4,000円 |
ブルゴーニュスタイルに仕上げられた、新世代のピノタージュ。
軽やかさ、ジューシーでストレートな果実感溢れる味わいが中心に組み立てられており、活き活きとした味わいです。
フルーティでシンプル、というのではなく、硬水のようなはっきりとした輪郭やレモンピールのような柑橘系のアクセント、ほんのりとカカオや皮製品の香りが香り、奥行きも備えています。
ピノタージュの特徴
ピノタージュはピノ・ノワールとサンソーの人口交配品種。
サンソーは南アフリカでエルミタージュという別名を持っており、「ピノ」・ノワール×エルミ「タージュ」=「ピノタージュ」という名前になっています。
1925年にアブラハム・アイザック・ペロード教授が交配し、その後1941年に世界で最初のピノタージュワインが作られました。
南アフリカの気候下で良く育ち、商業的にも広く栽培されるようになりました。
しかしながら、この品種特有の鼻にツンとくる香りが好まれず、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノタージュの親であるピノ・ノワールのような第一級のワイン用ブドウからは劣る存在として見られていました。
それでも栽培、醸造技術の進歩と共に、そういったきつい香りのワインは減ってきました。
加えて、ピノタージュは作る人によってがらりと変わる表情を見せてくれる面白いブドウだということが分かっています。
しっかりと樽熟成の風味をつけて、ボルドー地方のワインのようにがっしりどっしりしたフルボディの赤ワインも出来るし、片親であるピノ・ノワールを思わせるような軽やかでエレガント、チャーミングな果実の風味を持つブルゴーニュ系赤ワインだって出来ます。
一般的に、老舗ワイナリーはボルドースタイル、若手の特に自然派のものはブルゴーニュスタイルに仕上げることが多いです。
ボリュームのある香り
比較的ボリュームのある香り立ち。
フルーティなニュアンスが強く、イチゴやブルーベリー、しっかり熟したものからはプラムやプルーンのような香りが感じられます。
毛皮や皮製品のような動物的な香りと、タバコの葉のニュアンス。
それに加えて、南アフリカ特有のスモーキーな土のにおいを感じることもあります。
ゴボウのような土っぽさと、焚き火のようなスモーキーさは、癖の強い香りで、強く出すぎると面白みにかけますが、ほんのりアクセント程度に香ると奥行きのある印象を与えます。
タンニンもボディもしっかりした味わい
ボルドースタイル、ブルゴーニュスタイルどちらでも、しっかりとした酸味が感じられます。
この酸味で味わい全体にフレッシュさが保たれ、果実感も強調されます。
タンニンも比較的しっかりと感じられ、出来上がるワインはボディのあるものが多いです。
ふくらみがあるというよりは、ギュッとパワーが詰まった、グリップのある味わいが特徴です。
ピノタージュの主な栽培地は「南アフリカ」
ピノタージュを生み出した南アフリカですが、南アフリカのワイン産業は、長い間KWV一社によって担われてきました。
過去、ワインに関して需要と供給のバランスが著しく崩れ、ブドウが売り物にならなくなった時に、そのバランス調節として1918年に協同組合KWVが設立、ワイン生産を一手に引き受けたという歴史があるのです。
KWVは1997年に民営化されるまで、南アフリカのワインシーンそのものでした。
ペロード教授がピノタージュを生み出したのも、KWVとステレンボッシュ大学(南アフリカのブドウ栽培の中心的な大学)の協力があってこそ。
1990年代以降、南アフリカのアパルトヘイト政策が終焉し、世界市場との交流ができてからは、どこもかしこもカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シャルドネ。
こういった中で作られたピノタージュは、主張の強い有名品種に負けまいと、ボルドーワイン顔負けの力強いスタイル。
一時期は国際的に認知度が高い品種が好んで植えられる傾向にありましたが、その後、こういった風潮の揺り戻しとして地域特有の品種が注目されるようになりました。
近年は特に若手生産者の活躍が目立ち、フランスのブルゴーニュ地方からも南アフリカまで生産者が視察に来るように。
そんな彼らが作るピノタージュは、エレガントで軽やかなスタイル。
樽をかけてしっかりがっしりしていた以前のスタイルとは全く違った、綺麗な酸味とジューシーさが取り柄の、フレッシュな味わいのピノタージュが作られるようになってきました。
ピノタージュに合う料理
- 牛ステーキ
- 炭火焼
- ラムチョップ
- マグロのから揚げ
- カツオのたたき
- いぶりがっこ
- きんぴらごぼう
- 辛口のブルーチーズやハード系のチーズ
まとめ
その土地らしさが注目されている近年ですが、ピノタージュはそういった意味で南アフリカを代表するワインブドウ。
若い作り手の台頭で、味わいの表現もぐっと幅が広がり、ますます面白いブドウになってきました。
そもそもこのブドウからワインが作られるようになってから、まだ100年も経っていません。
ピノタージュが私たちを本当に楽しませてくれるのは、むしろこれからのような気がします。
今後も目が離せない品種のひとつです。