薄い紫の色をした果皮を持つ、ピノ・グリ。
様々なスタイルでワインにされており、とても面白いブドウの一つです。
通常の白ワインから、果皮に色がついているのでロゼにもなり、マセラシオンの長さ如何でオレンジワインにもなります。
白ワインのスタイルも、早く収穫して酸味を残し、フレッシュ&フルーティの爽やかな味わいにするものや、しっかり成熟させてトロみのあるフルボディに仕上げるものなど、幅広く作られています。
なかなか奥が深いピノ・グリを見て行きましょう。

パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
ソムリエ厳選のおすすめのワイン5選
アルザス代表の「トリンバック ピノ・グリ レゼルヴ・ペルソネル」
アルザスを代表する生産者の一つ、トリンバックのピノ・グリ。
完熟した堂々たるフレーバーと、どっしりと腰が据わった味わいはまさにピノ・グリの真骨頂です。
スモーキーなアクセント「フランツ・ケラー グラウ・ブルグンダー オーバーベルゲナー・バスガイゲ・エアステ・ラーゲ」
ドイツの南、バーデン地方のピノ・グリ。
バーデン地方はドイツの中では比較的温暖で日照量も豊富、ピノ・ノワールの銘醸地として知られています。
火山性土壌ならではの厚い果実味、スモーキーなアクセントと、ピノ・グリのお手本のような味わい。
アメリカで大人気の「アンダーウッド ピノ・グリ オレゴン グロウン」
アメリカのオレゴン州ポートランドに設立されたユニオン・ワイン・カンパニーのピノグリ。
コクがありながらも果実味は豊か。
洋梨や白桃のアロマが時間とともにコンポートの香りへ変化します、軽快なワインですね。
初めてなら「ネコティウム ピノ・グリージョ」
北イタリアはフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州のピノ・グリージョ。
名前から分かるとおり、酸味を残したフレッシュなスタイルです。
白桃や洋ナシにハーブのアクセント、さっぱりした酸味と、桃のソルベのような可愛らしい味わい。
ピノ・グリージョ・スタイルの入門としてもおススメです。
バランスの良いオレンジワイン「クラヴァン・ワインズ ピノ・グリ」
南アフリカのピノ・グリ。
ブドウの皮を漬け込みながらしっかりと成分を抽出する製法で作られたオレンジ・ワインです。
アンズやアプリコットのようなフルーツの香りとスモーキーなニュアンス、口の中で大きく膨らむ味わいを、紅茶のような渋みが引き締めます。
バランスが良く使い勝手が良いワイン。
ピノ・グリの特徴
ピノ・グリはブルゴーニュ地方原産の白ブドウ。
ピノ・ノワールから突然変異して生まれたと考えられています。
外観から特徴的で、熟すと果皮が薄紫色になります。
フランスではこれを「灰色=Gris」と表現し、ピノ・グリのように果皮がほんのり色づく白ブドウを「グリ系」の品種と呼んでいます。
ピノ・グリには大きく2つのスタイルがあります。
- 厚みがある味わいのフルボディなピノ・グリ
- フレッシュかつ爽やかなピノ・グリ
それぞれは全くと言って良いほど別物のワインになります。
厚みがある味わいのフルボディなピノ・グリ
フランスのアルザス地方や、ドイツのバーデン地方などはこのスタイルに仕上げます。
黄桃やカリン、栗のようなほくっと甘い香りに、アニス、シナモンのようなスパイスの風味や少しスモーキーなニュアンスが特徴。
樽で熟成されることも多く、だいたいは大樽ですが、場合によっては小さな新樽で熟成し、樽の香りをまとうこともあります。
往々にして粘土質土壌や石灰質土壌に植え、アルコール度数の上がりすぎや、残糖分が残るのを防ぎます。
フレッシュかつ爽やかなピノ・グリ
こちらのスタイルで作られたワインは、ピノ・グリージョと表記してあることが殆どです。
代表的な産地は北イタリア。
フリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州やトレンティーノ=アルト・アディジェ州、ヴェネト州では、酸味を残して早めに収穫したブドウを用い、ステンレスタンクでフレッシュに仕上げたピノ・グリージョを産出します。
アメリカやチリ、バーデン地方やファルツ地方を除くドイツでもこのスタイルに仕上げられることは多く、爽やか&低アルコールのすっきりスタイルが人気を博しています。
香り
黄桃、カリン、アンズなどのよく熟した甘やかなフルーツの香りに、アニス、シナモン、クローブなどのスパイス香。
仄かに漂う煙のような香りが特徴的で、さらに新樽を用いて熟成させた場合はバニラやココアのようなニュアンスも感じられます。
フレッシュなピノ・グリージョ・スタイルの場合は、洋ナシやリンゴの酸味のあるフルーツの香りに、レモンゼスト、ミント、ミネラルウォーターのすっきりとしたニュアンスが感じられます。
味わい
重厚感のあるフルボディ。
ボリュームがあり、舌触りもトロみを感じます。
酸味は穏やかで、後口に感じられるほろ苦さが味わい全体を引き締めてくれます。
ピノ・グリージョ・スタイルでは真逆で、プチプチとした酸味中心の軽やかな味わい。
フレッシュな酸を中心に、洋ナシのような果実味、ミントの爽やかさを感じながら、サラッと流れる心地よい味わいです。
シノニム|イタリアではピノグリージョ
ピノ・グリージョ(イタリアその他)、グラウ・ブルグンダー(ドイツ)、ルーレンダー(ドイツ)
ピノ・グリの主な栽培地
フランス

フランスでは主にアルザス地方で栽培されています。
アルザスではグラン・クリュを名乗れるブドウ品種が定められていますが、ピノ・グリもそのうちの一つ。
どっしりと重厚感のあるフルボディな味わいに仕上げられることがほとんどで、豚肉やソーセージなど肉料理と楽しみたいものです。
また、ピノ・グリからは甘口も作られており、遅摘みの「ヴァンダンジュ・タルティーヴ」、貴腐ブドウを用いた「セレクション・ド・グラン・ノーブレ」から素晴らしい品質のものが生まれています。
原産地のブルゴーニュ地方ではほとんど栽培されていませんが、少数目にすることは出来ます。
白やロゼとして作られており、ピノ・グリージョほどさっぱりでは無く、アルザスほどフルボディではない、エレガントなスタイルが楽しめます。
イタリア

主に北イタリアで栽培されており、フレッシュ&フルーティな辛口に仕上げられます。
ピノ・グリージョという名前でボトリングされ、このスタイルのものは世界的にピノ・グリージョ表記で通っています。
フルボディのアルザス・スタイルよりも飲み手を選ばないので流行し、アメリカやチリなどでも基本的にこのスタイルで作られています。
同時にこのエリア、特にフリウリではオレンジワインも作られています。
オレンジワインとは、白ブドウを用いて、赤ワインと同じ製法で作ったワインのこと。
通常白ワインを作るときはブドウの果汁のみを醗酵させますが、ここでは赤ワインの醸造と同じように、果汁に果皮を漬け込んで成分を引き出しながら醗酵させます。
そのため、出来上がったワインの色は琥珀色をしており、これがオレンジワインの名前の由来です。
ボリュームのある香りと、お茶のような渋みが感じられます。
ドイツ

ドイツではグラウ・ブルグンダーと呼ばれ栽培されています。
爽やかなピノ・グリージョ・スタイルも多いですが、フランスのアルザス地方に近いバーデン地方、ファルツ地方ではフルボディのものが作られています。
特にこれらの地方ではピノ系品種の栽培が盛んで、深みのあるどっしりとしたものが期待できます。
その他、アメリカ、チリなど
アメリカやチリでは、大手ワイナリーによるフレッシュ&フルーティなピノ・グリージョ・スタイルが多く作られています。
しかしながらフルボディ寄りのアルザス・スタイルもあり、これはオレゴン州などピノ・ノワールに注力しているエリアで見ることが出来ます。
ピノ・グリに合う料理

- 豚のしょうが焼き
- ソーセージなど

- エビグラタン
- ホタテのグリルなど

- ホワイトシチュー
- ジャガイモなど

- ウォッシュド・チーズ
- 白カビ・チーズなど
まとめ
多彩な表情を見せるブドウ、ピノ・グリ。
白は大きく分けてふたつです。
完熟させてフルボディ、時にブドウの糖分も感じられるアルザス・スタイルと、酸味を残して早めに摘み取りフレッシュ&フルーティに仕上げるピノ・グリージョ・スタイル。
また、薄紫色の果皮を活かして作られるロゼ・スタイルや、オレンジ・ワインも作られています。
同じブドウから色々なスタイルが作られるピノ・グリ。
是非、好みのワインを見つけてみてください。