スペインにはメセタと呼ばれる台地部分があり、これが国土の中央を占めています。
こちらの記事ではそのメセタ上にある産地、
- カスティーリャ・イ・レオン
- カスティーリャ・ラ・マンチャ
をご案内します。
首都マドリッドを挟んで北側が「カスティーリャ・イ・レオン」、南側が「カスティーリャ・ラ・マンチャ」です。
メセタは、乾燥して暑い夏と厳しい冬という、いかにもスペインワインな場所。
スペインはここから覚えてたいですね。
スペイン全体の大まかな特徴については以下の記事をご覧ください。
スペインワインの特徴とおすすめワイン3選パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
メセタの主なワイン生産地
北の「カスティーリャ・イ・レオン」
標高が高く、寒暖差の激しい北部メセタにある産地。
多くのワイン産地の例にもれず、銘醸地は川沿いに連なっています。
ここにはかつてカスティーリャ王国があり、レコンキスタの中核を担っていました。
イスラム教徒に対する、キリスト教徒の最前線であり、後にアラゴン王国を吸収してスペイン王国となった場所でもあります。
(因みに、お菓子のカステラの由来はここカスティーリャだそう)
この地域内で最も有名なエリアは、リベラ・デル・デュエロD.O.。
飛び抜けた品質のボルドースタイルで一世を風靡し、ウィストン・チャーチルが愛したというボデガ(=ワイナリー)「ベガ・シシリア」や「ペスケラ」、「ピングス」など、スペインを代表するテンプラリーニョが生まれる場所です。
ただ濃いというわけではなく、標高の高さからくる渋み、酸味でしっかりとした構造を保っています。
同じくドゥエロ川沿いの銘醸地、トロD.O.は、前述のリベラ・デル・デュエロD.O.より下流で標高が低い位置にあります。
そのため、夏場の厚さと乾燥が厳しく、濃度の高いワインになる傾向にあります。
有名なボデガ・ヌマンシアを代表とする優れた作り手は、密度の高さはそのままに、磨き上げられたテクスチャーで味わいの洗練を極限まで高め、素晴らしいワインを作ります。
ここのワインを飲むときは、口当たりや舌触りの美しさに注目してみてください。
白ワインで有名な場所として、ルエダD.O.があります。
近代的な醸造技術の導入と同時に、ソーヴィニヨン・ブランやヴェルデホから瑞々しい白ワインが作られるようになりました。
近年は海沿いガリシア地方の白が注目されていますが、内陸部のルエダD.O.も負けてはいません。
また、メンシアを用いた筋肉質な赤が人気のビエルソD.O.もあるのですが、こちらはガリシア地方の記事で説明しています。
南の「カスティーリャ・ラ・マンチャ」
メセタの南部は、暑く乾燥したカスティーリャ・ラ・マンチャ。
レコンキスタの戦場になった場所で、16世紀にはセルバンデスがこの地を舞台に「ドン・キホーテ」を書きあげました。
「ドン・キホーテ」に出てくる風車は、小麦を曳くためのもので、この地方の風景を特徴づけています。
ヨーロッパ最大の原産地呼称エリア「ラ・マンチャD.O.」は多くのブドウを生み出す場所です。
ラ・マンチャ=アラビア語で水のない土地という意味の通り、乾燥して暑いエリアになっています。
「ラ・マンチャD.O.」から南へ下ると、「バルデペーニャスD.O.」があります。
岩の谷という意味のD.O.で、こちらは13世紀からブドウ栽培が中心になっており、ラ・マンチャに多い小麦曳の風車の風景は見られません。
どちらもコストパフォーマンスの高いワインを多く生み出します。
メセタの主なブドウ品種
幅広く栽培されている黒ブドウ
この産地ばかりでなく、スペインを代表する黒ブドウがテンプラニーリョ。
成熟するのが早いことから、スペイン語のTemprano(早熟な)に由来した名前を持っています。
リベラ・デル・デュエロでは「ティント・フィノ」、ラ・マンチャでは「センシベル」、トロでは「ティンタ・デ・トロ」など地域ごとに呼び名があり、広く愛されていることが分かります。
国中で作られていて、安ワインからカルトワインまで出来てしまうという幅の広さは、イタリアのサンジョヴェーゼにも似て、中々一言でまとめられない面白さがあります。
カベルネ・ソーヴィニヨンなど国際品種とブレンドして輸出ワインが作られるところも、サンジョヴェーゼと同じ境遇にあります。
また、ガルナッチャ(フランスのグルナッシュ)やモナストレルなど、ブレンドしながら飲み心地の良い赤ワインを生み出します。
ガルナッチャなどはフランス南ローヌやラングドックなどでもブレンドに活躍し、トゲの無い心地よい果実味をワインにプラスしてくれます。
トロピカルなワインが多い白ブドウ
白はルエダで有名なヴェルデホ、そしてソーヴィニヨン・ブラン。 フレッシュでどこかトロピカルな白ワインが出来ます。
また、カスティーリャ・ラ・マンチャで大量に育てられているアイレンは、多くは酒精強化用のブランデーや安い白ワインになります。
8つのV.P.による格付け
カスティーリャ・ラ・マンチャには8つのVino de Pago(V.P.)があります。
V.P.とは、優れた単一畑に与えられる呼称で、ユニークなテロワールを持ったカリスマ性のあるワインと説明されています。
ただ、こちらは原産地呼称とは違うルートで認定がなされており、リオハやリベラ・デル・デュエロなど銘醸地にV.P.が認定されてないことから、存在を疑問視する声もあることにはあります。
とはいえ、それぞれ優れた畑と認められているものですので、見かけることがあったらぜひ試してみてください。
- ドミニオ・デ・バルデプーサV.P.
2003年認定、スペイン初のV.P. - ギホソV.P.
- フィンカ・エレスV.P.
- デエサ・デル・カリサルV.P.
- カンポ・デ・ラ・グアルディアV.P.
- パゴ・フロレンティーノV.P.
- カサ・デル・ブランコV.P.
- パゴ・デル・カルサディーリャV.P.
【ソムリエが選ぶ】おすすめのメセタワイン3選
果実味の素直な「ティント・ペスケラ クリアンサ リベラ・デル・デュエロD.O.」
スペインのペトリュスと呼ばれ、リベラ・デル・デュエロの名を高めたワイナリーのひとつ。
テンプラニーリョに非常なこだわりを持ち、テンプラニーリョ単体で素晴らしいワインを作っています。
クリアンサは樽熟18か月で、より樽熟期間の長いものよりブドウの果実味が素直に表に出てきます。
濃厚な味わいの「ヌマンシア テルメス トロD.O.」
トロD.O.でテンプラニーリョは「ティンタ・デ・トロ」と呼ばれ、非常に濃い色素やタンニンが特徴です。
テルメスはスタンダード・レンジにあたりますが、密度の高い味わいとそれをまとめ上げる舌触りの美しさが楽しめます。
コスパの良い「エル・ビンクロ ラ・マンチャD.O.」
こちらは「スペインのペトリュス」ティント・ペスケラのアレハンドロ・フェルナンデス氏がラ・マンチャで作るワイン。
コストパフォーマンスの高いラ・マンチャD.O.のワインの中でも特にお勧めです。
まとめ
スペインの中央を占めるメセタは、質・量ともにスペインワインを代表するエリアでした。
今回ご紹介したワインはテンプラニーリョのものばかりでしたが、カベルネ・ソーヴィニヨンなど国際品種からもコスパの高いワインが生まれています。
スーパーやコンビニなどで手にするワインの中にもよく見かけるはずですので、探してみてください。