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ラングドック・ルシヨン地方のワインの産地や品種の特徴

ラングドック地方の位置を示すイラスト

地中海に面したラングドック・ルシヨン地方は、暖かく農業に適した場所。
ワイン作りの協同組合も多く、低価格でも優れたワインを生み出します。

そのため、安価なテーブルワインのイメージが強くコスパで語られがちな地域でもあります。
実際には、歴史的にも上質なワイン産地として知られるエリアがあり、そこから生まれるワインは他と一線を画します。

知られざる偉大な畑を持つラングドック、世界でも指折りの酒精強化を生み出すルシヨン。

有名なようで実はあまり知られていない、ラングドック・ルシヨンのワインを見ていきましょう。

ラングドック・ルシヨン地方の主な産地

ラングドック地方

地中海に面するラングドック地方は、ローヌ川が海に注ぎ込む場所から西側に広がります。
海沿いの太陽光を豊富に受けた、おおらかなワインもあれば、すぐそこまでせり出しているセヴェンヌ山脈の、タイトでしっかりとした骨格のワインもあります。
山脈の裾野に広がる斜面に、昔から上質な産地として知られていた畑が広がります。

ラングドック地方の一般的なイメージは、安くてコスト・パフォーマンスの良いワインが量産される場所、ではないでしょうか。

そのイメージを払拭し、実際には作られている質の高いワインも保護するために、ラングドックは近年、ピラミッド構造のA.O.C.構築を進めています。

ピラミッドの上から順番に、下記のとおりです。

  1. A.O.C.クリュ・デュ・ラングドック
  2.  A.O.C.グラン・ヴァ・デュ・ラングドック
  3.  A.O.C.ラングドック

最高位にあるクリュ・デュ・ラングドックは7つしか認定されていない最上のクリュです。

それぞれをエリアごとに見て行きましょう。

モンペリエ周辺

クリュ・デュ・ラングドックはナルボンヌの近くにあるラ・クラプ。
元々独立した島でしたが、川が運搬する土砂によって600年前に大陸と地続きになりました。
ラングドックでも特に日照量豊富で、赤と白が作られています。

また、2017年にクリュ・デュ・ラングドックに昇格したピク・サン・ルーも素晴らしいワインを生みます。
セヴェンヌ山脈の裾野にあり、海の影響と山の影響のどちらをも受ける場所です。
石灰質を含む粘土の土壌で、上品な味わい。
シラーやムールヴェードル、グルナッシュから滑らかでフレッシュな赤ワインが作られています。

上から2番目の格付け、グラン・ヴァン・デュ・ラングドックの中で有名なのは、ペズナス、ピクプール・ド・ピネ、テラス・デュ・ラルザック。

特にリヨン湾の近くにある海のワイン、ピクプール・ド・ピネは広く知られています。
酸がしっかりとしたピクプールという品種で作られており、魚介にレモンを絞るような感覚で海の幸やサラダと一緒に楽しまれるワインです。

台地のふもとにあるテラス・デュ・ラルザックは昼夜の寒暖差が大きいエリア。
カリニャン、サンソー、グルナッシュ、シラーなどから3品種以上をブレンドし、バランスに優れた赤ワインを生み出します。

また、モンペリエ周辺には素晴らしい酒精強化ワインもあります。
ヴァン・ド・ナチュール(VDN)というスタイルで、醗酵途中のブドウ果汁にブランデーを添加して作る甘口。

ミュスカの華やかな香りとフレッシュさを活かしたミュスカ・ド・フロンティニャン、熟成して更に深みを増すミュスカ・ド・リュネルとミュスカ・ド・ミラヴァルがあります。

ベジエ周辺

セヴェンヌ山脈の裾野に広がるエリアで、高品質なものが多数生まれます。
7つのクリュ・デュ・ラングドックのうち、4つがベジエ周辺にあります。

片岩の土壌と豊かな日照量で、パワフルで迫力あるワインが生まれるのが有名なクリュ・デュ・ラングドックのフォジェール。

ラングドックでも特に乾燥したミネルヴォワ・ラ・リヴィニエールでは、ブドウを冷やす夜風と石灰岩の高台があり、カチッと締まった輪郭の赤を生み出します。

サン・シニャンのベルルーとロクブルンもクリュ・デュ・ラングドックに認定されています。
サン・シニャン(広域のこれはグラン・ヴァン・デュ・ラングドック)の中でも標高の高い片岩が土壌に現れるエリアで、完熟した果実と艶やかな質感を併せ持つカリニャンやシラーが出来る場所です。

広域のグラン・ヴァン・デュ・ラングドック・サン・シニャンは、標高の高いエリアの片岩・砂岩と、なだらかな南部の粘土石灰質で構成されています。
赤はグルナッシュやシラー、カリニャン、白はグルナッシュ・ブラン、マルサンヌ、ルーサンヌなど。

同じくグラン・ヴァン・デュ・ラングドックのミネルヴォワはクリュ・デュ・ラングドック・ミネルヴォワ・ラ・リヴィニエールを内包する広域エリア。
様々な土壌からなる段丘があり、特に石灰岩を含む土壌から良いものが生まれます。

カルカッソンヌ

やや内陸に入る場所。
スペインへの巡礼道があり、修道士の交流の中でスパークリングワインの製法が広まったと言われています。

グラン・ヴァン・デュ・ラングドックのカバルデス、マルペールなど、ボルドー品種と地中海品種のブレンドが多く見られます。

リムーは瓶内二次製法のスパークリングワイン発祥の場所のひとつ。

そして田舎方式で作られるリムー・メトー・ド・アンセストラルはがあり、それぞれグラン・ヴァン・デュ・ラングドックに認定されています。

また、発泡無の通常のワインもグラン・ヴァン・デュ・ラングドック。
粘土石灰質があり、ブルゴーニュのような冷涼感をアクセントに持つシャルドネが注目を集めています。

ナルボンヌ周辺

カルカッソンヌより南西の、地中海に向かうエリア。

グラン・ヴァン・デュ・ラングドックのコルビエールは、ラングドック最大のA.O.C.で、中々一括りにすることはできません。
赤ワインが多く、様々なものが作られています。

コルビエールの中でも東北部にあるブートナックの丘が、コルビエール・ブートナックとしてクリュ・デュ・ラングドックに認められています。
カリニャンを中心としたブレンドの赤で、熟した果実味と力強くもタイトな輪郭。

グラン・ヴァン・デュ・ラングドックのフィトゥーは、比較的有名なエリアです。
沿岸部と内陸部の2か所に分かれて存在し、いずれもカリニャン・グルナッシュ中心のしっかりとした赤ワインを生み出します。
滑らかな口当たりが特徴で、エレガンスのテロワールと言われます。

ルシヨン地方

フランスとスペインの国境にあるワイン産地です。
ピレネー山脈の裾野にあり、ブランデーを添加した酒精強化ワインを抜いては語れません。

発酵途中のブドウ果汁にブランデーを添加する、ヴァン・ド・ナチュールという酒精強化スタイルが主流。
モーリィ、バニュルス、リヴザルト、ミュスカ・ド・リヴザルトがそれぞれヴァン・ド・ナチュールの製法で作られています。

特にグルナッシュを主体として作る赤の甘口バニュルスは、チョコレートと楽しむワインとして有名。
リヴザルトには更に、通常熟成の「グルナ」、酸素に触れさせながら熟成させる「アンブレ」「テュイレ」があります。

また、ワインを太陽光にさらす伝統的な「ランシオ」という製法も細々と残っています。
ヴァン・ド・ナチュールをあえて太陽にさらし、酸化・加熱することで、独特の香りを持たせる製法です。

ラングドック・ルシヨン地方の主なブドウ品種

ラングドック・ルシヨンでは様々な品種が栽培されています。
メインとなるのはローヌ系、地中海系の品種で、カルカッソンヌ周辺のように大西洋の影響を受けるエリアではボルドー系品種も目立ってきます。

赤ではカリニャンやサンソーが重要な品種。
大量生産で作ってしまうと、青くトゲトゲして水っぽい安酒になりますが、樹齢が高いものや収量を抑えたものからは素晴らしい赤ワインが生まれます。

カリニャンは熟したイチゴとチョコレートのような雰囲気。
どっしりと下半身が安定した力強い味わいです。

ローヌ地方同様のグルナッシュやシラー、ムールヴェードルも多く栽培されています。
フルーティでアルコールが上がりやすいグルナッシュ、華やかで酸が骨格を作るシラー、ジューシーで肉付けに使われるムールヴェードル。

白では、厚みのある味わいのグルナッシュ・ブランや、ハーブ香のあるヴェルメンティーノ(別名ロール)、スパークリングワインに使われるモーザックなど。

その他、おなじみのカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなど、大抵のフランス系品種を見つけることができます。

格付け

ラングドックでは、下記の通りにピラミッド構造のA.O.C.が整備されています。

  1. クリュ・デュ・ラングドック
  2. グラン・ヴァン・デュ・ラングドック
  3. ラングドック

グラン・ヴァン・デュ・ラングドックという名前がややこしいですが、所謂グラン・クリュのように扱われるのがクリュ・デュ・ラングドックです。

ピク・サン・ルーが2017年にクリュ・デュ・ラングドックに認定されるなど、今後も昇格や変動が予想される、整備中の格付け構造です。

【ソムリエが選ぶ】おすすめのラングドック・ルシヨン地方のワイン3選

ロクブルン レ フィエフ ドプナック

ロクブルンにある協同組合のワイン。
サン・シニャン・ロクブルンはクリュ・デュ・ラングドックです。
シスト土壌のシラー主体のブレンドで、艶やかな質感と、力強い下半身が特徴。
価格は低いですが、非常に質の高い一本です。

ドメーヌ・ド・ロルチュ A.O.C.ピク・サン・ルー

新しいクリュ・デュ・ラングドック、ピク・サン・ルーの赤。
シラー主体のブレンドで、優しく口の中に広がる果実味と、タンニンや酸に頼らない骨格があります。
ラングドックらしい熟れた果実を石灰質土壌のタイトな輪郭が抑え、気持ち良く飲める絶妙なバランスに。

ラファージュ A.O.C.モーリー グルナ

ルシヨン地方のヴァン・ド・ナチュール。
グルナッシュを用いた赤の酒精強化甘口です。
甘さとビターさ、デザートと共に楽しめます。

まとめ

非常に広いエリアでした。
産地が広い上に、栽培されている品種も多く、ワインのスタイルも多様。
ラングドック・ルシヨン地方のワインは、自分で発見する楽しみに満ちています。
協同組合の数が多く、お手軽な価格で試せることも魅力。
是非、自分のお気に入りのワインを探してください。

その他のフランスのワインの地方については以下の記事から参考にしてください。

フランスの産地のイラストフランスワインの産地や品種の特徴|おすすめ〜高級銘柄