ドイツが誇る交配品種の一つ、ケルナー。
北海道でも栽培されているので、名前を聞いたことがある、飲んだことがある人も多いのではないでしょうか。
ドイツはブドウ栽培の北限地にあり、ブドウに青さが残ることや冬の寒波などに苦しめられてきました。
そんな環境でも、天候に左右されずに美味しいブドウをたくさん収穫したいと、ドイツではブドウの交配研究に力を入れてきました。
ガゼインハイム研究所など、世界のブドウ研究の中心地のひとつがドイツにあります。
ひとくちにブドウの人工交配といっても、簡単ではありません。
そんな中で生まれた数少ない成功した品種の一つが、ケルナーなのです。
ドイツ生まれのケルナーを紹介します。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
【ソムリエ厳選】おすすめワイン4選
フルーティですっきり美味しい「グランポレール 余市ケルナー」
爽やかでキレがありつつも青リンゴを匂わせるフルーツの香りが広がります。
北海道ケルナーは北海道余市の協働契約栽培畑産ケルナーを100%使用して造る辛口の白ワインです。
ケルナーを試すならまずは余市ケルナーから始めると良いですね。
軽やかな味わいの「タウバーフランケン協同組合 ヴェルトハイマー・タウバークリンゲ ケルナー カビネット ハルプ・トロッケン」
ドイツ、バーデン地方の協同組合が作るケルナー。
タウバー渓谷沿いにブドウ畑が広がります。
ボックスボイテルという独特な形の瓶に詰められ、貝殻石灰の土壌から来るフレッシュでピリッとした酸味と、軽い甘みのバランスが楽しい軽やかな味わいに仕上げられています。
ドライなスタイルの「ストラッセルホフ アイザックタラー ケルネル」
北イタリアのアルト・アディジェで作られるケルナー。
標高700mを超えるアルプス山脈の麓、昼夜の寒暖差がとても大きいエリアで作られ、ケルナーは透明感ある味わいとメリハリのある酸味が特徴になります。
白桃や洋ナシのアロマティックな香りと石やミントのような清涼感。
柑橘系の酸味が感じられるドライなスタイルに仕上げられています。
リッチでパワフルな「ココ・ファーム・ワイナリー ケルナー 月を待つ」
日本で作られるケルナー。
ココ・ファーム・ワイナリーは栃木にありますが、ケルナーのブドウは北海道、余市産のものを使用。
余市のケルナーらしいフルーティーさが、醸造により更に強く出ており、白桃、黄桃のしっかりと熟れた果実を連想させます。
酸味もシュワシュワと勢い良く、後味に軽いほろ苦味が感じられます。
リッチでパワフルなスタイルのケルナーに仕上がっています。
ほかでは余り見かけない、力強い味わい。
自然派ワインの勢いのある味わいが好きな方にもオススメです。
ケルナーの特徴
ケルナーは黒ブドウのトロリンガーと白ブドウのリースリングの人工交配によって生まれた白ブドウです。
1929年、ドイツのヴュルテンベルク地方にある品種交配の研究所で、アウグスト・ヘロルド博士によって開発されました。
ケルナーという名前は、ケルナーが開発されたヴュルテンベルク地方出身のユスティヌス・ケルナーという医者・詩人の名前からとられています。(ワインが登場する詩をよんでいるそうです。)
晩熟型ですが、リースリングよりは早く熟し、収穫量も確保できる品種。
なにより耐寒性が高く、マイナス10度の寒さにも耐えることが出来ます。
小さめの果実をつけ、1990年ごろにはドイツで広く栽培されていました。
現在は、より早く果実が熟し、土地を選ばないミュラー・トゥルガウの人気に押されていますが、それでも変わらず人気の品種の一つです。
ドイツのファルツ地方、ラインヘッセン地方、モーゼル地方、出身地であるヴュルテンベルク地方で栽培されているほか、オーストリアの南東部やスイス、南チロルと呼ばれるイタリアのトレンティーノ=アルト・アディジェ地方でも栽培されています。
また、1973年からは耐寒性の高いブドウを探していた北海道に導入されました。
余市などを中心に栽培されており、ほろ甘く飲みやすいスタイルのものや、辛口で凝縮感のある、品質の高いものも作られています。
アロマティックで心地よい香り
ふんわりとマスカットのような香りが感じられます。
白桃やよく熟れた洋ナシのフルーツ・フレーバーと、冷涼な地域で栽培されることが多いため、ほのかにミントやライムゼストなど、ハーブ&柑橘系のニュアンスを感じることもあります。
比較的アロマティックで心地よい香りを持つ品種。
同じようなエリアで栽培されることの多いリースリングに比べると、親しみやすく、優しい印象を覚える香り立ちです。
酸味とふくよかな果実味
フレッシュな酸味があり、その酸味に支えられてふくよかな果実味が楽しめます。
香りと同じようにリースリングと比較するならば、酸味が優しい代わりに果実味が素直に膨らみます。
余韻の長さはほどほどで、爽やかな印象を与えてくれます。
栽培地による違い
原産地「ドイツ」
ケルナーの生まれ故郷、ドイツ。
一時期はその耐寒性の高さや、場所を選ばず力を発揮できる丈夫さから、ドイツで最も栽培されていたこともあったようです。
同じく品種改良の結果生まれたミュラー・トゥルガウの人気に押され、栽培面積は減ってしまいましたが、現在でも人気の品種の一つです。
ケルナーを開発した研究所があるヴュルテンベルグ地方はもちろん、ラインヘッセン地方やファルツ地方、モーゼル地方などで栽培されています。
片親であるリースリングの特徴を和らげたような味わいから、日常の白ワインとして広く愛されています。
意外とおいしいのが「日本」
特に北海道の余市町で栽培されています。
ドイツと気候が似ていることもあり、アロマティックでボディのしっかりした、なかなか美味しいケルナーワインが作られています。
ブドウ栽培が始まったのは明治時代以降。
北海道開拓使がいろいろな果樹を栽培し始めたその中に、ブドウの樹も含まれていました。
戦後までしばらくは生食用ブドウの栽培が中心でしたが、新たにワイン用ブドウの栽培に注力しようと適合品種を探す中でドイツ・オーストリア系の品種が導入されたそうです。
はじめはミュラー・トゥルガウやセイベルなどが中心でしたが、ケルナーも導入され、現在はアロマティック系白ブドウの代表格になっています。
その他の国
オーストリアや北イタリアの一部で栽培されています。
特に南チロルと呼ばれる北イタリアのトレンティーノ=アルト・アディジェ地方はドイツ・オーストリア系の文化が強い地域で、イタリアワインというよりもオーストリアワインと考えた方が誤解が無いくらい。
ケルナー、ミュラー・トゥルガウ、リースリングなどドイツ系のブドウ品種が多く栽培されています。
アルプス山脈の麓にもあたる、澄んだ空気の高地で栽培されるケルナーは、白桃の香りの中にもミントの風味があり、透明感がある味わい。
ケルナーの清廉な味わいが引き出されます。
ケルナーに合う料理
- サラダチキン
- ヨダレ鶏
- ツナサラダ
- カルパッチョ
- 野菜のテリーヌ
- 粉ふきいも
- カマンベールなどの白カビ系やフレッシュチーズなど
まとめ
世界的に見るとケルナーはそこまでメジャーな品種ではありませんでしたが、日本ワインの活躍が注目されている現在、以前より目にする機会も増えてきました。
原産地のドイツでも、リースリングのような輸出にも向く高級品種としてではなく、普段の食卓で楽しむ優しい味わいの白ワインとして扱われています。
そのため、ドイツのケルナーやアルト・アディジェのケルナーを探しても、日本ではたくさん見つかるというわけではありません。
地元で愛されている証拠のようなものでは無いでしょうか。
それであれば、まずは北海道のケルナーを試してみてください。
肩肘張らない、優しくて香り良い白ワインが味わえると思います。