驚きの速さでワインの銘醸地へとのし上がった南アフリカ。
自然あふれる多様なテロワール、知的で自由な若いワインメーカー、ワイン界の遺産ともいうべき古木の数々・・・
底知れない可能性の扉が次々と開かれ、今ではボルドー系でもローヌ系でも、ブルゴーニュ系でもロワール系でも、はたまた甘口やヴェルモットまでこなしてしまう驚異の産地へと変貌を遂げてしまいました。
その中でも南アフリカ産の品種、ピノタージュで作られるワインは特に面白い。
ピノノワールとサンソーを掛け合わせて作られた品種なのですが、作り手によってかなり異なる表情を見せてくれます。
今回は、そんなピノタージュの基本となるべき一本をご紹介します。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
香り・味の特徴
しっかりと詰まった濃い色調。
香りも力強く、カシスやブラックベリー、ビターチョコにインクの香りがあり、ボルドースタイルを思わせます。
味わいはドライで、細かくタンニンが張り付き、堂々たる骨格。
しかしながら重たすぎることはなく、最良のカベルネフランにも通ずる浮遊感があり、バランス感覚に優れています。
どっしり、パワフル、となる一歩手前でさっと身を翻し、上品な余韻へ。
ボルドー系の骨格を基調としながらも、ピノタージュの二面性が見え隠れする傑作です。
南アフリカ発の面白品種
南アフリカでは様々なブドウ品種が育てられ、どれもが素晴らしい味わいを生み出していますが、中でも面白いのがピノタージュという品種。
これは1925年に南アフリカで生まれた品種です。
ピノノワールとサンソー(別名エルミタージュ)を掛け合わせたもので、作る人によって異なる2つの表情を見せてくれます。
- ある時はボルドー系のしっかりした構造にサンソーの野性味を思わせる、パワフルな味わい。
- ある時はピノノワールを思わせるような可愛らしい赤系果実の味わい。
カノンコップは前者寄りのピノタージュを作ります。
とはいえ、この二つの特徴が混じりあっているのがこのブドウの面白いところでもあって、どっちかが全てということではありません。
カデット ピノタージュもやはり、がっしりとしたボディの中にどこか軽やかな果実のニュアンスが入り込みます。
1つのブドウで、全く逆のスタイルを行き来することができる面白い品種。
同時に、作り手のセンスが試される難しい品種でもあります。
ピノタージュの代表、カノンコップ
色々なスタイルがある中で、現時点のピノタージュを代表するワインを選べと言われると、初めに出てくるのがこのワインです。
作り手のカノンコップは1910年設立の伝統ある生産者。
畑のおよそ半分を、ピノタージュが占めている、まさにピノタージュのプロフェッショナルです。
中には樹齢が50年を超えるような古木も存在しているそう。
畑があるのはステレンボッシュ地区の中でもボルドースタイルのがっしり引き締まった赤ワインが生まれるシモンズバーグ山脈の麓。
カノンコップのピノタージュの味わいを支えるしっかりとした骨格は、この土地由来です。
土地の特徴を適切に反映し、加えてピノタージュの二面性も上手く表現している。
IWSC(インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション)で通算5回も世界最優秀ピノタージュを受賞しているのも伊達じゃありません。
数あるピノタージュの中で基本であり頂点でもあるカノンコップ。
南アフリカを知りたいなら、まずはこの一本から!