日本ソムリエ協会のソムリエ、ワインエキスパート呼称の2次試験もいよいよですね。
こちらの記事では過去に何回も出題されている頻出の品種の特徴やテイスティングのポイント、また、練習用のお手頃なワインについても紹介していますので、ご参考にしてください。
過去10年間のテイスティングで出題された品種と主要産地
まずは、過去10年間に出題された「品種」を回数の多い順に、また出題されている「産地」の上位2ヶ国までを見ていきましょう。( )は出題された回数です。
白ワイン
シャルドネ(15) – フランス、アメリカ
リースリング(14) – ドイツ、フランス
ソーヴィニヨン・ブラン(9) – フランス、NZ
甲州(4) – 日本
カベルネ・フラン(3) – フランス
トロンテス(2) – アルゼンチン
ミュスカデ(2) – フランス
アリゴテ(1) – フランス
ゲヴュルツトラミネール(1) – フランス
赤ワイン
シラー/シラーズ(11) – オーストラリア、フランス
ピノ・ノワール(7) – ニュージーランド、フランス
カベルネ・ソーヴィニヨン(5) – オーストラリア、アメリカ
メルロー(4) – フランス、オーストラリア
サンジョベーゼ(3) – イタリア
ネッビオーロ(3) – イタリア
テンプラニーリョ(3) – スペイン
ガメイ(3) – フランス
ジンファンデル(1) – アメリカ
グルナッシュ(1) – フランス
マルベック(1) – アルゼンチン
マスカット・ベーリーA(1) – 日本
(*2015年まではワインアドバイザーの呼称がありましたので、ワインアドバイザーとしての出題も1カウントとしています)
白ワイン、赤ワインともに上記で太字で示した「主要品種」と言われるものが過去に何回も出題されていることがわかります。
また、品種としては上位ではないですが、2016年から必ず日本ワインが出題されていることを見ると「日本ワイン」という括りでは頻出ワインと捉えて良いのかと思います。
テイスティングに頻出の主要品種、特徴とポイント、練習用ワイン
それでは、頻出の主要品種とその特徴、テイスティング練習用ワインや練習のポイントなどを紹介していきましょう。
シャルドネ
世界中で栽培されていて、栽培環境に左右されやすく、品種元来の特徴というのが現れにくいのがシャルドネ…
シャルドネを理解するためには、産地に違いに着目するようにしましょう。
頻出のフランスとアメリカでは違いがハッキリわかるのでテイスティング自体も楽しくなると思います。
◆フランスのシャルドネの代表格「シャブリ」
キリッとしたシャープな味わいで青リンゴや柑橘系が特徴的です。
練習用には、スーパーなどでも手に入るお手頃価格の「ウィリアム・フェーブル」のワインがおすすめです。大手のワインメーカーで、お手頃価格ながら安定的にシャブリの特徴を現す、高品質のシャブリを作っています。
ワインジャーナル担当の有資格ソムリエ「KAORI」によるソムリエ2次試験-模範解答
◆アメリカのシャルドネは「ボリュームがあってクリーミーでトロピカル」
アメリカのシャルドネは、オーク樽のバニラやナッツのような甘ったるい香りとバターのようなリッチで重厚感があるのが特徴です。
また太陽の恵を浴びて育ったトロピカルな果実の印象もフランスとは対照的です。
ケンダル・ジャクソンはカリフォルニア屈指のワインメーカーで、カリフォルニアのシャルドネの特徴をよく表しています。
ワインジャーナル担当の有資格ソムリエ「KAORI」によるソムリエ2次試験-模範解答
(解答例はケンダルジャクソンではありませんが、カリフォルニア・シャルドネ)
シャルドネの品種の特徴や美味しいワインについてはこちらもご覧ください。
リースリング
鋭い酸と甘い蜜、白い花を思わせる優雅な香り。繊細さと強さをあわせ持つ上品なワインがリースリングです。
香りは、ハチミツやリンゴの蜜、ライム、白い花などに例えられることが多いです。口の中に入れると冷たくなるような酸とミネラルを感じ、骨格がしっかりとした硬い印象があります。ほのかな鉱物や石油のような香りがすることもあり、品種の特徴が分かりやすいワインとも言えます。
ソムリエとワインエキスパートのテイスティングに限って言えば、過去10年のドイツの出題回数が7回とダントツで、フランス4回、オーストラリア3回と続きます。
練習用のワインとしては、お手頃価格のアルザスの名門ヒューゲル・エ・フェスやチリのコノスルもおすすめです。
ワインジャーナル担当の有資格ソムリエ「KAORI」によるソムリエ2次試験-模範解答
リースリングの特徴やおすすめのワインについてはこちらの記事もご覧ください。
ソーヴィニヨン・ブラン
すっきりとした酸味とグレープフルーツや青りんごのような爽やかな果実味、ハーブや草のような緑っぽさを感じます。清涼感のある飲み口とグレープフルーツの皮のようなほろ苦い後味は独特で特徴がとても分かりやすい品種です。
過去の10年間では、フランスとニュージーランドが4回ずつ出題されています。
◆フランスでは、ロワールに代表されるような、酸味とミネラル感や火打ち石の香りが感じられる、繊細で上品な仕上がりになります。
パスカル・ジョリヴェ「アティテュード」は航空会社の上位クラスなどでも採用されるワインで、ロワールの上品で繊細な特徴を感じられます。
ワインジャーナル担当の有資格ソムリエ「KAORI」によるソムリエ2次試験-模範解答
◆ニュージーランドでは、トロピカルフルーツのような果実味がボリュームを感じさせ、またハーブの緑っぽさからフレッシュで爽やかなイメージが特徴です。
シレーニはニュージランドの生産者の中では日本で一番輸入されています。スーパーなどでも購入できて、またソーヴィニヨンブランだけでなく、他の主要品種も揃っているので、各品種飲み比べてみるのも良いでしょう。
ソーヴィニヨン・ブランの特徴やおすすめのワインについてはこちらの記事もご覧ください。
シラー/シラーズ
スパイシーでダークチェリーやブラックベリーのような黒っぽい果実を思わせる濃厚で野生的な特徴のワインです。
同じ特徴を持ち合わせながらも印象の違う、フランスのシラーとオーストラリアのシラーズの違いに注目しながらテイスティングの練習をしましょう。
◆フランスのシラーはエレガント
ブラック系果実の濃縮感とスミレや鉄の香りが感じられます。スパイシーで酸味もしっかりとあり、エレガントな味わいです。
フランスのシラーの特徴をしっかりつかむには、決してお手頃ではありませんが、コートデュローヌの北部、AOCクローズ・エルミタージュやAOCサン・ジョセフのワインがおすすめです。
◆オーストラリアのシラーズはパワフル
ジャムのような煮詰まった感じとチョコレートとやグローブのスパイシーな香り、パワフルなアタックが特徴的です。
シラー/シラーズの特徴やおすすめのワインについてはこちらの記事もご覧ください。
ピノ・ノワール
ラズベリーやイチゴなど華やかでチャーミングな香りと表されることの多いピノ・ノワールは、色合いも淡く外観から検討がつきやすい品種です。味わいは、柔らかな酸味が果実味とバランスよく溶け込み滑らかで渋みは少なめです。
2020年のワインエキスパート2次試験では、ニュージーランドのピノ・ノワールが出題されましたが、アメリカのピノも10年間で4回ほど出題されています。
ここ10年でフランスは1回しか出題されていませんが、本場ブルゴーニュのの上品でエレガントなピノ・ノワールは必ず飲んでおきたいワインです。
ブルゴーニュのきちんとしたピノ・ノワールは、比較的高額なので、練習用にはハーフボトルもおすすめです。
◆フランスのピノ・ノワール
◆アメリカのピノ・ノワール
ピノ・ノワールの特徴やおすすめのワインについてはこちらの記事もご覧ください。
カベルネ・ソーヴィニヨン
カシスやダークチョコ、黒系果実、また枯れ葉や土っぽい香りに例えられます。しっかりとした酸味と渋みが重厚で複雑な味わいを作り出します。余韻も長くしっかりと感じられることが多いです。
ワインの王様でありながら、実はソムリエ、ワインエキスパートの2次試験では2005年を最後にフランスのカベルネソーヴィニヨンが出題されたことがありません。
理由は定かではありませんが、ボルドーでは味わいのバランスを補うためにメルローとブレンドされることが多いため、テイスティングの試験には不向きなのかもしれません。
とはいえ、頻出のアメリカ、オーストラリア、チリなどと同様にフランスについてもきちんと把握しておきましょう。
◆アメリカ
◆オーストラリア
◆チリ
◆フランス
カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴やおすすめのワインについてはこちらの記事もご覧ください。
メルロー
プラムやチェリーなどの黒系果実が濃縮された重厚ながら、きめ細かいタンニンとやわらかくてクリーミーな丸みを帯びた味わい。上品でなめらかな舌触りから「上質なシルクをまとったよう」と表されることもありますが、突出した特徴がないため、間違えやすい品種でもあります。
2次試験では、過去10年間にフランスが3回出題されています。また、2018年には日本のメルローが出題されています。日本のメルローについては、次の項で紹介します。
メルローの特徴やおすすめのワインについてはこちらの記事もご覧ください。
日本ワイン
最後に紹介するのは2016年以来、毎年どちらかの呼称に出題されている「日本ワイン」
近年では、栽培、醸造の研究や技術の発展とともに、西洋の真似をするのではなく、日本らしいワインづくりに重点が置かれるようなってきました。
試験では、甲州やマスカット・ベーリーAなどの日本品種だけでなく、メルロー、シャルドネといった品種も日本産のものが出題されています。
また、近年では、北海道を中心としてピノ・ノワールの栽培も盛んで、世界的にも高い評価を得ています。
日本ワインは個人経営のワイナリーが多く、生産量も少なく値段も高くなりがちです。テイスティングの練習には、「メルシャン」やサッポロビールのワインブランド「グランポレール」などの大手のワインが手に入りやすく、品質も安定しています。
◆甲州
全体的に控えめで繊細な日本らしい品種。外観は薄くグリーンがかったイエローで、ライムや青りんごのような香り、また飲み口は酸がやわらかく滑らかな舌触りです。雑味がなくすっきりとしたものが多いです。
甲州の特徴やおすすめワインについて詳しくはこちらをご覧ください。
◆マスカット・ベーリーA
いちごや甘いキャンディに例えられるマスカット・ベーリーA。淡い色味、軽快な渋みと酸もフレッシュです。土の感じや少しスモーキーっぽさも感じられます。テイスティングでは、ボジョレーのガメイと間違えてしまうことも多い品種です。
マスカット・ベーリーAの特徴やおすすめワインについて詳しくはこちらをご覧ください。
◆メルロー
日本全国、北海道から大分まで広く栽培されています。
特に長野県塩尻市の桔梗が原はメルロの産地として有名です。
品質向上がめざましく、熟した果実香のワインも造られています。
タンニンがきめ細やかでコクのあるまろやかな味をもったワインに仕上がります。
◆シャルドネ
日本では柑橘系からトロピカルフルーツのような香りや、樽の風味が豊かなものまで、バラエティに飛んだワインが造られています。
シャルドネの栽培、醸造技術共に向上しており、世界的にも高く評価されています。
◆ピノ・ノワール
日本では栽培が難しいと言われていましたが、技術が向上し、北海道、青森、長野など、比較的冷涼な地域では、栽培面積が急増しています。
芳醇でエレガントな香りが特徴的です。
ソムリエ・ワインエキスパート2次試験テイスティング品種まとめ
今回は、ソムリエ・ワインエキスパートの2次のテイスティング試験で過去に出題された回数の多い順に頻出のワインと生産国などをお伝えしました。
テイスティングにまだ慣れていない場合は、以下の7品種と日本ワインに的を絞って練習し、まず基礎を固めることをおすすめします。
白ワイン
- シャルドネ
- リースリング
- ソーヴィニヨン・ブラン
赤ワイン
- シラー/シラーズ
- ピノ・ノワール
- カベルネ・ソーヴィニヨン
- メルロー
日本ワイン
当日、これ以外の品種が出題されたとしても、これらの基本のワインを理解しコメントができるようになっていれば、コメントで点を取ることができます。
ソムリエ試験は品種を当てる試験ではないため、品種、収穫年、産地の点数が占める割合は低いです。
また、テイスティングは当日の気分や体調にも左右されるため、緊張せずに平常心で臨むことが大切です!
分かりにくい品種があったり、途中で迷ったりしても、感じたままを答えて、できるだけコメントで点数を取りましょう。その結果として一番コメントに合うワインを選ぶようにします。
選んだワインとコメントが合わないと思っても、コメントの方を書き換えることはしないで、自分の直感を信じましょう。
テイスティングに関してはこちらの本もおすすめです!
2次試験で皆様が実力を発揮できますよう、祈っています。