ピノ・ノワールを主体に、世界で最も高価なワインを作る土地がここ、コート・ド・ニュイです。
フランスのブドウ栽培地の中でもかなり北に位置し、年によっては霜害や雹で収量が大幅に減ってしまうことがあります。
同時に、そういったぎりぎりの場所で栽培されているからこそ、栽培年の個性や畑の特徴をワインの味として敏感に反映することができる土地。
綺羅星のように輝くグラン・クリュ群。
ブルゴーニュ地方の中でも最も有名なエリアをご紹介します。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
コート・ド・ニュイ地区の8つの主なワイン生産地
コート・ド・ニュイ地区とコート・ド・ボーヌ地区を合わせて、「コート・ドール=黄金の丘」と呼びます。
ディジョンからサントネイまで続く東向き斜面の北側がコート・ド・ニュイ地区。
一見南北に伸びる単純なエリアに見えますが、多数の断層、東西に走る丘の切れ目で驚くほど複雑な条件が入り混じっています。
斜面の頂上付近は土壌も異なり冷涼すぎ、下方に過ぎると平地になり並みのワインになるため、基本的には斜面中腹に良い畑が集まっています。
村ごとに北から見ていきましょう。
1.品質が高く注目の「マルサネ」
ブルゴーニュで唯一赤・白に加えロゼの3種類の生産が許されているエリアです。
プルミエ・クリュ、グラン・クリュはありませんが、マルサネ・ロゼはミネラリーで孤高の味わい。
非常に品質が高いものが作られており、注目されています。
2.上級者好みな「フィサン」
グラン・クリュ無し。
斜面の上側にプルミエ・クリュがあります。
フィサンの赤は一般に地味というか、華やかさよりは玄人好みの堅牢なスタイル。
下から這い上がってくるような力強さがあります。
ドゥニ・ベルトーなどがこのスタイルの代表格。
丁度真ん中に丘の切れ目があり、北側と南側のフィサンに別れます。
3.コート・ド・ニュイのスター的な産地「ジュヴレ・シャンベルタン」
コート・ド・ニュイの中でも有名な産地で、栽培面積も広く、有名なグラン・クリュ、プルミエ・クリュも多いスター産地です。
一般に言われるのは、赤茶色の石灰や小石を含む土壌から生まれる、力強いスタイルのピノ・ノワールということ。
表現力豊かで一見華やかに見えますが、それを支える下半身の強さは明らか。
密に詰まった果実味やタンニンと酸によるしっかりとした構成が特徴です。
- シャンベルタン
- シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ
- シャルム・シャンベルタン
- マゾワイエール・シャンベルタン
- シャペル・シャンベルタン
- グリオット・シャンベルタン
- ラトリシエール・シャンベルタン
- マジ・シャンベルタン
- リュショット・シャンベルタン
中でもシャンベルタンと、最古の「クロ」であるシャンベルタン・クロ・ド・ベーズが有名です。(クロとは歴史的・栽培条件的に特徴的な区画のことで、往々にして石垣で囲まれています)
プルミエ・クリュの中で特に評価が高いものは、レ・カズティエやラヴォー・サン・ジャック、クロ・サン・ジャックですね。
4.武骨さがかっこいい「モレ・サン・ドニ」
ジュヴレ・シャンベルタンとシャンボール・ミュジニィという二台巨頭に挟まれていますが、モレ・サン・ドニ自体非常に素晴らしい畑をいくつも持っています。
北のジュヴレ側の丘と南のシャンボール側の丘に大別され、モレらしい武骨な格好良さを持ちながらも両村の味わいと共通するところが見出せます。
- クロ・ド・ラ・ロッシュ(北側)
- クロ・サン・ドニ(北側)
- クロ・デ・ランブレイ(南側)
- クロ・ド・タール(南側/モメサン社のモノポール=単独所有畑))
- ボンヌ・マール(南側/シャンボール・ミュジニィにまたがるグラン・クリュ)
その他有名なプルミエ・クリュはレ・ソルベやクロ・デ・ゾルム、オー・シャルムなど。
5.華やかなスタイルの「シャンボール・ミュジニィ」
ブルゴーニュワインの花形、シャンボール・ミュジニィは開放的で華やかなスタイル。
他の村のものでも華やかなものは勿論ありますが、シャンボールのものは口の中でふわっと、渋みも酸味も厳しくなく、実体のない感じです。
北と南に分かれており、グラン・クリュ ボンヌ・マールを共有するモレ・サン・ドニ側に近づくと、モレのエネルギー感が出てきます。
- ミュジニィ
- ボンヌ・マール
ミュジニィは石灰の少ない粘土質土壌で、コート・ドール唯一の白も認可されているグラン・クリュ。
ヴォギュエが白のグラン・クリュ ミュジニィを作っています。
しばらくは樹齢が若かったため、ブルゴーニュ・ブランに格下げして販売していましたが、2015年ヴィンテージよりグラン・クリュとしてラベリングが再開されました。
その他、有名なプルミエ・クリュにレ・ザムールズ、レ・シャルム、レ・クラ、オー・コンボットなど。
レ・ザムールズ(=恋人たち)はその名前もあり特に有名です。
6.グラン・クリュ[クロ・ド・ヴージョ]が有名な「ヴージョ」
グラン・クリュ クロ・ド・ヴージョで名を知られる村。
12世紀にシトー派の修道院が拓き、分割相続が伝統のブルゴーニュにおいて、フランス革命までの間そのまま所有されていた、最大のグラン・クリュです。
プルミエ・クリュはレ・プティ・ヴュージョ、ル・クロ・ブラン、レ・クラ、クロ・ド・ラ・ペリエール。
7.あのロマネ・コンティの「ヴォーヌ・ロマネ」
ヴォーヌ・ロマネ村とフラジェ・エシェゾー村を合わせたエリア。
世界的に有名な8つのグラン・クリュを持ち、世界で最も高価なワインを作るドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)の本拠地として知られています。
ヴォーヌ・ロマネ村のワインは、むっちりと詰まったエキス感とうねるような香り立ちで、しばしば妖艶と形容されます。
引き締まったジュヴレ・シャンベルタンよりは果実味で膨らんだ感じがあり、香水のようなふわっとした華やかさのシャンボール・ミュジニィに比べるとより太く密な雰囲気があります。
- ロマネ・コンティ(DRCの単独所有畑)
- ラ・ロマネ(コント・リジェ・ベレールの単独所有畑)
- ロマネ・サン・ヴィヴァン
- ラ・ターシュ(DRCの単独所有畑)
- リシュブール
- ラ・グランド・リュ(フランソワ・ラマルシュの単独所有畑)
- グラン・エシェゾー(フラジェ・エシェゾー村)
- エシェゾー(フラジェ・エシェゾー村)
その他有名なプルミエ・クリュはオー・マルコンソールやレ・ボーモン、レ・スショ、レ・ショーム、クロ・デ・レア(ミッシェル・グロの単独所有畑)です。
8.ニュイ・サン・ジョルジュ
グラン・クリュ無し。
セレ渓谷にある、ヴォーヌ・ロマネと隣接した北部と、やや離れた南部の2つに別れます。
プルミエ・クリュ オー・ブードのように、ヴォーヌ・ロマネに隣接する箇所はその特長にも共通する点があります。
有名なプルミエ・クリュはレ・サン・ジョルジュ、レ・ヴォークラン、レ・カイユ、オー・クラ、クロ・ド・ラ・マルシャルなど。
コート・ド・ニュイの主なブドウ品種
ブルゴーニュ地方の品種は、ほとんどが白のシャルドネと赤のピノ・ノワール。
どちらも栽培される環境に応じて多彩な表現を見せてくれます。
コート・ド・ニュイ地区では、ほとんどがピノ・ノワールから作られる赤。
ニュイのピノ・ノワールは、華やかな香りのあるものが多いですが、栽培環境によって大きく異なる味わいを持つため、前述の産地ごとの項目を参考にしてください。
ベースはイチゴやラズベリーのような赤い果実の香りと、花や紅茶の茶葉、木の実やハーブ、湿った土の香りやレザー、森の中を連想するような香りです。
格付けはブルゴーニュ地方のものを使用
ブルゴーニュ地方では分かりやすいA.O.C.のピラミッド構造になっています。
格付けの上から下に向かって、次の通り。
- グラン・クリュ=特級(例:ロマネ・コンティ)
- プルミエ・クリュ=1級(例:レ・ショーム)
- ヴィラージュ=村名(例:ヴォーヌ・ロマネ)
- リージョナル=地方名(例:ブルゴーニュ)
グラン・クリュなど格付けの上位に行けば行くほど、収量の制限など、規定が厳しくなっていきます。
【ソムリエが選ぶ】おすすめのコート・ド・ニュイのワイン3選
モレを知るなら「デュジャック・フィス・エ・ペール A.O.C.モレ・サン・ドニ」
モレ・サン・ドニの代表格の一人、ドメーヌ・デュジャックのネゴシアン部門です。
しっかりと詰まった香りや味わいですが、堅牢な建築物の中を風が通るように華やかな香りや明るいタッチが所々に顔を覗かせる秀作。
モレの魅力が伝わる一本です。
洗練された1本「ダヴィド・デュバン A.O.C.ジュヴレ・シャンベルタン」
ブルゴーニュの若手生産者の一人、ダヴィド・デュバンのジュヴレ・シャンベルタン村名です。
若手らしく非常に綺麗で口当たりも洗練されたのみ口。
鮮やかな香りですが、口の中でゆっくり転がしていると、渋みと酸味がしっかりとあり、筋肉質ともいえる味わいの骨格があることが分かります。
リンクをつけているのは2015年、暖かくブドウが完熟した年で、若いうちから香り立つ力強い収穫年のものです。
明るく華やかな「ダヴィド・デュバン A.O.C.シャンボール・ミュジニィ」
ジュヴレ・シャンベルタンと同じ、ダヴィド・デュバンが作るこちらはシャンボール・ミュジニィ村名。
こちらは明るい果実と花束のような華やかな香り、つるんとした舌触りです。
ジュヴレと比べて、つるつるとして、余り筋肉質な印象は受けません。
ワインの世界で「エレガント」という形容が良く使われますが、これがまさにエレガントなワインです。
まとめ
プルミエ・クリュやグラン・クリュなどクリュの名前が沢山出てきましたが、あまり構える必要はありません。
調べたり飲んだりしているうちに何となく良く耳にする名前があったりして覚えていきます。
現在市場に出回っている2014年、2015年といったヴィンテージのものは、どちらも飲みやすく、14年がブルゴーニュらしいエレガンスを持ち、15年は完熟した表現力を持っており、楽しく飲み比べが出来る環境です。
ブルゴーニュのような有名産地は、デパートやワインショップでの試飲も沢山あると思うので、見かけたら試してみてください。
その他のブルゴーニュ地方については以下の記事を参考にしてください。
ブルゴーニュ地方のワインの特徴とおすすめワイン3選