地中海にぽっかりと浮かぶコルシカ島。
フランス領ではありますが、地理的にはイタリアの方が近く、文化的にもイタリアから大きな影響を受けています。
世界中のワインが一様にカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネから作られ、同じようなワインがスーパーの棚に並ぶ現在、土着の品種や独特の地形・栽培文化から生み出される「その土地にしかない」ワインが注目されています。
海の中の山と呼ばれるほど険しい山がちなコルシカ島は、そんな「その土地にしかない」ワインの宝庫。
今までのワイン観を一度忘れて、沢山の美味しさを発見していきましょう。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
コルシカ島の主な産地
コルシカ島は山がちな島で、ブドウ畑のほとんどは海沿いにあります。
地中海の中に浮かび日照量は非常に豊富、強い風が吹き、厚い果皮のブドウが育ちます。
約半数がI.G.T.として販売され、ロゼも多い場所。
コルシカ島全体を覆うA.O.C.ヴァン・ド・コルスがあり、その中でも個性のある5つの地域が地名を付記できます。
有名なA.O.C.は、パトリモニオとアジャクシオ。
A.O.C.パトリモニオは、サンジョヴェーゼ(コルシカ島ではニエルキオと呼びます)を主体とした石灰質土壌の丘陵地。
土壌・品種共にトスカーナと似たところがあります。
同様にサンジョヴェーゼと石灰系土壌の組み合わせであるトスカーナのキアンティ・クラッシコと比べると、こちらの方がややワイルド。
ローズマリーのようなハーブの香りがあり、味わいにも勢いがあります。
豊かな日照量、完熟するに十分な気温、ブドウの皮を鍛える強い風を受け、ハッキリとした主張のワインになる傾向が。
もう一つのコルシカ島を代表するA.O.C.アジャクシオは、シャカレッロという黒ブドウが名産。
コルシカ島の土着品種と言われており、フローラルで滑らかなワインを生み出します。
A.O.C.アジャクシオの花崗岩土壌が、その品種特性を助長し、ふっくらとして品の良い味わい。
また、島の北側にアンテナのように突き出した半島では、ヴァン・ド・ナチュールの甘口白A.O.C.ミュスカ・デュ・カップ・コルスが作られています。
ヴァン・ド・ナチュールとは、発酵途中のブドウ果汁にアルコールを加えたもの。
ミュスカの華やかな香りを、甘味・深みのあるボディが支えます。
A.O.C.パトリモニオは石灰質、A.O.C.アジャクシオは花崗岩、A.O.C.ミュスカ・デュ・カップ・コルスはシスト、A.O.C.コルスの東側海岸は泥灰土と、コルシカ島には4パターンの土壌があります。
石灰質は酸味を補いワインのボディを引き締めるので、カチッと締まった味わい。
骨格のしっかり備わった、偉大なニエルッキオを生み出します。
花崗岩はワインにフルーティさやふくよかな舌触りが出て、シャカレッロのフローラルな味わいを同じ方向性に導きます。
場所によってメインとなる品種も違いますが、畑の環境も異なります。
ワインも農作物なので、必ずこう、とは断言できませんが、品種以外の違いも想像しながら飲むとより楽しめるかも知れません。
コルシカ島の主なブドウ品種
白ブドウ
白ブドウは主にヴェルメンティーノ。
プロヴァンス地方や、イタリア沿岸部で多く栽培されている品種です。
パインのようなトロピカルな厚みと、ハーブの爽やかな香りがあり、サクッと飲むカジュアルなものから高級なものまで作られています。
黒ブドウ
黒ブドウはシャカレッロとニエルキオ。
シャカレッロはコルシカ島原産と言われている品種で、A.O.C.アジャクシオのある南西部で主に栽培されています。
黒コショウやフローラルな香りがあり、赤とロゼが作られます。
A.O.C.パトリモニオがある北部を中心に栽培されているニエルッキオは、イタリアのサンジョヴェーゼと同じ品種。
ジェノヴァ共和国の時代に、イタリアから持ち込まれたものが土着化したと考えられています。
厚みがありしっかりとした構造。
コルシカ島最高のワインを生み出す品種です。
格付け
ブルゴーニュ地方のような、グラン・クリュ、プルミエ・クリュなどの格付けはありません。
目安としては、I.G.P.とA.O.C.ヴァン・ド・コルスが島全域をカヴァーするエントリーレンジがあり、地域名付きA.O.C.ヴァン・ド・コルス、トップの品質としてパトリモニオやアジャクシオ、ミュスカ・デュ・カップ・コルスと考えるとよいと思います。
【ソムリエが選ぶ】おすすめのコルシカ島のワイン3選
クロ・シニャドール A.O.C.パトリモニオ
コルシカ島北側、石灰質土壌の丘陵地帯で育てられたニエルッキオ(=サンジョヴェーゼ)で作られるワイン。
厚みのある果実味、堂々とした味わいの骨格があり、ローズマリーなどワイルドハーブの香りがアクセントに感じられます。
完熟したブドウの味わいを感じると同時に、しっかりした渋みや引き締まったボディが、コルシカ島でも暑く乾燥した栽培環境を思わせます。
アジャクシオ ダミアヌ(赤)(サンスフル)[2014]ドメーヌ・ウ・スティリチオヌ
花崗岩土壌のフルーティな主張もしっとりと落ち着き、混然一体となった穏やかな味わいに。
軽くトリュフのような熟成香も現れており、他とは違う上質な雰囲気が楽しめます。
クロ・フォルネッリ A.O.C.ヴァン・ド・コルス 白
コルシカ島東部で作られたヴェルメンティーノの白ワイン。
洋梨のようなフルーツ感と、ハーブ、白コショウのニュアンスで、口当たりまろやかながらフレッシュな印象を受けます。
魚介などと気軽に楽しみたい、地中海の白ワインです。
国内では売り切れが多く、以下のリンクはロゼとなっています。
まとめ
フランスの影響と、イタリアの影響を受けるコルシカ島のワイン。
フランス語ではコルスと呼ばれるので、A.O.C.ヴァン・ド・コルスのように使われますが、その実サンジョヴェーゼやヴェルメンティーノが活躍していたりとイタリアとの共通点の方が多い産地です。
その二面性の中から見えてくるコルシカらしさが中々分からないところでもあり、面白いところでもあります。
輸入されている種類はそんなに多くありませんが、ピノ・ノワールなども作られています。
是非、気になったものからチェックしてみてください。
その他のフランスのワインの地方については以下の記事から参考にしてください。
フランスワインの産地や品種の特徴|おすすめ〜高級銘柄