サンソーは単体でワインになっているのをあまり見ないブドウです。
しかしながら、フランスのラングドック・ルシヨン地方や南ローヌ地方、コルシカ島など、地中海沿岸部のブレンドワインに混ざることが多い、影の立役者。
そもそもグルナッシュやムールヴェードル、カリニャンなどと並び、南仏のブドウには個性的なものが多く、単一品種でワインを仕込むよりもブレンドしてそれぞれの個性を補い合った方が美味しいワインが作れます。
サンソーもそんなブドウ品種のひとつ。
あまり目立たない、けれども地中海の素晴らしいワインを作るには無くてはならない品種、サンソーを見ていきます。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
サンソーの特徴
サンソーは地中海系の黒ブドウです。
原産地は定かになっていないものの、フランスのプロヴァンス地方やラングドック地方あたりだと考えられています。
上記の地方に加え、地中海に浮かぶコルシカ島でも栽培されており、まさに地中海を構成するひとつとなっています。
晩熟型のブドウで、暑く乾燥した気候を好みます。
干ばつや高温の環境にも耐性があるので、地中海はまさに最適。
逆に湿度が高い環境が苦手で、カビなどの病害に弱い一面もあります。
薄い果皮で多くの房(房のサイズも大きくなります)をつけるブドウ品種のため、比較的リーズナブルな価格のワインにもブレンドされます。
そのため、ロゼワインや、若くから飲めるフレッシュなタイプの赤ワインのセパージュで見かけることが多いはず。
シャープな酸味や、やや青いハーブの香りが特徴的。
グルナッシュやムールヴェードルなど、ボディはあるものの酸味が減りやすく、ダレた味わいのワインが出来てしまうブドウとの相性が良く、サンソーらしい鋭い酸味がブレンドしたワインの味わいにハリをもたらします。
ただし、前述したように房も大きく、収穫量も増えがちなブドウなので、質の良いワインを作ろうと思うとしっかり房の数を制限しなければいけません。
大量に房をつけたサンソーの味わいは薄く水っぽく、特徴である酸味も暴れがちのギスギスしたものになってしまいます。
また、サンソーはその頑丈さと収穫量の多さから南半球でも導入された歴史があり、チリや南アフリカなどで古木の畑が残っています。
特に、南アフリカではこのサンソーから生まれた新しい品種が存在しています。
それはピノタージュ。
今や南アフリカの顔と言ってもいいほど、質の高いワインを多く生み出している品種です。
ピノタージュはサンソーとピノ・ノワールの交配で生まれました。
ピノ・ノワールのエレガントな味わいに、サンソーの頑丈な特徴を活かし、安定して栽培ができるように意図されたものです。
南アフリカでサンソーはエルミタージュと呼ばれており、ピノ・ノワール×エルミタージュ=ピノタージュという分かりやすい名称になっています。
香り
香りはほどほどのボリューム。
フレッシュなイチゴやザクロのような、赤系果実の明るい香りに、ハーブを思わせる爽やかな青みが特徴。
南仏ではガリッグと呼ばれる灌木地帯のワイルドハーブが有名ですが、これを思い浮かべるような香りだとして、名前そのまま「ガリッグの香り」と表現されることもあります。
味わい
ほどほどのボディ感とフレッシュな酸味。
収量が不適切に多いサンソーからは、酸味と不釣り合いなボディの薄さ、トゲトゲした暴れがちな酸、鼻につくアルコール感があり、質の低下が一目瞭然なので、ある意味気の抜けないブドウ品種でもあります。
適切な酸味のサンソーからは、明るくジューシー、新鮮でフルーティな味わいを感じることができ、夏の暑い日に少し冷やしてリフレッシュするのには最適です。
シノニム
エルミタージュ(南アフリカ)
サンソーの主な栽培地
フランス
南ローヌ、ラングドック・ルシヨン地方、プロヴァンス地方など地中海沿岸部を中心に栽培されています。
シラー、ムールヴェードル、グルナッシュ、カリニャンなど、その他の地中海系品種と共に栽培、ブレンドされ、バランスの整ったワインを生み出します。
そのブレンド文化を象徴するものが、シャトー・ヌフ・デュ・パプ。
上記のブドウを含む13種類ものブレンドが認められている、南仏を代表するグラン・ヴァンです。
これだけ多くの品種をブレンドするワインなので、サンソーは数パーセントしか含まれないこともざらですが、多品種ブレンドならではの丸みと、南仏の温かな太陽のゆったりしたボディがマッチし、調和がとれた偉大なワインと言えます。
南ローヌのサンソーと言えば、ロゼワインの産地であるタヴェルを忘れることはできません。
こちらもサンソーがメインという訳ではないのですが、濃い色調、しっかりした香りのロゼの中にフレッシュな印象を持たせてくれるのがサンソーです。
ロゼワインの一大産地、プロヴァンスでも当然のようにブレンドで活躍。
ザクロのような新鮮な香りと爽やかな酸味は、南仏のロゼには無くてはならない存在です。
また、ラングドック・ルーション地方でも補助的にブレンドされ活躍。
ラングドック・ルーション地方は近年グラン・クリュの制定を進め、ピラミッド構造のA.O.C.でマーケティングを進めており、以前よりもワインが選びやすい環境になってきました。
その他の国
前述したように乾燥や暑さに強く、房もたくさん実るブドウなので、南半球にも広がっています。
例えばチリや南アフリカでは、そういった大量生産の時代を経て残っている古木のサンソーの畑から、フレッシュでかつ深みのある高質なワインが作られ始めています。
品種だけで見ると大きなムーブメントとまではいきませんが、その土地に残されたものを活用して、現代の新しい味を作っていく動きは、世界各地で見られるものです。
サンソーに合う料理
- 牛肉のタルタル(ロゼ)
- バーベキュー(ロゼ)
- 煮込みハンバーグ(赤)
- ミートボール(赤)など
- スモークサーモン(ロゼ)
- カルパッチョ(ロゼ)
- マグロのヅケ(ロゼ)
- サンマの塩焼き(赤)
- ブイヤベース(赤)など
- アボカドサラダ(ロゼ)
- プロヴァンス風サラダ(ロゼ)
- カプレーゼ(ロゼ)
- ラタトゥイユ(赤)
- 辛口の青カビ系チーズ
- ロゼにはカマンベールなど白カビ系のものもオススメ
オススメのワイン
カルト・ノワール コート・ド・プロヴァンス ロゼ
プロヴァンスのロゼワイン。
グルナッシュ50%、サンソー40%にティブラン10%のブレンドです。
フローラルで華やか、ふわっと心地よい香りと爽やかな酸味、ハーブのようなアクセントで、プロヴァンスの潮風を感じるリラックスタイプのロゼ。
クルーガー・ファミリー・ワインズ オールド・ヴァイン・サンソー
樹齢40年以上、南アフリカのステレンボッシュに残された古木のサンソーで作られたワインです。
そのフレッシュなアロマはピノ・ノワールと比較されるほど。
古木で収穫量を制限、初めから高品質なワインになることを意図して栽培されたサンソーは、非常に高いポテンシャルを発揮してくれました。
クードレ・ド・ボーカステル コート・ド・ローヌ
ムールヴェードル、グルナッシュ、シラーを中心に、サンソーが20%ブレンドされています。
ムールヴェードル、グルナッシュの濃く厚いボディと、シラー、サンソーの明るくフレッシュな酸味が組み合わさり、非常に安定した味わい。
南ローヌらしいブレンドの良さがさりげなく現れているワインです。
まとめ
ブレンドでワインを作る伝統が息づく地中海において、サンソーは中々表舞台に姿を現さない、いわば陰の存在。
それでもやはり、サンソーの個性は地中海のワインにとってなくてはならないものです。
最近では、土着品種や古木への注目度の高まりから、サンソー単体のワインも少し見かけるようになってきたので、サンソー単体の個性をどうしても知りたいという方は、それらを試してみると面白いと思います。
そして、これからはブレンドワインの品種の中に、サンソーを探してみてください。