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変化自在の品種シュナン・ブランの特徴とおすすめワイン3選

フランスのロワール地方で長い栽培の歴史を持つシュナン・ブラン。
9世紀ごろには既にアンジュー周辺で栽培されていたようで、文学作品の中にもしばしば登場します。

栽培環境や醸造によって幅広いスタイルに仕上げることのできるブドウで、辛口から半甘口、甘口、樽熟成したフルボディのものや逆にシンプルでフレッシュなもの、更にはスパークリングワインまで作られている万能選手。

食卓との親和性も高く、ビストロ風の洋食などとは万能の相性を見せてくれます。
今回はそんなシュナン・ブランを見ていきましょう。

シュナン・ブランの特徴

シュナンブランの写真
画像参照元:Wikipedia

主な栽培地はフランスのロワール地方と、南アフリカやカリフォルニア。
特にロワール川の中流域、アンジューやソーミュール、トゥーレーヌ周辺で広く栽培されています。
ロワール地方ではピノ・ド・ラ・ロワールと呼ばれることもあるようです。

前述の通り、特にロワール地方では様々なスタイルに仕上げられます。
例えば有名なA.O.C.ヴーヴレなどは、同じ「ヴーヴレ」という呼称でスパークリングもスティルワインも作られるうえに、それぞれ辛口~甘口が存在するというとても面白い状態です。

というのも、ロワール地方はヴィンテージによって大西洋からの温暖な影響が強くなったり、内陸からの冷涼な気候が強くなったりと、海・陸双方の影響を受けるため、同じシュナン・ブランでもヴィンテージによって出来上がるスタイルが異なるのです。

また、南アフリカでも古くは17世紀ごろからシュナン・ブランが栽培されていますが、こちらでは辛口が主流です。
現地ではスティーンと呼ばれ、サクッと飲みやすい廉価な白ワインになることも多いです。

スワートランド地方やステレンボッシュ地方では、樹齢の高いブッシュヴァイン(株仕立てのブドウ)から意欲的なシュナン・ブランが作られており、厚く堂々としたフルボディのスタイルが楽しめます。

ハチミツや蝋燭のような香り

ハチミツや蝋燭のような香りが特徴。
栽培環境によって、りんごや梨のような爽やかなフルーツの香りから、カリンやパイナップルのようなもう少し甘い雰囲気を感じる香りまで幅がありますが、ハチミツや蝋の香りを鼻の奥で感じることができます。

同時に、冷たい石や初夏の川床のような硬質なニュアンスも感じることができます。
この感覚はフルーツなど身近なものに例えるのが難しいため、「ミネラル感」というザックリとした言葉で表されます。

貴腐ブドウから作られた甘口の場合は、アカシアのハチミツのような、よりコクのある独特の甘い香りを持ちます。

シャープな酸味

シャープな酸味が特徴です。
シュナン・ブランはしっかりと完熟してからも、酸味が落ちにくいブドウ。
どっしりフルボディでも、甘口でも、酸味が味を支えてくれて、後味は爽やかに終わります。

貴腐ブドウから作られた甘口の場合は、舌にトロみを感じます。

シノニム

ピノ・ド・ラ・ロワール(フランス、ロワール地方)、スティーン(南アフリカ)

シュナン・ブランの主な栽培地

キリリとした輪郭のフランス

フランスのイラスト

フランスはロワール地方が中心の栽培地。
ロワール川中流域のアンジュー、ソーミュール、トゥーレーヌ周辺で盛んに栽培されています。

トゥーレーヌとだけ名乗るシュナン・ブランは、キリリとした輪郭を持つ爽やかな白。
ビストロで楽しみたい、カジュアルでクールな味わいです。

A.O.C.ヴーヴレと、川を挟んでその対岸にあるA.O.C.モンルイ・シュール・ロワールではスパークリング、スティル、辛口~甘口が作られています。
カジュアルなものから高品質なものまで様々ですが、ヴーヴレの方がやや果実の厚みを感じるのに対して、モンルイ・シュール・ロワールは繊細なスタイルです。

川を下ったところにある、アンジューを名乗るシュナン・ブランは、トゥーレーヌのものに対して緩やかで優しい味わい。

しかしながら、アンジューにあるA.O.C.サヴニエールは特異なエリアで、硬くミネラリーな力強いシュナン・ブランを生み出します。
若いうちはフルーツの香りよりも、硬度の高いミネラルウォーターや石、昆布を思わせる無機質な香りが強く、厚いボディと鋭い酸味で武装していますが、長く熟成させることで力強くも高貴な味わいを開いてくれます。

その対岸は、ロワール地方随一の甘口産地。
広域のA.O.C.コトー・デュ・レイヨン、1級扱いのA.O.C.ショーム、そしてロワール地方が誇る唯一のグラン・クリュA.O.C.カール・ド・ショームが存在します。

ソーテルヌやトカイに知名度こそ劣るものの、味わいの充実度では決して負けない、素晴らしい甘口ワインの産地です。

公式にグラン・クリュ認定されてはいませんが、A.O.C.ボンヌゾーもカール・ド・ショームに匹敵する素晴らしいエリアとして知られています。

充溢した味わいの南アフリカ

南アフリカのイラスト

南アフリカではスティーンという名前で知られ、17世紀ごろから栽培されています。
主にスワートランドやステレンボッシュの古木ブッシュヴァインから品質の高いものが生み出されています。

これらの地域の、暑く乾燥した気候を反映し、充溢した味わいに。
アルコール度数、味わいの要素もしっかりと詰まり、樽熟成の風味を身にまといスパイシーなニュアンスが感じられます。
Mr.シュナン・ブランと呼ばれるケン・フォレスターや、バデンホースト、ウォータークルーフやロングリッジなど、近年は南アフリカの高品質なシュナン・ブランが日本でも手に入るようになってきました。

おすすめのワイン

ユエ ヴーヴレ・クロ・デュ・ブール デゥミ・セック

ほんのりと甘味を感じる半辛口。
ハチミツやカリンのような香り、充実していても軽やかさを残すボディ、後口の見事な酸味があり、お手本のようなシュナン・ブランです。
ロワール地方のシュナン・ブランを知りたいならば、一度は口にするべきワイン。

ニコラ・ジョリー サヴニエール・クロ・ド・ラ・クレ・ド・セラン

ニコラ・ジョリー クロ ド ラ クレ ド セラン[2018]【750ml】Nicolas Joly CLOS DE LA COULEE DE SERRANT
クレ・ド・セラン

ビオディナミ農法の第一人者として取り上げられることが多いニコラ・ジョリーですが、娘さんが醸造に関わり始めた近年のワインは硬すぎず自然体な味わいを見せるようになってきました。
他のどこのシュナン・ブランとも違う、独特の緊張感や無機物的な香りや厚みのある味わいはまさにサヴニエール。
ロワール地方の偉大なワインのひとつです。

ド・トラフォード シュナン・ブラン [2018] ド・トラフォード・ワインズ

南アフリカはステレンボッシュ地方のシュナン・ブラン。
完熟してがっしりとしたボディだけに頼らない、流れる水のような瑞々しい味わいは、南アフリカ・シュナン・ブランの新しい姿です。
アンズやハチミツに軽くハーブの香りにメリハリのついたジューシーな味わい。
これからの南アフリカが楽しみになるような一本。

シュナン・ブランに合う料理

肉類

肉類のイラスト

  • リエット
  • 豚バラのビール煮込み
  • ハーブソーセージ
魚介類

魚のイラスト

  • エビフライ
  • ホタテ
野菜類

野菜のイラスト

  • マッシュルームサラダ
  • 蒸し野菜
チーズ

チーズのイラスト

  • シェーブル系のもの

まとめ

様々なスタイルが存在するシュナン・ブランのワイン。
スパークリング、軽い辛口のスティル、フルボディのスティル、最後に甘口スティルや半甘口のスパークリング、などとシュナン・ブランだけで一連の食事を通すことも出来てしまいます。

また、高品質なシュナン・ブランは、その酸味の強さも相まって、熟成を経て真価を発揮します。
ロワール地方には熟成したシュナン・ブランをリリースしているようなメーカーもあるので、見かけたらぜひ試してみてください。