白ブドウの王様とも言うべき、シャルドネ。
王道でメジャーで、品種別にワインを覚えようとする人が始めに覚える品種のひとつです。
世界で最も高価なワインを生み出す品種であることに加え、適応能力が高く、世界中で栽培されていることも、現在ここまで有名になった理由。
フランスだけでなく、アメリカ、チリ、南アフリカ・・・ワイン用ブドウが栽培されている場所では必ずといっていいほどシャルドネも栽培されています。
そんな白ブドウの王様、シャルドネの魅力を見て行きましょう。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
シャルドネの特徴
シャルドネはフランスのブルゴーニュ地方原産の白ブドウ。
ピノ・ノワールとグエ・ブランの自然交配で生まれたとされています。
故郷であるブルゴーニュ地方のグラン・クリュ群が世界で最も素晴らしいシャルドネを生み出すことに異論がある方はいないでしょう。
しかしながら、シャルドネは栽培環境への適応力が高く、世界中で栽培されています。
様々な場所、様々なスタイルでワインが作られており、土地ごとの違いを追っていくのも楽しいブドウです。
シャルドネは品種特有の強い香りを持っているわけではありませんが、偉大なワインを作るのに必要な味わいの構造を備えています。
酸味やほのかな渋み、ミネラル感と口の中でのボリュームなど、ふくらみは感じつつもハッキリとした味の輪郭が描かれるワインになります。
ワインのスタイルは大きく分けて2種類。
- 酸味中心に味が形作られる「シャープ」タイプ
- トロピカルな果実味と樽熟成の香りの「リッチ」タイプ
前者を代表するのはシャブリです。
冷涼なエリアで、シャープな酸味と柑橘系の香り。
新鮮でタイトな味わいを活かすように、樽の香りをつけない醸造が基本です。
(シャブリ・グラン・クリュなど上級の畑では樽熟成させますが、リッチな味というよりは味の骨組みを補強するのに役立っています)
後者はカリフォルニアやチリなど、ブルゴーニュ地方よりも温暖な場所で作られているワインが該当します。
温かく日照量がある環境で栽培されたシャルドネは、桃やパイナップルなどトロピカルな香りと、ボリュームある味わいが特徴。
そのスケールの大きさに合わせるように、新樽で熟成させてバニラやバターのようなリッチな香りをまとわせます。
初めてシャルドネのワインを買ってみるときには、温暖な場所か・冷涼な場所か、樽の香りをしっかりつけているか・つけていないかを店員さんに聞いて選んでみてください。
香り
「シャープ」タイプ
切り立ての青リンゴに、レモンやライムの皮など柑橘系のアクセント。
カモミールやミントの爽やかな香りと、硬水や冷たい石を思わせる、キンと澄んだ雰囲気があります。
「リッチ」タイプ
白桃、黄桃やパイナップルのトロピカルなフルーツ香に、バニラやバター、シナモン、クローブなどの甘やかなスパイスの香り。
はっきりと分かりやすい、おいしそうな香りがボリューム豊かに香ります。
味わい
「シャープ」タイプ
柑橘を思わせる爽やかな酸味が特徴。ピシッとタイトに整った味わいで、後味に至るまでシャープな印象が続きます。
「リッチ」タイプ
口に含むとたっぷりとした果実の風味と、それを支える酸味が感じられます。ただ、酸味は柑橘系というよりもヨーグルトのようなまろやかな酸味であることが多く、あわせて後味にナッツのようなほろ苦味を感じることも。
ボリュームがあっても、良いワインはダレた感じがせず、余韻まで整った味わいが続きます。
シャルドネの主な栽培地
フランス
フランスのブルゴーニュ地方は、シャルドネの総本山。
世界中のシャルドネは、多かれ少なかれブルゴーニュ地方のものを意識して作られています。
ブルゴーニュ地方の畑は、その良し悪しでランク付けされており、ピラミッド構造をなしています。
上位のランクから、グラン・クリュ→プルミエ・クリュ→村名→広域エリア名という具合。
ランクが上に行けば行くほど、価格も上昇しますし、ワイン単体のクオリティもアップしていきますが、そこまで単純でないのがブルゴーニュ地方のお財布泣かせなところでもあり、面白いところでもあります。
ワインはテロワール(風土・栽培環境)を映し出すと言いますが、ブルゴーニュ地方では畑ごとに細かく味わいの違いが表れています。
ですので、その村や畑の個性を多少なりとも知っていないと、いくら高いグラン・クリュを買ったところで、自分にとっては美味しくなかったということが起こりえます。
また、ポテンシャルの高いワインをあまりにも若いうちに飲んでしまうと、味わいが十分に開かず首をかしげてしまうということもあります。
そういった細かなテロワールの違いを利き分ける楽しみもありますが、ブルゴーニュ地方のシャルドネを乱暴に大別すると、「シャープ」タイプの極みであるシャブリ地区のもの、「リッチ」タイプというにはやや威厳のあるコート・ド・ボーヌ地区、より素朴な味わいのブルゴーニュ南部のマコネ地区となります。
コート・ド・ボーヌ地区にはかの有名なムルソーやモンラッシェも含まれます。
また、隣のジュラ地区でもブルゴーニュ地方と似た、けれどもまた別の個性を持つ素晴らしいシャルドネが作られています。
地中海に面したラングドック・ルシヨン地方では様々な品種とともにシャルドネが栽培されています。
どちらかというとトロピカルな風味の強いタイプが多くありますが、海沿いらしいゆったりとした強すぎないリッチさが魅力です。
忘れてはならないのがシャンパーニュ地方。
ピノ・ノワール、ピノ・ムニエと並び、シャルドネはシャンパーニュの味わいを作る上で無くてはならない存在です。
コード・ド・ブラン地区で多く栽培され、ワインに綺麗な酸味や滑らかな舌触りを付与します。
アメリカ
カリフォルニア州では「リッチ」タイプのシャルドネが多く作られています。
堂々たるスケール感とボリューム、そして上位のワインはそれに釣り合う酸味と緊張感をも備えます。
カリフォルニア沿岸沿いに寒流が通っているため、海沿いのエリアや湾の近くなど、寒流の涼しい風を受けるエリアは、綺麗な酸味を持ったエレガントなシャルドネを生み出すことができます。
パリスの審判と呼ばれる伝説のブラインド・テイスティング会では、ブルゴーニュ地方の名だたるシャルドネ達を抑え、カリフォルニア州のシャトー・モンテレーナ・シャルドネが1位を取っています。
チリ
アメリカ大陸の南、チリのシャルドネも侮れません。
輸出向けに品種ごとのラインナップを揃え、コストパフォーマンスの高さを武器に盛り上がったチリのワインですが、栽培環境の研究も進み、それぞれの品種がより適した環境に植えられるようになりました。
現在のチリは中価格帯以上が狙い目、ワインを飲みなれている人こそ再確認するべき産地になってきています。
シャルドネの適地は海沿い。
アメリカと同様に、寒流の影響を受けて酸味がきれいに残るエリアが適しています。
カサブランカ・ヴァレーで栽培されたシャルドネはトロピカルでかつピリッとした風味があり、パイナップルと岩塩を思わせる個性的なワインになります。
その他の国
シャルドネは本当に世界中で広く栽培されています。
その他素晴らしいシャルドネができる場所はといえば、イタリア北部のピエモンテ州ランゲ地区やフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州。
オーストラリアやニュージーランドでも良いシャルドネの産地です。
日本では長野県の千曲川流域で良いものが見つかります。
シャルドネに合う料理
- 鶏のクリーム煮
- ハムとパセリのゼリー寄せ
- ムニエル
- 鮭のホイル焼き
- グラタン
- クリームシチュー
- エポワス(ブルゴーニュ地方のウォッシュチーズ)
- コンテ
おすすめのワイン
ウィリアム・フェーブル シャブリ
大手メゾンが作る並みのシャブリ。
とは言え質は高く、シャブリのシャープな味わいが綺麗に出ています。
柑橘系や青りんごの香りと、「冷たい石のような」とよく言い表される、キンとした雰囲気。
ムルソー 2018 ルー・デュモン
ルー・デュモンは、ワインの神様アンリ・ジェイエ氏が認めた日本人の醸造家、仲田晃司氏が設立したネゴシアンです。
香ばしい新樽由来の風味、洋梨のような果実味と豊富なミネルがバランスよく調和し、しっかりとした味わいに仕上がっています。ほのかにミネラルの塩味を感じる余韻もまた魅力的なワインです。
シャトー・モンテレーナ シャルドネ
カリフォルニア州ナパ・ヴァレーのシャルドネ。
パリスの審判でブルゴーニュ勢を破った話はあまりにも有名です。
フランスよりも一回り大きなボリュームと、それをしっかりと支える骨格。
トロピカルでリッチな風味ながら、贅肉を感じさせない造りは圧巻です。
まとめ
世界中で栽培されており、ワインを余り飲まない人にもおススメしやすいシャルドネ。
栽培された環境を鋭く味わいに反映させますが、いろいろな場所でいろいろなメーカーが作っているので、飲み比べるとシャルドネらしさというものが分かってくると思います。
どの品種からワインを飲み始めようか迷っている人がいたら、是非シャルドネを初めの一本にしてみてください。