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シャンパーニュ地方の産地の特徴と製法について

シャンパーニュ地方の地図の図解

世界中の人々を魅了し続けるシャンパーニュ。
2015年には「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」がユネスコ世界遺産にも登録されました。

シャンパーニュは独特の飲み物です。

通常単一の収穫年で仕込まれるワインでは例外的に、複数年のブレンドを行います。
これは、品質を一定させ、そのメゾンの味を代々受け継ぐための方法。
ブドウ栽培の北限にあり、不安定な収穫に対する保険でもありました。

アッサンブラージュ(=ブレンド)技術を洗練させた17世紀の修道士ドン・ペリニョンや、ピュピトルを使ったルミアージュ(澱を集めながらの熟成)考案したマダム・クリコなど、シャンパーニュには人間の知恵と意志が込められています。

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シャンパーニュ地方の主な産地

シャンパーニュ地方で作られた特定のスパークリングワインが、「シャンパーニュ」と呼ばれます。
北緯49度というブドウ栽培北限の地で作られ、質・量ともに安定してワインを作り出すための様々な技法が発展してきました。

この地方で特徴的なのが、石灰質を豊富に含んだチョークの土壌。
コート・デ・ブラン地区やモンターニュ・ド・ランス地区では白亜の石灰質が露出しており、これがシャンパーニュの骨格を作る酸味やタイトな輪郭を生みます。

このチョークを掘って作られたカーヴ(熟成庫)は、気温・湿度ともにワインの熟成に理想的な環境を作り出します。
第一次世界大戦では、このカーヴが人々の避難場所になりました。

シャンパーニュの産地は、大きく下の4つに分けられます。

モンターニュ・ド・ランス地区

ランスの森の周りをぐるっと囲むように畑が広がるエリア。
北、東、南向き斜面のそれぞれにブドウ畑があります。

また、シャンパーニュの有名な白亜の石灰質が露出し、保水・排水のバランスが理想的。
ピノ・ノワールを主体としたグラン・クリュが北東向き斜面に連なり、透明感のある酸と骨格をワインに与えます。

南向き斜面でふくらみのある果実感のアンボネイ、骨格のしっかりしたブジー、北向きで伸びやかな酸を見せるヴェルズネイなど、グラン・クリュが連なります。

ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区

マルヌ川沿いの南向き斜面が連続するエリア。
ピノ・ノワールやピノ・ムニエが多く栽培されています。

シャンパーニュ最高峰のピノ・ノワールを生み出すといわれるグラン・クリュ・アイは、南向き斜面の豊富な日照量を反映して、口の中で大きく円を描くような味わい。
ボランジェ、ゴッセ、ドゥーツなどがこの村に本拠を構えます。

コート・デ・ブラン地区

エペルネから南に伸びるエリア。
ブドウ畑は東向き斜面に連続し、どことなくブルゴーニュのコート・ドールを思わせます。

白亜の石灰質が露出したシャルドネの銘醸地として名高く、アヴィーズ、シュイイ、クラマン、ル・メニルシュール・オジェ、オジェ、オワリーのグラン・クリュが存在します。

アヴィーズはしっかりとした骨格の骨太なシャルドネ、隣り合うオジェは来た風から守られる地形で、対照的にやさしく大らかなシャルドネを生みます。

クリュッグの「クロ・デ・メニル」で有名なル・メニル・シュール・オジェは表土が薄く、硬く堅牢な味わい。
長期熟成により花開くスタイルです。

クラマンは高台の頂上にあり、日照を豊富に受けることが出来るため、豊かな果実味とクリーミーさが特徴です。

コート・デ・バール地区

シャンパーニュの中心地よりもシャブリに近い場所で、土壌もキンメリジャン土壌。
そのため、シャンパーニュには含めないとする意見もかつては多くありました。

8割がピノ・ノワール。
シャンパーニュ南部の果実味豊かでふくよかな味わいが魅力です。

近年ではその味わいに惹かれ、大手メゾンによる買い付けも多く行われています。

また、RM=レコルタン・マニピュランという形態が多いのも特徴の一つ。
これはブドウ栽培からワイン醸造までを一貫して行うメーカーの総称で、一般に小規模生産者。
クラフト的な作りが人気を集めています。

シャンパーニュ地方では一般に、ブドウ栽培者とワイン製造のメゾンが別々になっています。
このように、ブドウを農家から購入して醸造する形態をNM=ネゴシアン・マニピュランと呼びます。

また、このエリアではスティルワインのコトー・シャンプノワ、ピノ・ノワールのロゼ・スティルワイン、ロゼ・デ・リセーも作られています。

シャンパーニュの製法について

シャンパーニュはシャンパーニュ方式という製法できめ細やかな泡立ちを生み出します。
それに伴う様々な工程があり、それぞれがシャンパーニュの味わいを決める重要な役割を担っています。

工程1
圧搾

ブドウの汁を絞る作業です。
シャンパーニュでは4,000kgのブドウから絞った初めの2,050ℓの果汁(=テート・ド・キュヴェ)と、その次に出てくる500ℓの果汁(=プルミエール・タイユ)までを使用します。

とにかく雑味のない綺麗な果汁を使用するため、絞る作業も浅く広いプレス機でゆっくりと時間をかけて行います。

工程2
一次発酵

アルコール発酵。
基本的には通常のワインを作る際と変わらない工程です。

工程3
調合(アッサンブラージュ)

一次発酵した原酒と、貯蔵してある前年までの原酒(ヴァン・ド・レゼルヴ)を調合します。
そのメゾンの味わいを作り出す、非常に重要な工程。
近年では、ヴァン・ド・レゼルヴの少ない新設のレコルタン・マニピュランの増加や、テロワール重視のスタイルの流行で、単一収穫年でのリリースも増えてきました。

工程4
瓶詰(ティラージュ)

瓶詰の際には、酵母と1ℓあたり24gの糖分(=リキュール・ド・ティラージュ)を加えます。
次の工程の瓶内二次発酵に進むための仕込みにあたります。

工程5
瓶内二次発酵

シャンパーニュのきめ細やかな泡立ちを生む工程。
瓶の中で酵母が糖を分解し、アルコールと二酸化炭素(炭酸ガス)に変えていきます。
この二酸化炭素が、シャンパーニュの泡です。

工程6
熟成

瓶内二次発酵後、活動を終えた酵母が滓として溜まっていきます。
このままワインを寝かせることで、酵母から旨味成分が少しずつ引き出されます。
シャンパーニュではこの熟成期間を最低でも15ヶ月することが義務付けられています。
良年に作られる収穫年表示のミレジメは3年以上の熟成規定となっています。

工程7
倒立(ミズ・シュール・ポワント)&動瓶(ルミアージュ)

最終的に、役目を終えた滓は瓶から取り除かれます。
その下準備として、滓を瓶口に集めておくのがこの工程。

ピュピトルと呼ばれる台に、瓶口を下にして瓶を並べ、毎日少しずつ瓶を回転させます。
昔は手動で行っていましたが、現在は殆どが機械化されています。

工程8
滓抜き(デゴルジュマン)

瓶口を-20℃の塩化カルシウム水溶液に浸し、瓶口にためた滓を凍らせます。
そして、栓を抜いて滓を吹き飛ばし、ワインがこぼれない内に再度栓をします。

一瞬の動作が要求される職人技で、これも現在は機械化が進んでいますが、手仕事でも残っており、見栄えのする工程です。
Youtubeで検索してみてください。

工程9
門出のリキュール添加(ドザージュ)

最後の味の調整として、門出のリキュール(リキュール・デクスペディシオン)と呼ばれる、糖分を加えた原酒を加えます。

基本的に酸味が鋭いシャンパーニュでは、少量の糖分がある方が味わいのバランスが取れます。

しかしながら、超辛口指向や不干渉主義など様々な理由からこのドザージュを行っていないシャンパーニュもあります。
多くの場合これらは「ブリュット・ゼロ」「ブリュット・ナチュール」「ノン・ドザージュ」などの説明がなされています。

工程10
打栓(ブシャージュ)

コルクを打ち、針金で固定します。
この後ラベル貼りなどを経て出荷されます。

シャンパーニュの主なブドウ品種

シャンパーニュではシャルドネとピノ・ノワール、ピノ・ムニエが主要なブドウ品種です。

シャルドネ

コート・デ・ブランを中心に栽培されている白ブドウ。
透明感があり伸びやかな酸味と、上品で細やかな香りをもたらします。
シャルドネのみで作られたシャンパーニュを、ブラン・ド・ブラン(BdBと略されることも)と呼びます。

ピノ・ノワール

モンターニュ・ド・ランスやコート・デ・バールを中心に栽培されている黒ブドウ。
口の中での膨らみ・広がりや、がっしりとした酸味など、ワインにボディやボリュームを与えます。
ピノ・ノワールやピノ・ムニエの黒ブドウだけで作ったシャンパーニュをブラン・ド・ノワールと呼びます。

ピノ・ムニエ

ヴァレ・ド・ラ・マルヌを中心に栽培されている黒ブドウ。
丸く、柔らかく、素朴な果実味があり、ブレンドに優しさや奥行きをもたらします。

その他、ピノ・ブランやピノ・グリなども使用することが出来ますが、このブレンドは殆ど目にしません。

格付け

A.O.C.シャンパーニュには、「グラン・クリュ」と「プルミエ・クリュ」の表示が許可されています。

特徴的なのは、クリュの認定がコミューンごとであること。

特定の畑がクリュになるのではなく、アンボネイならアンボネイの、アイならアイのコミューン全体がクリュになります。

また、クリュの認定は伝統的な買い付け価格に基づきます。
100%の価格に査定されたものが「グラン・クリュ」、99~90%に査定されたものが「プルミエ・クリュ」、それ以下がクリュなしのコミューンとなります。

まとめ

お祝いの場で頻繁に登場するシャンパーニュ。
メゾンのカラーが強く出るタイプのワインなので、愛着の持ちやすい産地です。
是非、自分はこのメゾン!というお気に入りを見つけてください。

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