フランスワインの中で絶対に押さえておきたいのが、シャブリ。
白ワインとしてあまりにも有名ですが、実は「シャブリ」とはワインの名前ではなくて、地区の名前だということを知らない人も結構います。
世界中で人気ですが、シャブリ地区でしかつくられないという希少価値とシャブリ地区でつくるからこその、他では手に入らないキレのある味わいが特徴です。
シャルドネという品種を駆使して、畑の環境を映し出すシャブリ。
近隣のグラン・オーセロワ地区と一緒にご紹介していきます。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
【ソムリエが選ぶ】おすすめのシャブリ地区のワイン3選
熟成させたい1本「ドメーヌ・クリスチャン・モロー A.O.C.シャブリ・プルミエ・クリュ・ヴァイヨン」
シャブリを代表する作り手の一つ、ドメーヌ・クリスチャン・モロー。
シャブリのプルミエ・クリュは、セラン川を挟んで右岸と左岸にありますが、こちらは左岸の南東向き斜面の畑。
シャブリの良い畑独特の厚みがあり、長く熟成させてみたいと思わせる一本です。
シャブリらしい「ヴェルジェ テール・ド・ピエール A.O.C.シャブリ」
ブルゴーニュ地方のシャルドネ・スペシャリスト。
60種類以上ものワインを作りわけ、どれもが非常に質の高いものになっている信頼の生産者です。
プルミエ・クリュ・コート・ド・レシェに近い東向き斜面のシャルドネから、ステンレスタンクのみで醸造。
フレッシュで切れのある味わいが楽しめ、良いA.O.C.シャブリの感覚がつかめます。
完熟感が味わえる「ドメーヌ・ロン・デパキ A.O.C.シャブリ・グラン・クリュ・レ・クロ」
シャブリ・グラン・クリュの中でも最も評価の高いグラン・クリュ。
面積も最大のグラン・クリュですが、ここは斜面中腹と上方のブレンドだそう。
レ・クロの力強くふくよかな完熟感が味わえます。
繊細でエレガント「ドメーヌ・ラロッシュ シャブリ・プルミエ・クリュ モンマン」
自社畑100%、樹齢30年以上の木からつくられる独特の風味をもつ卓越したシャブリ・プルミエ・クリュです。
塾生は、マロラクティック発酵を行い5カ月、ブレンド後更に澱と共に7ヶ月ステンレスタンクで熟成させています。
力強さとストラクチャーがあり、素晴らしい質感が楽しめます。
5年熟成が理想「シャブリ プルミエ クリュ ヴォグロ」
南~南西向きの畑。ミネラルを保つため、タンク発酵のみです。
集約感があり、骨格がしっかりとした、まっすぐなワイン。
生産者みずから「若くても飲めるが、5年くらい熟成させるのが理想」と話すワインです。
自宅セラーで寝かせるのがおすすめ!
キレの良い白ワインを生み出す「シャブリ地区」
ブルゴーニュ地方で最も北に位置するシャルドネの産地がシャブリ地区。
大昔、海の底だった石灰分の豊富な土壌から、カキーンとキレが良く、硬水のような味わいのシャルドネが生まれます。
スラン川を挟んだ両脇の丘陵地帯に産地は広がり、南向き斜面の多い右岸に7つのグラン・クリュが集中。
丘の斜面には地表付近まで地層が露出しており、特にジュラ紀後期石灰質のキンメリジャン土壌がこの地域の核になっています。
キンメリジャン土壌には特徴的に牡蠣の化石が見られ、完熟してもなお存在感を持つ鋭い酸味を生み出します。
そういった酸味が特徴になっている産地に見られる土壌で、シャブリの他には、ソーヴィニヨン・ブランで有名なサンセール地区にキンメリジャン土壌があります。
シャブリ地区のワインは、最上級の格付けAOCシャブリとして知られていますが、またその中でも4つの格付けランクに分けられています。
シャブリの特に良い畑、プルミエ・クリュやグラン・クリュは、キンメリジャン土壌がある斜面の中腹に位置し、斜面上方の畑は「プティ・シャブリ」という、安価な格付けになっています。
プティ・シャブリの畑は丘の高いところにあり、シャブリの畑と比べ完熟感のない小ぶりな味わいになります。
土壌はキンメリジャンよりも若く、硬いポートランディアン(=チトニアン)。
さっぱりとしていて、ワイン単体での飲みごたえが減る分、食事のスタートにサクサク飲んで楽しめると思います。
シャブリ地区の格付けは、上から順番に、
- シャブリ・グラン・クリュ
- シャブリ・プルミエ・クリュ
- シャブリ
- プティ・シャブリ
となります。
- ブランショ
- ブーグロ
- レ・クロ
- グルヌイユ
- プルーズ
- ヴァルミュール
- ヴォーデジール
中でもレ・クロは最も広く、評価も高いグラン・クリュです。
真南を向き日照量も非常に豊富、それに加えて石灰岩が多く、ゆっくりとアロマを蓄積しながら完熟、熟れた果実の力強さとエレガンスを兼ね備えています。
凝縮感があり、スパイシーな風味を持つヴォーデシールとあわせて、シャブリ・グラン・クリュの中でもトップとされています。
ボリュームのある果実や樽のニュアンスとつり合いが取れるほどの酸味、硬質な味わいがありますが、これが熟成させることでほぐれ重なり合い、非常に重層的な味わいを生み出します。
また、8つ目のグラン・クリュとしてレ・ムートンヌがあります。
ヴォーデシールとレ・プリューズにまたがった場所にあり、シトー会が所有していた歴史ある畑として例外的にシャブリ・グラン・クリュを名乗ることが出来ます。
ドメーヌ・ロン・デパキの単独所有畑。
こういった格付け畑は、ブドウがしっかりと成熟する場所に存在します。
何よりシャブリのような北の涼しい産地では、霜害も発生しやすく、冷たい空気がたまりやすい斜面下部や標高が上がり寒くなる斜面上部は避ける傾向にあります。
プルミエ・クリュは40あり、グラン・クリュの周りや左岸に広がっています。
グラン・クリュと同じ右岸にあるものは、西向きや南西向きの斜面が多く、セラン川を挟んだ対岸の左岸にあるものは、南や南東向き斜面に多く畑があります。
とくに有名なものは、フルショーム、ヴァイヨン、モンマン、コート・ド・レッシェ、ヴォーグロ、ヴォークーパンなどですね。
シャブリ地区で生産されるのは殆どが「シャルドネ品種」
「シャブリ」というのは地区の名前ですから、様々な生産者がいろいろなワインを作っていますが、その殆どはシャルドネ品種から作られています。
それぞれの区画や収穫年毎の個性を反映し、同じシャルドネというブドウから様々な味わいを生み出します。
この地区で作られるシャルドネがとても特徴的なことから「シャブリ」と呼び、シャブリを名乗れるのはシャルドネから作られた白ワインだけと決まっているのです。
シャブリは、キレのある酸味とミネラル感のお手本のようなスタイル。
さっぱり、とか軽やかというよりは、緊張感のあるシリアスな味わいです。
香りの表現としてはリンゴや洋梨に、ライムのような酸味ある柑橘系のニュアンス、ほんのりとハーブや火薬の香りが加わります。
また、ここで注目して欲しいのが、硬水のミネラルウォーターのようなカチッとした味わいです。
シャブリにはこういった、ミネラル分を連想させるような味わいがあります。
また、熟成させると昆布のようなコクと香りが現れ、奥深い味わいに。
シャブリ・グラン・クリュは必ず熟成して報われるワインです。
格付けはブルゴーニュ地方のものと同じ
ブルゴーニュ地方では分かりやすいA.O.C.のピラミッド構造になっています。
格付けの上から下に向かって、次の通り。
- グラン・クリュ=特級(例:レ・クロ)
- プルミエ・クリュ=1級(例:モンマン)
- シャブリ
- プティ・シャブリ
グラン・クリュなど格付けの上位に行けば行くほど、収量の制限など、規定が厳しくなっていきます。
シャブリ地区まとめ
一言に「シャブリ」と言っても、さまざまな生産者がひしめき合っていて、すべてのワインが素晴らしいワインというわけでもありませんが、この土地とシャルドネという品種でしか出せない味わいを持っています。
良いものは10年以上熟成させることができるものもたくさんあります。
「ヴォーヌ・ロマネ」や「マルサネ」などで有名な、南のコート・ド・ニュイ地区と比べても、シャブリの格付け畑は比較的手に入れやすい値段であります。
シャブリは自宅のセラー熟成がおすすめ!
個人的にはプルミエ・クリュのモンマンやヴォグロなどを購入し、セラーで持っておくのがおすすです。
これらは5~10年熟成がおすすめのワインなので、若いうちに安価で購入し自宅で熟成させれば、非常に良い買い物になると思います。
最近では場所をとらない縦型の家庭用のものもかなり安価で売られるようになり、消音設計もされているのでお部屋のインテリアにもおすすめです。
繊細でエレガント「ドメーヌ・ラロッシュ シャブリ・プルミエ・クリュ モンマン」
酸と果実のバランスが見事な「シャブリ プルミエ クリュ ヴォグロ」
是非お試しください。
その他のブルゴーニュ地方の産地については以下の記事を参考にしてください。
ブルゴーニュ地方のワインの特徴とおすすめワイン3選