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静謐さと品格のカベルネ・フラン|品種の特徴とおすすめワイン

カベルネフランのイラスト

原産地であるボルドー地方と、ロワール地方で活躍している品種、カベルネ・フラン。
しっかりと熟しても軽やかさを失わず、しなやかな力強さと品のある味わいになります。

アルゼンチンやチリなどブドウがしっかり完熟する場所で栽培されても、不思議なほどこの軽やかさが失われません。
以前は植物的な香りが特徴とされていましたが、世界中の様々な環境下で栽培されるようになり、少しずつ認識が変わりつつあるようです。

カベルネ・ソーヴィニヨンの美しい骨格やパリッとした格調高い味の輪郭をさらに研ぎ澄ましたような一種危うい魅力。
そのため、バランスを欠き痩せた印象のワインも少なからずありますが、素晴らしいカベルネ・フランの個性は唯一無二のものです。

カベルネ・フランの特徴

カベルネフランの写真
参照元:https://www.terroirum.com/ja-jp/wine_grapes/cabernet-franc/

その名前から分かる通り、カベルネ・ソーヴィニヨンの親縁関係にあります。
カベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランが交配して生まれた品種がカベルネ・ソーヴィニヨン。
フランが親ということになります。

ボルドー右岸、特にサン・テミリオン地区や、ロワール地方で活躍しています。
ロワール地方では、ブルトンと呼ばれることも。

限られた場所でしか栽培されていませんが、ボルドーではシャトー・シュヴァル・ブランやシャトー・オーゾンヌ、ロワールではクロ・ルジャールなど、世界最高峰のワインを生み出すポテンシャルを持つ品種です。

ベリーから腐葉土の香り

イチゴやさくらんぼなど、赤く甘酸っぱい果実の香り。
そこへ白コショウや土の香り、トマトや草の香りが重なります。

完熟したスタイルのものだと、果実の香りにもブルーベリーやカシスのような雰囲気が増え、土の香りも腐葉土やキノコを思わせるような深い香り、ほうじ茶のようなニュアンスが出てきます。

全体として小ぎれいな庭園のような楚々としたイメージですが、果実の香りと同程度に植物や土の香りが感じられ、陰影がある表情を得意とします。

ソフトで軽やかな味わい

カベルネ・フランの魅力は、味わいのソフトさと軽やかさにあります。
舌触りが非常に滑らかで、完熟してしっかりした味わいになっても、どこか浮いているような軽やかさを無くしません。

良いカベルネ・フランは、渋みは細やか、新鮮な酸味があり、味の輪郭が綺麗に整っています。
滑らかでソフトな舌触り、口の中で引っ掛かりが無く、味が重たく残ることもありません。

主な栽培地と産地による違い

フランス

フランスのイラスト

フランスでの主な産地はボルドー地方ロワール地方

ボルドー地方は複数品種をブレンドしてワインを作るので、カベルネ・フランも例外でなくブレンドされます。
カベルネ・ソーヴィニヨンよりも成熟が早いブドウなので、カベルネ・ソーヴィニヨンが完熟しないような寒い年に多くブレンドされてきたようです。
メインのカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローに対して、フランは補助的な役割が強く、ワインに輪郭と涼やかさ、上品な雰囲気を付与してくれます。

右岸のサン・テミリオンでは比較的多く使われています。
例外的にカベルネ・フランが中心となるワインとして、シャトー・シュヴァル・ブランやシャトー・オーゾンヌといったサン・テミリオン・グラン・クリュ・クラッセA最上級のものが有名。
後述するロワール地方でもそうですが、カベルネ・フランの格調高い風格は、石灰の混じる土壌で生まれることが多く、サン・テミリオンにも石灰が含まれる土壌が存在します。
パワーはありつつも、ソフトで滑らかな口当たりと浮遊し漂うような不思議な軽やかさがここでも感じられます。

さて、ロワール地方では一転してカベルネ・フランが中心です。
特に、ロワール川中流域のアンジュー、ソミュール、トゥーレーヌで盛んに栽培されています。

ロワール地方の土壌はアンジェの町付近でがらっと変わります。
それより下流に行けば玄武岩や花崗岩、それより上流では石灰交じりの「トュフォー」と呼ばれる土壌になります。
前述の通り、カベルネ・フランはトュフォーのエリアで実力を発揮します。

ソミュール・シャンピニィやサン・ニコラ・ド・ブルグイユ、シノンなどのアペラシオンでは、カベルネ・フランらしいソフトで綺麗な舌触りと、渋みや酸味に頼らない味の骨格が感じられます。

こういった有名アペラシオンも良いですが、もっとカジュアルに楽しみたいのであれば規定のゆるいアンジューやソミュールといった広いアペラシオンもおススメです。

石灰が殆ど無く、砂質の畑から生まれるこれらのワインは、軽く明るい香りがあり、良い意味でのゆるい味。
赤でもサラダや焼き魚に合うでしょうし、昼間から飲みたくなるような明るい味わいで使い勝手が良いワインです。

イタリア

イタリアでは北東部のフリウリや中央部のトスカーナで栽培されています。
フリウリでは以前から「カベルネ」として栽培されていましたが、これは実はチリのカルメネールと同じ品種だということが分かっています。

トスカーナ州は今やボルドー系品種の産地。
特に沿岸部の豊富な日照量を受けて、完熟した果実とピリッとしたアクセントを持った素晴らしいワインが生まれます。
この地のカベルネ・フランはよく熟し、カシスやブルーベリーのニュアンス。
キノコやローリエのようなアクセントもあり、堂々としてしなやかな味わいです。
有名なところではレ・マッキオーレのパレオやテヌータ・ディ・トリノーロのワインなど。

ハンガリー

ハンガリーのイラスト

ハンガリーでもフランは広く栽培されています。
特に寒暖差があり石灰質土壌のヴィラニー地区では、熟れた果実の力強さと穏やかさ、上品な軽やかさを兼ね備えたワインになります。

アメリカ

アメリカのイラスト

アメリカではカベルネ・メルローのボルドー系ブレンドに使われる他、寒いニューヨークで成功しています。
やや単調な味のものも多いですが、軽やかに仕上げられ素直な果実の香りが魅力です。

カベルネ・フランに合う料理

肉類

肉類のイラスト

  • 豚カツ
  • リエット
  • アンドゥイエット
魚介類

魚のイラスト

  • 秋刀魚の塩焼き
  • マグロの刺身
  • 鰻の赤ワイン煮込み
野菜類

野菜のイラスト

  • サラダ
  • マッシュルームのサラダ
  • キノコの網焼き
チーズ

チーズのイラスト

シェーヴル(ヤギのチーズ)

オススメのワイン

シャトー・ムーラン・サン・ジョルジュ A.O.C.サン・テミリン・グラン・クリュ

メルロー主体にカベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンのブレンド。
メルローが中心のワインですが、フランがブレンドされることによって縦の味わいと輪郭の美しさが際立ちます。

クーリー・デュテイユ A.O.C.シノン クロ・ド・レコー

シノンの代表的作り手クーリー・デュテイユ。
トュフォー土壌のクロ・ド・レコー畑のカベルネ・フランは力強くも軽やかで、味が詰まっていても風通しが良く、しっかりした渋みも包み込む綺麗な舌触り。
お手本のようなシノンです。

レ・マッキオーレ パレオ・ロッソ

イタリア、トスカーナ州の沿岸部ボルゲリ地区で作られるカベルネ・フラン。
完熟してしっとりとした果実味、きめ細やかな渋み、絹のような舌触り。
ソフトさと軽やかさを決して失わない、カベルネ・フランの面目躍如ともいうべきワインです。

まとめ

多面的な特徴を持ち、「○○の香り!」というような単純なものではない魅力があるのがカベルネ・フランです。
冷涼なロワール地方の物を一本、イタリアやアルゼンチンなどしっかり完熟するエリアの物を一本と飲み比べてみると、共通するものに気付くと思います。
少しずつ栽培される場所も広がってきており、じわじわと注目されている品種ですので、これからの楽しみも多いでしょう。
是非、フランの魅力を発見してみてください。