コート・ド・ボーヌから南へ下ると、ローヌに程近い場所にボージョレ地方があります。
ブルゴーニュの偉大な弟分ともいうべきこの地方では、ピノ・ノワールではなくガメイがメイン。
日本ではボジョレー・ヌーヴォーのイメージがあまりにも強すぎますが、ヌーヴォーはその年の収穫を祝う新酒です。
どちらかというと、早く醸造できて、誰でも飲みやすいハッピーなお酒で、品質よりも皆で喜びを共有することに主眼が置かれています。
それとは別に、ボージョレの真価を知りたければクリュ・ボージョレを飲むべきです。
今回はボージョレを中心に、ブルゴーニュのその他の地域を紹介します。
パティシエとして製菓店やカフェのマネージャーを経験。レストランサービスを学ぶため、関西のホテルレストランを中心に約10年以上勤務。ワインに興味がありソムリエ呼称資格を取得。
保有資格
・日本ソムリエ協会 ソムリエ呼称資格
・調理師免許
ボジョレー・ヌーヴォーでお馴染みの「ボージョレ」
ボージョレは大きく北部と南部に分けることが出来ます。
北部はガメイに相性のよい花崗岩土壌の丘陵地で、質の高いワインを生み出す場所。
クリュ・ボージョレの村々もここに集まっています。
南部は、比較的平坦な粘土石灰質と砂岩の土壌。
並みの素朴で飲みやすいガメイの産地です。
先ほどから何度か出てきている「クリュ・ボージョレ」というのは、特に品質の良いガメイを作り出す特定の村を格付けしたもの。
10のクリュ・ボージョレがあります。
- サン・タムール
- ジュリエナス
- シェナス
- ムーラン・ア・ヴァン
- フルーリー
- シルーブル
- モルゴン
- レニエ
- ブルイイ
- コート・ド・ブルイィ
クリュ・ボージョレの中でも最北に位置するサン・タムールは、果実味の中にも硬質なニュアンスがあり、きりっとした輪郭。
風車のある風景が名前の由来になっているムーラン・ア・ヴァンは、小粒のイチゴと黒コショウのようなややスパイシーな風味。
贅肉のないスマートなボディで、若いうちはやや味わいが閉じ気味のこともあります。
有名なモルゴンは土壌にシストが混じり、力強く恰幅の良い味わい。
完熟した果実の風味と、それをしっかりと支える渋み、ガメイならではの滑らかな飲み口で非常にバランスが良いものが生まれます。
自然派ワインの中心人物の一人、マルセル・ラピエールのモルゴンで知っている方も多いのではないでしょうか。
また、クリュ・ボージョレを含む38の村は「ボージョレ・ヴィラージュ」を名乗ることができます。
そして一大イベントとなったボージョレ・ヌーヴォー。
毎年11月の第3木曜日に解禁されるボージョレ地方の新酒(ヌーヴォー)です。
日本酒でもそうですが、新酒を楽しむ文化はいたるところにあり、イタリアのノヴェッロや、オーストリアのシュトゥルム(発酵途中のワイン)なども有名です。
ボージョレ・ヌーヴォーは、その年の収穫を早く楽しめる状態にするため、また誰もが楽しめる味わいにするため、特殊な醸し方法が使われます。
一般にマセラシオン・カルボニックと呼ばれる手法で、炭酸ガスで密閉した低温タンクの中でブドウを数日置いてから、一気に絞って発酵させるやり方。
こうすることで、ブドウの粒の中で先に発酵が起こり、独特のフルーティな香りと色素が引き出され、短期間でワインを完成することができます。
ブドウの皮や種からの抽出が非常に少ないため、渋みはほとんど無く、バナナやイチゴキャンディのような香りと滑らかな口当たりに。
ジュースのように皆で楽しめる新酒が出来上がるのです。
ボージョレ・ヌーヴォーで有名な作り方ですが、ここまで極端なやり方でないにせよ、様々な場所で使われている手法です。
ボージョレ地方の主なブドウ品種は「ガメイ」
もちろんボージョレ地方の主役品種はガメイです。
ガメイはロワール地方などでも栽培されている品種ですね。
渋みが強く出ず、基本的には素朴で飲みやすい赤ワインになることが多い品種です。
滑らかな口当たりと飲み心地が特徴で、例えばクリュ・ボージョレのモルゴンのようにしっかりとした味わいに仕上げられても、ザラついた印象になりません。
イチゴなどの素直な果実香と柔らかな飲み心地で、食卓に良く似合うブドウ品種です。
格付けは村の名前をチェック
ボージョレ地方の格付けは以下の通りです。
- A.O.C.クリュ・ボージョレ
- A.O.C.ボージョレ・ヴィラージュ
- A.O.C.ボージョレ・シュペリュール
- A.O.C.ボージョレ
クリュ・ボージョレやヴィラージュで稀に記載されている村の名前が、ワインの個性を推測するのに役立つでしょう。
【ソムリエが選ぶ】おすすめのボージョレワイン3選
スパイシーな味わいの「シャトー・デジャック(ルイ・ジャド) A.O.C.ムーラン・ア・ヴァン」
ムーラン・ア・ヴァンに本拠地を構え、長期熟成も可能なしっかりとしたガメイを作るシャトー・デュジャック。
ムーラン・ア・ヴァンのつるっと小粒でスパイシーな味わいが楽しめます。
ピュアな果実味が美しい「マルセル・ラピエール A.O.C.モルゴン」
自然派の父とも呼ばれるマルセル・ラピエールのモルゴン。
パワフルで肉付きがよく、それでいて重々しくならない透明感が素晴らしいガメイです。
フレッシュで果実味豊かな「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー」
ボージョレ・ヌーヴォーの名前を世界に知らしめた、ボジョレーの帝王とジョルジュ・デュブッフのヌーヴォーです。
フレッシュで楽しく飲めるワインです。それを可能にするガメイのソフトさ、素直さに注目。
まとめ
まだまだ一般には高く評価されていない産地でしたが、クリュ・ボージョレを初め、少しずつその品質が知られてきています。
ブルゴーニュ好きだけではなく、例えばガメイなどはローヌ好きにも試して欲しい個性を持っています。
まだまだ値段もお手ごろなものが多いので、是非試してみてください。
その他のフランスのワインの地方については以下の記事から参考にしてください。
フランスワインの産地や品種の特徴|おすすめ〜高級銘柄