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ルーマニアやブルガリア、モンテネグロといったバルカン半島ワインの産地の特徴とおすすめワイン3選

バルカン半島のイラスト

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バルカン半島の西側は、第一次世界大戦以前はオーストリア=ハンガリー二重帝国の領土でした。

その後は南スラヴ人の王国として構想されたユーゴスラビアを形成しましたが、第二次世界大戦や、社会主義国家、続く紛争でワイン作りは疲弊していきました。

しかしながら、本来この地は世界有数の長いワイン作りの歴史を誇る場所です。

ここ日本でも、少しずつプロモーションを開始しているようで、今後が期待される地域になってきました。

バルカン半島最南端のギリシャはこちらの記事に書いていますので、今回はそれ以外の主要な産地をご紹介していきます。

バルカン半島の主なワイン生産地

涼しい気候の「ルーマニア」

ルーマニアは半島の中央から東の黒海に向けて開ける場所で、ヨーロッパでも10の指に入るワイン生産量のワイン大国です。

それでもルーマニアワインを余り見かけないのは、共産主義時代に他国との貿易をたたれていたことと、ほとんどが国内消費に回されていることが理由。
ワインの輸入量も多いそうで、流石は酒の神バッカスの出身地とされているだけあります。

国土を一回り小さくなぞるように、カパルチア山脈がぐるっと回ってワイン産地を区分しています。

カパルチア山脈内の盆地はトランシルヴァニア地方。
ピノ・ノワールが育つような涼しい気候で、フレッシュなワインを生み出します。

山脈の外側、東のモルドヴァ共和国と接するモルドヴァ地方には、国全体の1/3以上のブドウ畑がある、大きな平原の山地です。

同じく山脈外側の南にあるムンテニア地方は、南向きの暖かい産地で赤ワインの名産。
「デアル・マーレ」というエリアが有名で、カベルネ・ソーヴィニヨンメルローピノ・ノワールシラーや固有品種のフェテアスカ・ネアグラ(黒い乙女という意味)から力強い赤ワインが生まれています。

フランス系品種が多くありますが、ラテン民族のルーマニアは第一次世界大戦中にフランスよりワインの技術を学んだ歴史があり、これらのブドウ品種から質の良いものが作られているのです。

コスパの良いワインが多い「ブルガリア」

ボルドーのナイペルグ伯爵家のワインが有名なブルガリアですが、メルローカベルネ・ソーヴィニヨンなどボルドー品種を主体としたコストパフォーマンスの高いワインを作っています。
ブルガリアは多少日本でも目にする機会があるかと思います。

1950年代に国営のワイナリーが旧ソへの輸出のためブドウの大規模栽培を始め、その後カリフォルニア大学デイヴィス校の指導などでコスパの良いワインを作る国になりました。
一時期は世界でも5本指に入る生産量を誇るワイン大国でしたが、ゴルバチョフの反アルコール政策でかげりが見られ、現在は民営のワイナリーを中心に海外からの参入が見られます。
前述のナイペルグ伯爵家のベッサ・ヴァレーも2000年代初頭にブルガリアに参入したワイナリーです。

ボルドー系品種の他に、白ブドウのレッド・ミスケット、フレッシュな味わいの赤ワインになるギャムザ、シラー×ネッビオーロの交配品種ルビンなどがあります。

007の舞台にもなった「モンテネグロ」

ボスニア・ヘルツェゴヴィナの南にある小さい山地。
007のカジノ・ロワイヤルの舞台がここでした。

ほとんどが大手ワイナリー「プランタジェ」によって所有されており(日本にも輸入されています)、70%が赤ワイン用のヴラナツ、白はクルスタチュという品種が栽培されています。

沿岸部と内陸部でワインが作られる「クロアチア」

魔女の宅急便や紅の豚の舞台になった国がクロアチアです。
美しい沿岸部の町と、それに沿うようにディナラ山脈が走っている地形で、アドリア海を挟んでイタリアの向い側に位置します。
地形もイタリアに似ています。

ワイン産地はディナラ山脈で二分され、沿岸部と内陸部があります。

沿岸部は北部のイストラでマルヴァジア・イストランカという白ブドウからオレンジの香り華やかで味わいのしっかりしたワインが、また赤ワインは土着品種にメルローをブレンドするなどしています。

沿岸部の広い地域で土着品種プラーヴァッツ・マリが栽培され、濃くがっしりとした赤ワインになっていますが、これはジンファンデルの子供。
ディンガチュ村とポストゥップ村が名産。

クロアチアにはジンファンデルの祖先にあたるツュエリエナック・カシュテランスキというブドウもあり、固有品種を多く栽培しています。

地中海性気候の沿岸部とは逆に、内陸は大陸性気候の山に囲まれた産地。
白のラインスキ・リズリングなどが活躍しているようです。
また、首都ザグレブでポルトギザッツから作られた新酒の振る舞いなどがあり、その年最初のワインを楽しみます。

ちなみに、そのザグレブの東にあるスラヴォニア地方では、イタリアの大樽に使用されるスラヴォニアン・オークが作られています。

高品質白ワインの「ボスニア・ヘルツェゴヴィナ」

オーストリア=ハンガリー二重帝国下では重要なワイン供給地だった場所です。
内線でブドウ畑は減少し、一時は4,000haまで減ったと言われています。
ジラヴカ種による辛口の白ワインの品質が高い。

ワイナリーの集う「セルヴィア」

モンテネグロから東の内陸へ向かうと、セルヴィアがあります。
こちらも産業的な大手ワイナリー数社による独占状態ですが、小規模な生産者も少数存在し、注目されるワインを作っているようです。

首都ベオグラードのある北部はハンガリーのパンノニア平原から続く平地。
ダニューブ川沿いの丘陵地からヴェルシュリースリングの良いワインが作られるといわれます。

南部はスメデレヴカ種の白とプロクパツ種の赤で知られています。

バルカン半島の主なブドウ品種

有名なものは、クロアチアの白、グラシェヴィナ(=ヴェルシュリースリング、リースリングとは無関係)やジンファンデルの子供であるプラーヴァッツ・マリ。
前者は比較的広範囲で爽やかな白を作り、後者はジンファンデルさながらの力強い赤ワイン煮なります。

また、日本語訳と共に知られている、

  • フェテアスカ・アルバ(白い乙女・白ブドウ)
  • フェテアスカ・レガーラ(王家の乙女・白ブドウ)
  • フェテアスカ・ネアグラ(黒い乙女・黒ブドウ)
  • バベアスカ・ネアグラ(黒い貴婦人・黒ブドウ)

などはルーマニアやトルコなどで広く栽培されています。

また、モンテネグロなどで栽培されている黒ブドウのヴラナツも濃い赤ワインとなります。

ブルガリアでは品種の掛けあわせで生まれたルビン。
シラーネッビオーロの掛け合わせというだけあって、しっかりとした骨格と華やかな香りが特徴。

その他酸味が綺麗なギャムザや、パワフルな赤になるマヴルッド、ブレンドでフレッシュな白ワインになるレッド・ミスケットなどがあります。

格付けは地域によって原産地呼称を使用

EUに加盟しているブルガリア、ルーマニア、クロアチアなどはワイン法による原産地呼称がなされています。

クロアチアは政府の審査委員会によって「クヴァリテートノ・ヴィノ・コントロリラーノ・ポデュリエトロ」、より評点の高い「ヴルフンスコ・ヴィノ・コントロリラーノ・ポデユリエトロ」があります。

ルーマニアはDOC(デヌミーレ・デ・オリジネ・コントロラータ)の原産地呼称に加え、ブドウの収穫期によってCMD(完熟期の収穫)、CT(遅摘み)、CIB(貴腐がついた収穫)の3つに分けられます。

ブルガリアはフランス同様、ヴァン・ド・ペイ相当のDanube PlainとThracian Lowlands、特定地区保護のGAO、GADOが存在します。

加えてクロアチアやルーマニアは収穫したブドウの糖度による表記も可能で、これはドイツの制度と似ています。

【ソムリエが選ぶ】おすすめのバルカン半島ワイン3選

パワフルな「スカラムーチャ ディンガチュ クラシック(クロアチア・ディンガチュ)」

クロアチア南部の沿岸部で作られるプラーヴァッツ・マリ種の赤ワイン。
中でもディンガチュのものは名が通っており、ジンファンデルの子供というのも頷ける、パワフルなプラーヴァッツ・マリを楽しめます。
このワイナリー、スカラムーチャは同様にプラーヴァッツ・マリの銘醸地ポストゥップで作られたものや、より低価格のものも輸入されているので、そちらから試してみても。

フレッシュでまろやかな味わいの「ドメーニレ・サハティーニ ラ・ヴィ ピノノワール(ルーマニア・ムンテニア地方)」

ルーマニアではピノ・ノワールが多く栽培されています。
ワイナリーはカルパチア山脈の南側、暖かく赤ワインに適するデアル・マーレ地域にあり、このピノ・ノワールもフレッシュさと果実の厚みが共存したまろやかな味わい。
引っ掛かりが無くスムーズで、非常に飲み心地の良い一本です。

芯の通った味わいの「ベッサ・ヴァレー プティ・エニーラ(ブルガリア)」

ベッサ・ヴァレー・ワイナリー プティ・エニーラ [2017] 750ml[赤ワイン ブルガリア ]
ベッサ・ヴァレー・ワイナリー

ボルドーはサンテミリオンのナイぺルグ伯爵家がプロデュースするブルガリアワインです。
メルローを主体としたボルドーブレンドで、甘やかさすら感じる完熟した果実やチョコの香りと、ピシッと芯の通った味わい。
ブルガリアのコスパの良さをかんじさせます。

まとめ

あまり馴染みのないワイン産地が続きましたが、バルカン半島はワイン作り、ワイン消費の長い歴史を持っています。
質の良いワインが作られていた歴史もあり、今後期待が持てる地域です。

まずは比較的手に入れやすい、おススメの3本から試してみてください。
さりげない質の良さで、きっと楽しめることと思います。